奈良県 半数超の自治体で違法に時間外労働 NHK調査
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NHK Web News 2019年9月2日 15時32分働き方改革
長時間労働が問題となる中、NHKが奈良県内の自治体の職員のうち、時間外労働に関する「36協定」を労使間で結ぶ必要がある職種について調査した結果、半数を超える22の市町村で協定を結ばないまま違法に時間外労働をさせていたことがわかりました。
地方公務員のうち、ごみ収集や警備などを担う一部の職種では、労働基準法に基づく36協定を労使間で締結しないと時間外労働をさせることはできません。
この36協定の締結の状況をNHKが、奈良県内39の全市町村を対象に調査した結果、ことし7月1日の時点で奈良市や大和郡山市、大和高田市など半数を超える22の市町村で締結せずに、違法に時間外労働をさせていたことがわかりました。
なかには過労死ラインとされる月80時間を超える時間外労働をさせていた自治体もあり、このうち河合町では昨年度までの3年で延べ33人が月80時間を超えていました。
なかには150時間近い月もあったということです。
河合町の田中敏彦副町長は「痛恨の極みだ。行政には無関係だという認識だったのだと思う。36協定の趣旨をかみしめ今年度中に協定を結びたい」と話しています。ほかの自治体も「36協定の対象にならない職種として扱っていた」などと説明し、締結に向けて調整中だとしています。
NHKの調査
過労死や過重労働が社会的な問題となる中、ことし6月、奈良市が36協定を結ばないまま違法に時間外労働をさせていたことがNHKの取材で明らかになりました。
これを受けてNHK奈良放送局は、奈良市を含む県内39の全市町村に対し、同様の問題がないか、独自に調査を実施しました。
調査では、労務管理を担当する部署に調査用紙を送付し、36協定の対象となる職種の職員が何人いるかや、36協定を締結しているかどうかなどを質問しました。
これに対し8月までにすべての市町村から回答が寄せられました。
「36協定」とは
36協定はその名のとおり労働基準法の36条に基づき企業などの経営側と労働組合が取り交わす協定です。
労働基準法は、原則として労働者の時間外労働を禁止しています。
ただ36条に基づいて労使が時間外労働の上限などについて取り決め、協定を交わしたうえで、労働基準監督署などに届け出れば、労働者に時間外労働を命じることができます。
この仕組みが「36協定」と呼ばれています。
一方警察官や消防署員、それに役場などで勤務する地方公務員は、労働基準法でも公務で必要な場合には時間外労働を行うことができると明記され、原則「36協定」の規制が適用されません。
ただ、水道や保健所、ごみ焼却施設で働く職員など一部の職種は、36協定を結ばなければ、時間外労働をさせられないことになっています。
労働局などによりますと、こうした職種の業務は民間でも実施できるとされるため、民間と同様の労働者保護の規制が適用されるということです。
専門家“非常に問題だ”
元労働基準監督官で、社会保険労務士の北岡大介さんは「法令に基づき民間を指導監督する立場の市町村が、法令を順守していないのは非常に問題だ。労使間でルールを大事にしていないという側面があるのではないか」と批判しています。
そのうえで「36協定がないということは労働時間のルールが基本的にないということなので働き方改革が進まず、長時間労働をある種黙認してしまう要因になってしまうことが懸念される」としています。
違法時間外労働の市町村
ことし7月1日時点で36協定を結ばず違法に時間外労働をさせていたのは以下の市町村です。
▽奈良市
▽大和高田市
▽大和郡山市
▽天理市
▽桜井市
▽五條市
▽宇陀市
▽三郷町
▽安堵町
▽川西町
▽三宅町
▽田原本町
▽曽爾村
▽明日香村
▽上牧町
▽王寺町
▽広陵町
▽河合町
▽黒滝村
▽下北山村
▽上北山村
▽川上村
内訳は市が7つ、町が9つ、村が6つです。
このうち大和郡山市は、36協定の対象となる職種のうち水道事業に関わる職員とは協定を締結していましたが、平成22年以降、結ばれなくなりました。それ以外の職種は協定を締結したことはなかったということです。
市の笠原淳秘書人事課長は「協定が必要だという認識は労使ともにあったが、多くの職員は法律の適用から除外されるのでどうしても認識が低くなってしまったと思う」と話していました。
ほかにも五條市や三郷町など多くの自治体が協定を締結していなかった、理由について認識不足という趣旨の回答をしました。