働き方改革関連法が29日成立し、日本型の労働慣行の歴史的転換点を迎えた。「本当に残業は減るのか」「業務内容が変わるのか」−。サラリーマンらは期待や不安を抱えている。
東京都狛江市の男性会社員(25)は「サラリーマンにとってメリットが多い」と今回の改革を歓迎する。男性は月60〜80時間の残業があり、業務に追われる同僚らの姿も見てきた。
今回、残業時間に上限規制が設けられることで「これからの働き方について、会社側から何らかの方向性が示されれば。ただ、残業が減るとしても、今の業務内容がどう変化するかの説明はほしい」と語る。
日本総研の山田久主席研究員は「日本では長時間労働が当たり前とされてきたが、産業構造の変化などでこうした働き方は見直しが求められている。今回の改革で残業時間の上限規制が盛り込まれるなど『労働条件の改善』『ワークライフバランスの実現』を図る最初の一歩となり得る」と評価。高収入の一部専門職を労働時間規制の対象外とする「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」についても「労働時間を自分で決めていくという意味で必要な制度」とし、「今後はきめ細かなルールや指針を作り、十分に実態を踏まえた運用を行っていくことが重要だ」と語る。
一方、金融業に勤める静岡市の男性(46)は「高プロが適用されれば受けたいと思うが、仕事が今以上に増えやしないか。仕事をチームでやっているものもある」と吐露する。男性は28日夜、いったん帰宅した後、納期が迫っていたため夜中に会社に戻り、仕事をしながらサッカーワールドカップをテレビで観戦した。残業時間は毎月100時間を超えており、「裁量に委ねられる仕事には限界がない」と憂える。
関西大の森岡孝二名誉教授(企業社会論)は「今回の改革は労働基準法の趣旨と遠ざかり、法の根幹を崩す恐れがある。残業の上限規制では過労死はなくならない」と指摘。高プロについては「制度自体が働かせ放題で、労働時間の把握がルーズになる。いったん導入されれば要件が引き下げられ、対象が拡大されていくだろう」と話した。