偽装請負と二重派遣 問われるアマゾンの責任 全国20施設全体に疑い
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2020-02-08/2020020804_01_0.html
しんぶん赤旗 2020年2月8日(土)
(写真)アマゾンの物流センター=埼玉県川越市
ファイズオペレーションズとワールドインテックの2社はアマゾンの物流センターで業務を受託している主要な請負業者です。
コスト削減
ファイズはアマゾンとともに成長してきました。同社のホームページによると、2013年の創業以来、「世界最大手のネット通販会社様」(アマゾン)が日本国内で開設した「物流センターの庫内オペレーション業務を受託」しています。「現在は国内10カ所の物流センターに、計数千人規模の作業スタッフを供給」しています。同社に委託すれば「安定的なマンパワーの確保」や「物流コスト削減などを実現」できると、コスト削減効果を強調しています。
インテックの物流部門も同様です。同社のホームページによると12年に「外資系大手通信販売企業様」(アマゾン)の「倉庫内業務の一部を受託したことからロジスティクス(物流)事業が本格スタート」しました。その後、業務を拡大し、「わずか数名でスタートしたロジスティクス事業本部も今では7000名を超える大所帯に成長」しています。
委託を装う
これら主要な請負業者がアマゾン社員の指揮命令下に置かれているという労働者らの証言は、全国20カ所以上に上るアマゾンの物流施設全体で偽装請負が行われている疑いを生じさせるものです。
アマゾンは偽装請負の違法性を認識した上で、業務委託の装いをこらしている節があります。労働者らが口をそろえて「作業者(派遣労働者など)に直接指示してはいけないとアマゾン社員は教育されている」と証言しているからです。
二つの要件
しかし、注文主が作業者への指示さえしなければ正当な請負になる、というわけではありません。厚生労働省が定めた基準では、請負契約に該当するための要件が大きく二つあります。請負業者が(1)自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用すること(2)請負契約により請け負った業務を自己の業務として契約相手から独立して処理すること―です。
(2)の要件には「(請負業者が)自ら行う企画または自己の有する専門的な技術もしくは経験に基づいて、業務を処理すること」が含まれます。請負業者の社員が注文主アマゾンの指揮命令下に置かれ、アマゾン社員の決めた計画に縛られ、トラブル発生時にアマゾン社員の判断を仰ぐよう迫られるのでは、要件を満たしません。
そのうえ複数の労働者らによれば、アマゾン社員から作業者への指示も日常的に行われています。そうしなければ「生産性」が上がらないためです。これでは(1)(2)の要件をいずれも満たしません。
また、(1)の要件には労働時間の管理が含まれ、「労働者の労働時間を延長する場合」の「指示その他の管理を(請負業者が)自ら行うこと」が必要です。生産計画遂行の一環としてアマゾン社員が残業の有無を決定し指示するのでは、やはり要件を満たしません。
アマゾンの物流施設全体で違法な偽装請負が常態化しているとすれば、請負業者にとどまらず、アマゾン自身の責任が問われます。
(杉本恒如)
偽装請負 業務請負とは、注文主と請負業者が請負契約を結び、請負業者が注文主から独立して仕事を完成させることで報酬を得る関係です。注文主は労働者と労働契約を結ばないので労働基準法や労働安全衛生法などの責任を負いません。
しかし請負契約を称していても、注文主と労働者の間に指揮命令関係があるなら、請負は偽装だとみなされます。実際には労働者は注文主の下に派遣されていると判断され、労働者を保護するための労働者派遣法や労働基準法、労働安全衛生法などの一部が注文主に適用されます。
二重派遣 派遣労働者を受け入れている派遣先が、雇用関係のない労働者を新たな派遣先に再度派遣するのが二重派遣です。雇用関係のない労働者を派遣すると、職業安定法第44条が禁止する労働者供給事業に該当し、同法違反となります。