退職代行の専門家が明かす「慰留ハラスメント」壮絶実態
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2019/11/29(金) 9:26配信日刊ゲンダイDIGITAL
退職代行の専門家が明かす「慰留ハラスメント」壮絶実態
少子高齢化による、労働力や人手の不足が背景に…(C)日刊ゲンダイ
【ハラスメントの舞台裏】#4
職場のハラスメントは、パワハラやセクハラだけではない。いま、「慰留ハラスメント」が猛烈な勢いで広がりつつある。会社を辞めたいと言った途端、会社側からパワハラまがいの圧力を受けるケースだ。当人の意思など無視同然。会社の都合だけを押し付けて、辞めさせない。どうする?
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■辞めたいのに辞められない
辞めたくても辞められない――。あろうことか、会社を退職できずに思い悩む社員が増えているという。常識的には、上司に退職届を出し、会社を辞める意思表示をすれば、十分のはずだが……。先ごろ、「退職代行」(SB新書)を上梓した、弁護士の小澤亜季子氏が言う。
「退職の意思を、第三者の業者に頼んで会社に伝えてもらう退職代行サービスのニーズは増えています。背景には、少子高齢化による労働力不足、人手不足があり、簡単に辞められては困る会社側が、あの手この手で強烈な引き留めに走るという構図があります。私自身、昨年の8月から弁護士の立場での退職代行サービスを開始しましたが、相談数はすでに400件を超えています。相談者の性別は男性が7割、世代別では30代が約30%で最も多く、20〜40代合わせて8割を占めます。私のところは業者の中でもかなり値段も高いのですが、これはけっこう深刻な方が多いからだと思います」
■「月曜日、連休明け」に相談者増加
小澤氏は、慰留ハラスメントを受けて苦しむ社員に代わり“退職”を請け負う。
料金は6万5000円。弁護士資格がない業者は1万円台も多いから、安くはない。相談問い合わせはウェブサイト(https://taisyoku―daikou.com/)を開設の上、メール・LINE・電話で受け付けており、「月末や、1週間でいうと、月曜日、連休明けにも増えます」という。
「相談で数が多いのは主に2つです。まず、退職の意思表示をしても、お茶を濁されるケース。退職届を受け取らず、“後任が見つかるまで待ってくれ”とか“いま辞められたら皆が困る”などと、会社側の都合だけ並べ立てダラダラ退職を引き延ばします。2つ目は直属上司が退職届を握りつぶすケース。これも珍しくない。人手不足は事実でしょうが、部下に辞められると自身のマネジメント能力を問われる恐怖もあるのでしょうね。別の例では、退職を言い出すやいなやペットボトルを投げつけられた、あるいは頭を叩かれた人もいました。こうなると、刑法上の暴行罪。民事上はパワハラで訴えられてもおかしくありません」(小澤氏)
慰留ハラスメントの例を挙げたらキリがない。一方で「残った皆が迷惑する。ヒドイ」「職場放棄も同然」と精神的にプレッシャーをかけ、一方で、「辞めるなら有休は取るな」「残業代は払わない」と脅す。「退職金を出さない」とまで言われては、企業倫理などあったものではない。
参考までに、小澤氏の相談者たちの勤務先の従業員数は、
・100人未満…36%
・100〜1000人未満…32%
・1000人以上…21%
大企業でも慰留ハラスメントは珍しいことではないのが現実か。
ここに、「退職代行サービス」が注目される理由がある。だが、ネット検索をすると、業者は弁護士もいれば非弁護士もいて玉石混交状態。どこを選べばいいのか?
「法的には、月給制正社員の場合、原則として労働契約の解約の意思表示をして、それが会社に届いたときから2週間経てば辞めることができます。ですが、労働者と会社の交渉力は物凄い格差がある。交渉の場に会社の顧問弁護士が出てきたら、有休や退職金などの問題は太刀打ちできません。また、長時間労働でメンタル不全になった社員が自力で退職の交渉などできるはずもない。だから、交渉には弁護士に頼んだ方がいいのです」(小澤氏)
令和時代の駆け込み寺となるか。