日本経済新聞 2013/11/3
育児休業を取りやすい環境をつくろうと、休業中の給付を手厚くする案を、厚生労働省が審議会の専門部会に示した。経済面での不安を減らし、特に男性の取得を後押しする狙いがある。
だが、これだけで取得が広がるかどうかは不透明だ。男性が子育てにかかわりやすくするためには、職場の意識改革などを同時に進めていく必要がある。
雇用保険からの育児休業給付は、開始時の1995年に賃金の25%だった。徐々に引き上げられ、現在は50%だ。見直し案ではこれを最初の半年間に限り、67%に引き上げる。
男性の育休取得率は2012年度に1.89%で、8割を超える女性に遠く及ばない。妻が専業主婦の場合でも取得できるようにするなどの対策も打ち出されてきたが、依然として低水準のままだ。期間も女性に比べて短い。
給付が手厚くなれば、家計への影響を考え育休を取るのをためらう人は減るだろう。しかし、男性の取得が進まないのは収入の問題だけではない。
「育児は女性がするもの」という意識は根強く、短期間でも育休を取れないという男性は少なくない。休みやすい職場づくりを企業が進めることが欠かせない。
職場の業務の進め方を見直し、無駄な仕事を省いて、効率的な働き方を工夫することが大事だ。こうした積み重ねは企業にとっても生産性が高まる利点がある。
子育ては長期間に及ぶマラソンのようなものだ。有給休暇を取りやすくすることや、長時間労働を見直すことも求められる。
職場環境の改革は、育児にかかわりたいという男性の希望をかなえるだけではない。成長戦略の柱に位置づけられた「女性の活躍」を推進していくうえでも重要だ。
男性が育児をともに担い、女性の負担が軽くなれば、次の出産へのためらいも薄まるだろう。どうすれば男性がより育児にかかわりやすくなるか、少子化対策としても考えていく必要がある。