昨年8月に公表された厚労省職業安定局の「住居喪失不安定就労者等の実態に関する調査報告書」(いわゆるネットカフェ難民調査)をあらためて読んでみた。住居を失いインターネットカフェや漫画喫茶などの店舗で寝泊りしながら不安定就労に従事する労働者(オールナイト利用者)は、全国で60,900人。内、店長へのヒアリング調査では、常連数は大阪市内2,700人に及んでいる。常連とは、週5日以上の利用、週3〜4日程度の利用者である。男女比率では男性が92.7%であり、女性は7.3%であるが、東京よりも女性比率が高い。年齢では25〜39歳が48.8%をしめ、東京の13.8%を大きく上回っている。大阪は「働き盛りの年代」であり深刻さが浮かび上がる。学歴別もある。高校卒業までの学歴者が全体の83%をしめ、職種では建設業が24%で最高となっている。東京の40.9%より下回っているが、東京より大きく上回っているのは製造業20.0%(東京5.3%)である。そして運転・運搬・倉庫、接客サービス業が続いている。
正社員の経験では19.5%が正社員の経験が無く、5年以上の経験者が39%を占めているのに驚かされる。1カ月間の収入は83,000円が平均値である。中でも、居住喪失失業者は63,000円である。
生活費の使い方はどうであろう。食費21,000円、ネットカフェ代23,000円、衣服・理美容・浴場1000円、携帯電話4000円、娯楽2000円(いずれもアンケートに空欄とした人は0円としている数字)である。
30歳前後のネットカフェ難民の驚くべき実態である。大阪市内24区で言えば、毎日100人のネットカフェ難民が眠れない姿勢で身体を横にしている。ネットカフェに入れない人は、真冬も、町中を朝まで歩き続けているのである。
製造業で多いことや半数が30歳前後に集中していること、一定の正社員経験者が半数をしめている実態にこそ、大阪における80年代後半から本格化した大手製造業の海外への工場移転や正規労働者のリストラの爪あとが構造的に残っている。行政である国や大阪府・大阪市は大企業の構造改革、雇用の弾力化や多様化を後押しした。ネットカフェ難民はその犠牲者であり、反省の無い大企業と行政は、その責任が問われ続けられなければならない。