東京社説 若者の雇用 「金の卵」は育ててこそ

東京新聞 2012年12月25日
 
若者たちの雇用が細っている。十二月に主な企業の会社説明会が解禁され大学三年生の就職活動が始まったが、状況は依然厳しい。社会を支える世代への雇用支援は大きな政策課題だ。
 
若者たちの就活は厳しい。来春卒業予定の大学生の就職内定率(十月一日現在)は63・1%、高校生(十月末現在)は60・9%で、いずれもリーマン・ショック以前の水準に戻っていない。就活中の四年生約十五万七千人が内定を得ていない中で、三年生の就活が始まった。
 
無職のまま卒業する若者もいる。今春、大学を卒業した五十六万人のうち、約八万七千人が就職や進学をしていない。非正規職など安定的な仕事に就いていない人は二割強いる。若者の失業率は今夏で7〜8%と全世代の倍近い。
 
正社員の職を得ても使い捨てにする「ブラック企業」がある。辞めた後は非正規になりやすい。
 
就職できない状況は改善したいが、就職できても非正規では技術や経験を積み、職業人として成長する機会が限られる。不安定で低収入のため結婚も難しく、少子化に拍車をかける。
 
十月施行の改正労働者派遣法は肝心の製造業派遣は経済界などの反対で禁止が見送られた。来年四月に施行される改正労働契約法は有期雇用から無期に転換を進める狙いがあるが、待遇や人材育成面での正社員との格差は残ったままで不十分だ。
 
厚生労働省調査では、パートの若者で「正社員になりたい」人は二十〜二十四歳で約六割、二十〜三十四歳でも四割を超える。その理由に収入や雇用の安定とともに「より経験を深め、視野を広げたい」ことも挙げている。
 
自分を磨き自立したい若者を支える雇用環境こそ必要だろう。
 
二〇一二年版の労働経済白書は中間層の拡大を目標に掲げた。企業に「人への投資」を増やすことを求めていることは当然だ。
 
職場での非正規の職業訓練機会は、正社員の半分しかない。これでは人は育たない。企業は正社員化や能力開発など待遇改善と人材育成に努めるべきだ。
 
国は雇用の受け皿となる成長分野を育て、働く環境の改善を進める必要がある。人を育てたいと考える中小企業や介護など業種もあるはずだ。若者には、仕事の魅力を探す就活をしてほしい。
 
若者は経済成長の原動力と同時に社会保障制度を支える「金の卵」だ。しっかりと育てたい。

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