運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県)の運転延長を巡り、原子力規制委員会の審査対応をしていた同社課長職の男性が過労自殺した問題で、厚生労働省福井労働局敦賀労働基準監督署が関電の岩根茂樹社長を出頭させ、全管理職の労働時間を適切に把握するよう求める指導票を交付していたことが分かった。関係者が明らかにした。
労働基準法上の「管理監督者」は労働時間の制限を受けず、残業代の支給対象外で、労務管理がおろそかになりがちだとされる。一般労働者でなく、管理職の勤務実態の調査を求めるのは極めて異例。大企業のトップに長時間労働見直しを直接要請した形で「働き方改革」を進める厚労省の強い姿勢が示された。
福井労働局で6日、手渡した。関電は過去2年にさかのぼり全管理職の労働時間や持ち帰り残業時間を調べ、労基署に報告する。同社は「指導を真摯(しんし)に受け止め、引き続き適正な労働時間管理に努めたい」としている。
男性は40代で管理監督者に当たるとされ、昨年4月に自殺。1カ月の時間外労働が最大約200時間に及んだこともあり、10月に過労自殺として労災認定された。
男性は40代で管理監督者に当たるとされ、昨年4月に自殺。1カ月の時間外労働が最大約200時間に及んだこともあり、10月に過労自殺として労災認定された。
関電に是正勧告の対象となる法律違反はなかった。ただ会社側は管理職であっても深夜割増賃金を支払い、健康面に配慮し、労働時間を適切に管理する義務がある。男性は持ち帰り残業をしていたとみられるが、労基署はこれまでの調査で正確な時間を確認できず、指導が必要と判断した。
解説 関電社長指導 名ばかり管理職横行 長時間労働摘発逃れ
毎日新聞2017年1月16日 大阪朝刊
http://mainichi.jp/articles/20170116/ddn/003/020/021000c
関西電力課長の過労自殺を巡り、労働基準監督署が管理職の勤務時間を適切に把握するよう求める異例の指導に踏み切った。「管理監督者」は残業代支給の対象でなく、労働時間が厳格に管理されていないとされる。実態を伴わない「名ばかり管理職」も多く、長時間労働による法律違反の摘発を免れる抜け穴と言われる。
http://mainichi.jp/articles/20170116/ddn/003/020/021000c
関西電力課長の過労自殺を巡り、労働基準監督署が管理職の勤務時間を適切に把握するよう求める異例の指導に踏み切った。「管理監督者」は残業代支給の対象でなく、労働時間が厳格に管理されていないとされる。実態を伴わない「名ばかり管理職」も多く、長時間労働による法律違反の摘発を免れる抜け穴と言われる。
労働基準法上の管理監督者に該当するかは(1)経営者と一体的な立場で仕事をしている(2)出退勤の時間に厳格な制限を受けていない(3)地位にふさわしい待遇を受けている−−などの要件から判断される。企業や組織内で管理職とされていても、裁判で管理監督者に認定されない事例は多い。
過労死問題に詳しい森岡孝二関西大名誉教授は「管理職にするかどうかは企業の裁量で決まるのが現状で、管理監督者制度が著しく乱用されている」と指摘。過労自殺した関西電力課長について「月200時間の残業をする人を管理監督者とは呼べない」と話す。
過労死弁護団全国連絡会議代表幹事の松丸正弁護士は、今回の労基署の対応を「管理職を対象に調査を求める指導は異例。管理職であっても心身の健康を守るべきだという行政の強い姿勢が表れている。今後、他の大企業も人ごとではなくなるだろう」と評価した
過労死弁護団全国連絡会議代表幹事の松丸正弁護士は、今回の労基署の対応を「管理職を対象に調査を求める指導は異例。管理職であっても心身の健康を守るべきだという行政の強い姿勢が表れている。今後、他の大企業も人ごとではなくなるだろう」と評価した