新たなエネルギー社会の実現にむけて議論してきた大阪府市エネルギー戦略会議が、2030年に原発ゼロを達成するための提言をまとめた。
省エネや再生可能エネルギーの活用、2年以内の電力自由化などを盛り込み、実行に移すよう国や事業者に求めている。
脱原発を実現する現実的な手だてを示すよう会議に要請したのは、橋下徹大阪市長だ。野党第2党である日本維新の会の共同代表として国に働きかけていく責任がある。
東日本大震災が起こるまで、関西は原発への依存率が5割強と最も高い地域だった。国が主導するエネルギー政策に、消費地であり、住民と向き合う自治体から脱原発を提言することには意義がある。
国の政策立案に役立ちそうな提案がいくつもある。たとえば電源立地交付金を廃止し、立地自治体の産業構造転換につながる新たな支援制度を設ける提案は、脱原発を具体的に進める一歩になろう。
政府の原子力規制委員会は世界最高水準の安全基準づくりを進めている。実効あるものにするため、戦略会議は再稼働の条件だけではなく、廃炉のルールなどを明確にし、検査部門の強化も求めている。
脱原発が経済活動に与える影響にも目配りし、雇用対策として再生可能エネルギーへの投資を促している。大阪には環境・エネルギー関連企業が集まっている。「再生可能エネルギーで関西を世界の成長センターとする」ことも提言している。
自治体と専門家で関西原子力安全監視庁を設置する案が実現すれば、自治体が安全監視にかかわる新しい試みとなる。
個々の提案をどう実行するのか。具体策や工程にまで踏みこめていないところに限界を感じさせる面もある。たとえば放射性廃棄物の処理で、「後世に負の遺産を残さないよう最大限努力する」と述べるにとどめた。
提言に橋下氏は「国への提言と大阪府市でやれることを検討する」と述べた。
原発が集中する福井県の西川一誠知事は昨年、使用済み核燃料の中間貯蔵施設を電力消費地に置けばどうかと迫った。大消費地である大阪は解決策を考えていく必要がある。
総選挙の際、橋下氏は提言がまとまれば、できれば維新の政策に取りこみたいと語った。
維新は太陽の党との合併後、脱原発への姿勢があいまいになっている。これを機に党内でつっこんだ議論をし、原発政策を再構築してはどうだろうか。