来春の就職をめざして会社説明会に参加してきた大学3年生は、来月に4年生になると面接などの選考試験で忙しくなる。就職活動は早い時期から始まり、長丁場になりがちだ。
そうした「早すぎ就活」を是正する動きが出てきた。政府は大学生の学習環境を改善するため、経団連が定める採用活動のルールの見直しを働きかける方針だ。
具体的には、現在は大学3年生の12月としている会社説明会の解禁時期を4年生の4月に、4月からの選考試験は8月ごろからに遅らせるよう求めるという。
学生に就職活動の負担がかかり過ぎている現状は改める必要がある。長期間、就活に苦戦する中で自信を失う学生も多い。若い人材が育たなくなっては社会の損失だ。経済界は採用活動の開始時期の繰り下げに踏み切ってほしい。
経団連は2011年に採用活動の指針である「倫理憲章」を改定し、今春に卒業する大学生の採用から、会社説明会の解禁時期を3年生の10月から12月に遅らせた。だが選考試験の開始は4年生の4月以降のままにしたため、学生が早くから試験対策などの準備に追われる様子は変わっていない。
採用活動の時期の繰り下げをためらうのは、大手企業の後に選考を始める中小企業が人材を確保しにくくなる心配があったり、経団連に加盟していない外資系などの企業が早くから採用活動をしていたりするためだ。
しかし学生が学業に十分な時間を割けない今のままでは、日本の人材の質が劣化する。企業のためにもならないはずだ。
就職活動を4年生の遅い時期や卒業後に始めても、就職先が見つかるようにしたい。企業は秋や冬にも選考試験をする通年採用や既卒者採用を積極的に採り入れるべきだ。会社説明会や選考試験の解禁時期の繰り下げは、こうした採用改革を併せて進めれば影響を抑えることができるだろう。
学生に長期の就職活動を強いている根っこには、大手企業の採用が新卒者に偏り、4年生の4月から5月にかけて集中して内々定を出す「新卒一括」方式がある。春の選考に漏れると就職の機会が狭まってしまう。
新卒一括方式は採用のコストを抑えられるなどの利点があるが、学生の負担増も招いている。そこを企業は直視してほしい。採用方法の多様化を急ぐときだ。