労働・雇用の分野では、TPPを巡り大きく二つのポイントが指摘されている。一つは、外国人労働者の問題だ。協定に参加すれば「ヒト・モノ・カネ」が国境を越えて動くことになるため、これまでのような受け入れ制限は難しくなる。少子・高齢化で労働力不足が懸念されているため、歓迎する意見もあるが、賃金のダンピングや仕事の奪い合いを危惧する声もある。
もう一つは、解雇や労働時間などの規制緩和の問題だ。政府は「貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきではない」とするが、米国は前々から日本に労働規制の緩和を求めており、圧力が強まる可能性がある。
「安倍政権下では解雇の金銭解決制度などが提起されている。それらは、TPP参加の後に何が起こるかを示しているのではないか」。日本労働弁護団の幹事長を務める水口洋介弁護士は、労働者の立場が弱くなることを危惧するが、労働組合の対応はまちまちだ。
連合は、TPP参加を「理解する」との立場だ。連合の中心的な存在で、輸出の比重の高い自動車や電機業界などで構成する金属労協が参加に積極的なことが背景にある。また、労働規制の緩和には、労働市場の流動化や働き方の柔軟性促進といったメリットも指摘されている。
一方、食品産業のフード連合や全国農団労、日教組などは、安倍晋三首相が参加を表明すると、連名で「国民生活に対する懸念は払拭(ふっしょく)されていない」と事実上の反対声明を出した。TPPが労働分野に与える影響は見えづらく、労組の対応も割れている。【東海林智】=おわり