残業上限は月60時間、繁忙期100時間 政府が改革案

 
現行の時間外労働規制が変わるイメージ(画像省略)
 
 政府は「働き方改革」で、これまで事実上、青天井になっていた長時間労働に制限を設け、残業時間の上限を繁忙期も含めて年間720時間、月平均60時間とする方向で調整に入った。忙しい時には月最大100時間、2カ月の月平均80時間までの残業は認める。労使との調整を経て、年度内にまとめる働き方改革の実行計画に具体策を盛り込みたい考えだ。


現在の労働基準法は、労働時間の上限を「1日8時間」「1週間40時間」と定めている。ただ、同法36条に基づいて労使が協定(36〈サブロク〉協定)を結ぶと、法律の上限を超えた残業が認められる。


その残業時間は「月45時間、年360時間以内にするのがのぞましい」としているが、労使間で「特別条項」を付ければ、年6カ月までは青天井にできる。長時間の残業を設定しても罰則がないため、長時間労働や過労死を生む原因と指摘されていた。いわゆる「過労死ライン」と呼ばれる過労死の労災認定基準は、1カ月100時間、または2〜6カ月の月平均80時間とされている。


このため政府は、労働基準法を改正し、残業時間の上限を原則として「月45時間」「年間360時間」と規定。そのうえで、企業の繁忙期に対応できるよう6カ月は例外を設け、「月最大100時間」「2カ月の月平均80時間」の残業を認める。その場合でも、「年間720時間」「月平均60時間」に抑えるよう義務づける。違反に対しては、罰則を科す。


政府は2月1日に開く「働き方改革実現会議」(議長・安倍晋三首相)で議論を本格化させ、年度内に原案を固めたい考えだ。ただ、経済界には新たな制限を例外なく当てはめることに反発の声があり、規制の対象外にする業種や職種、規制の導入時期など詳細な制度設計をめぐる労使との調整は難航が予想される。調整次第で残業時間の上限をさらに見直す可能性もある。


春以降は、厚生労働省の審議会で議論したうえで、残業時間の上限を設ける労働基準法改正案をまとめるが、今国会への提出は見送り、秋の臨時国会への提出を見込んでいる。(高橋健次郎)

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