高知新聞社説:【労災死の増加】職場の安全高める努力を

高知新聞 2014年08月20日

 ことし上半期(1〜6月)に労働災害で死亡した人が前年同期に比べ大幅に増えたことが、厚生労働省のまとめで分かった。

 企業活動の活発化に伴う人手不足から、経験の浅い労働者が増え、事故につながっているようだ。企業の安全点検や従業員教育の徹底とともに、各地の労働局などによる安全体制のチェックが欠かせない。

 まとめによると、上半期の死者数は437人で前年同期に比べ約2割増加、それを含む死傷者数全体も4%近く増えた。県内の死者は前年と同じ6人で、死傷者数は微増となっている。

 業種別の死者数をみると、建設業の159人(28%増)が最も多く、製造業、陸上貨物運送事業が続く。小売業や飲食店、介護などの「第3次産業」も多い。建設業では屋根や足場などからの転落、製造業は機械にはさまれたり、巻き込まれたりする事故が増えているという。

 建設業界は東日本大震災の復興事業や安倍政権の公共事業推進などで仕事量は急速に回復したが、職人の育成が追いつかず、深刻な人手不足に陥っている。製造業の現場も同様だ。未熟練の労働者らが増えたことが死傷事故増加の一因とみられる。

 加えて、長く続いた不況によって企業経営が厳しさを増した影響も見逃せないようだ。労災事故防止に取り組む団体の責任者は「安全衛生にかける経費が減っていたことも背景にある」と指摘している。

 このままでは労災事故はより深刻になりかねない。厚労省は業界団体などに労働災害防止に向けた緊急要請を行ったが、災害が増加傾向にある業種はむろん、全ての産業で積極的に取り組む必要がある。

 企業は各職場の安全管理体制にほころびがないかを点検し、体制を充実させるとともに、雇い入れ時の教育を徹底させることが欠かせない。特に、労災事故の9割を占める従業員300人未満の中小企業での取り組みが重要だ。

 各都道府県の労働局や労働基準監督署の職員も現場を回って、これまで以上に安全体制を点検し、指導などをしていく必要がある。

 労働災害のない、安心して働くことのできる職場づくりは、企業と従業員の双方にメリットをもたらす。両者が協力して職場の安全を高める努力を地道に積み重ねてもらいたい。

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