毎日社説 男女共同参画調査 「女は家庭」でいいのか

毎日新聞 2013年01月15日 

 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」。古くさい考えだと思われる向きもあろうが、内閣府の男女共同参画社会に関する世論調査では、賛成が51.6%、反対が45.1%だった。この質問を始めた20年前から一貫して賛成は減ってきたのが一転、前回より10ポイント以上も増えた。特に20代の賛成が突出して増えた。なぜだろうか。

 ライフスタイルの志向は個人的問題と思われがちだが、実際は経済状況や雇用慣行、社会保障制度などに影響を受けている。専業主婦志向の背景には、若者の就職難や女性にとって仕事と育児の両立が難しい社会状況があるのは間違いない。

 運よく正社員の座をつかんでも、長時間労働や過酷な勤務で体調を崩し離職する人は後を絶たない。それならば家庭に入った方がいいと消極的な選択に傾く気持ちは分かる。男性にとっても大勢で少ないポストを争う「椅子取りゲーム」の競技者が減るのはありがたいはずだ。

 しかし、そんなに甘い世の中ではない。終身雇用制と年功賃金を土台に社内の福利厚生にも支えられて家族全体の生活を守ることができた時代とは違う。正社員の割合は少なくなり、しかも一家の生活を賄えるだけの賃金を得ている正社員も減っている。専業主婦をめぐる椅子取りゲームも厳しくなったのだ。

 年金保険料を払わなくても給付を受けられる第3号被保険者、税の配偶者控除など専業主婦に有利な制度はたしかにある。しかし、超高齢化と少子化に伴う人口減少は急激に進んでいる。いつまでも現行制度が守られていくとは限らない。共働きの割合が増えるに従って、専業主婦優遇への風当たりは強まるだろう。

 社会全体から見ても、高学歴で職場でも能力が期待される女性が家庭内にいることは大きな損失だ。女性が政治や経済分野で指導的な地位を占める割合は、先進国の中で日本が突出して低い。医師不足の主な原因の一つは、年々増える女医が子育てや介護を機に離職することだ。お金や時間や公的支援などのコストをかけて資格やスキルを身に着けた女性たちの能力が十分に活用されないのは、いかにももったいない。

 少子化対策という面ではどうだろう。出生率が低いイタリア、ドイツ、スペインなどは「男は外で働き、女は家庭を守る」という家族観が伝統的に根強い国として知られる。女性が積極的に社会進出し、働きながら出産や育児ができる政策を充実させているフランスやスウェーデンの方が出生率が高い。今日的な先進国の少子化対策は、安心して女性が社会で活動できるような政策を進めることなのである。

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