マクロ経済スライド 年金削り、格差広げる (6/12)

マクロ経済スライド 年金削り、格差広げる
廃止し「減らない年金」を
しんぶん赤旗  2019年6月12日(水)
 
 日本共産党の小池晃書記局長が10日の参院決算委員会で、金融庁の審議会が報告書で、公的年金の削減で“退職後30年間で2000万円不足する”ことになるとして国民に自助努力を求めた問題を取り上げ、安倍首相に対して年金削減の仕組みであるマクロ経済スライドの廃止を迫りました。マクロ経済スライドはどんな仕組みなのでしょうか。
 
 マクロ経済スライドは、毎年行う年金額の改定のさい、指標となる物価の上昇より年金額の引き上げを低く抑え、実質削減する仕組みです。安倍政権は7年間(2013〜19年度)の合計で、マクロ経済スライドを2度発動するなどして、物価は5・3%上昇したのに、年金額は0・8%のマイナス改定で、実質6・1%も大幅に削減しました。
 
 2014年に公表された財政検証(年金の将来見通し)によると、マクロ経済スライドによる実質削減は2050年前までに、現役時代の約6割の支給水準を約5割程度まで引き下げるという計画です。
 
 しかも、マクロ経済スライドによる実質削減は、現役時代に低賃金だった労働者ほど、年金額がより大きく目減りする仕組みとなっています。
 
 厚生年金保険に加入する労働者の場合、65歳以降、老齢基礎年金の上に、老齢厚生年金が上乗せされて支給されます。
 
 グラフは14年の財政検証の結果をもとに、現役時代の賃金水準別に、14年度と50年度について、老齢基礎と老齢厚生の年金額を比較したものです。現役時代の賃金水準が14年度換算で月10万円相当の人の場合、年金総額は14年度月9万円から7・1万円に21・1%の削減となります。一方、賃金水準が月30万円相当の人の場合は、14・2万円から12・1万円に14・8%の削減となります。
 
 このように、低賃金の人ほど年金額がより大きく目減りする原因は、老齢基礎年金の削減幅の方が、上乗せ部分の老齢厚生年金よりもかなり大きいためです。
 
 老齢厚生年金の金額は現役時代の労働者の賃金水準に応じて決まります。現役時代に低賃金だった人ほど老齢基礎年金に上乗せされる老齢厚生年金の金額が少なくなるため、老齢基礎年金の実質削減の影響をより強く受けることになります。
 
 マクロ経済スライドによる実質削減は、高齢者の生活悪化とともに、年金の格差拡大に拍車をかけるものです。
 
 マクロ経済スライドを廃止して「減らない年金」を実現することは、年金受給者だけでなく現役の労働者にとっても重要な課題です。(村崎直人)
 
 
 
 

この記事を書いた人