公務員、女性活躍なおざり 保育士・看護師・相談業務 高い非正規の割合 (12/16)

公務員、女性活躍なおざり 保育士・看護師・相談業務 高い非正規の割合
https://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201912/CK2019121602000154.html?fbclid=IwAR25tVNagqbUSdL5SGwUqEKzXKxVNA5yTeRSAr3GZfnAk5ogNY8PXCOLgfY
東京新聞 2019年12月16日

「多くの女性が不安定な条件で働いていることを改善したい」と話す瀬山紀子さん

 財政難を背景に、地方自治体で働く非正規公務員が増え続けている。その四分の三を占めるのが女性だ。保育士や看護師などかつて「女性の仕事」とされた職種に加え、DVや児童虐待の相談業務といった命や安全を守る業務を担う人が多いのが特徴。専門性を持った女性たちが、不安定な立場に甘んじていることに対し、当事者や専門家は「適切に処遇すべきだ」と訴える。 (小林由比)
「DVに苦しむ女性を、一番身近で支える仕事なのに」。DV被害者を対象とする婦人相談員として、広島県内の自治体で働く女性(51)は、一年ごとに契約を更新して働く非正規公務員だ。週五日三十時間の勤務で月給は約十四万円。この八年、待遇は変わらない。手取りは十万円ほどにしかならず、夜はパチンコ店で働くなど三つの仕事を掛け持ちして生計を立てる。
「対等な立場で被害者に寄り添い、支援機関につなぐ重要な仕事」と女性たちの再スタートに伴走する仕事にはやりがいを感じる。だが、研修もないため、自腹で勉強会に参加するなどしてスキルを高めてきた。いつまで契約を更新できるのか不安は尽きない。「もし私が働けなくなったら、支援している女性たちも放り出されてしまう」
総務省の二〇一六年の調査では、全国の自治体で働く非正規公務員は約六十四万三千人。公務員の人件費を抑えようと、国が正規職員の数を厳しく管理するようになった〇五年から四割増え、五人に一人が非正規だ。このうち女性は約四十八万一千人と75%を占める。
理由の一つに自治体が担う業務の変化がある。DV防止法や児童虐待防止法、生活困窮者自立支援法…。〇〇年代に入り、さまざまな法律が施行され、住民の相談支援業務が重要な仕事になった。だが、正規職員の数は増やせない。そこに、非正規の女性が多く振り分けられている。
非正規公務員の問題に詳しい地方自治総合研究所の上林陽治研究員は「困っている人に寄り添ったり、ケアしたりする仕事は、女性の方が向いているという先入観が強いため」と説明。その上で「本来は住民と直接話し、命を守る仕事なのに、家計を助ける程度の待遇で良いとされている」と憂える。お茶の水女子大の戒能民江名誉教授も「ただ話を聞くだけの仕事と低く見られている」と指摘する。

 だが、例えば深刻化する児童虐待は家庭内のDVと結びつけて相談に乗り、支援をする必要があるなど専門性は高い。関東の女性関連施設で、自治体職員向けに男女共同参画への理解を深める講座の企画などをする非常勤職員の瀬山紀子さん(45)は「相談業務を担当するのは、知識や経験が豊富で使命感もある女性が多い。彼女たちの役割は大きい」と話す。
正規職員との賃金の差は深刻だ。上林さんが総務省のデータを基に計算したところ、同じ保育士でも正規は平均年収五百二十万円なのに対し、非正規は二百万円。低待遇が敬遠されることも、男性の少なさにつながっている。処遇の改善のため、国は来年四月から非正規職員を会計年度任用職員に改め、ボーナス支給の対象とする。しかし、一部の自治体では月給を減らして支給総額を従来と同水準に抑えようとする動きもあり、効果は不透明だ。
上林さんは「専門領域に関わる職員を正規の専門職として採用する制度をつくり、職務の価値に応じた賃金が支払われるようにすべきだ」と主張する。一六年施行の女性活躍推進法の付帯決議では、非正規公務員の多数を女性が占めることを踏まえ、勤務の内容に応じた条件を確保できるようにすることなどが求められた。瀬山さんは「今は女性活躍とは程遠い。女性の非正規公務員の現状に目を向けてほしい」と話す。
 

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