東京社説 夜行バス事故 防止策は十分だったか

東京新聞社説 2014年3月5日

 またも高速バスの死傷事故が起こった。関越自動車道のツアーバス事故を教訓に、制度改正や基準強化による安全策は採られたが、運転手の健康管理を含め、再発防止の取り組みに終わりはない。

 富山県小矢部市の北陸自動車道サービスエリア(SA)内で夜行バスが駐車中のトラック二台に激突、バス運転手と乗客の計二人が死亡した。現場にブレーキ痕はなく、SA手前でガードレールに二度も接触していた。県警では運転手が事故直前に意識を失っていた疑いもあるとみて、遺体を司法解剖して調べている。

 高速夜行バス事故で記憶に新しいのは一昨年四月、群馬県藤岡市の関越自動車道で金沢発のツアーバスが防音壁に激突し、石川、富山県の乗客七人が死亡、三十八人が重軽傷を負った大惨事。運転手の居眠りが原因とみられ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を患っていたことが分かった。

 国土交通省は居眠りや過労による事故を防ぐため、昨年八月から一日当たりの夜間運転を原則四百キロ、高速道路の連続運転をおおむね二時間などに制限し、交代要員の配置基準を強化した。

 さらに旅行会社が貸し切りバス会社に運行委託するツアーバスを廃止、安全規制が厳しい乗り合いバスに運行形態を一本化した。

 以来、業界の安全意識は神経質なほど高まったという。しかし、惨事はまたも起きた。安全に絶対はない。事故原因を徹底究明し、再発防止へ向けて国も事業者も対策を考えてもらいたい。

 事故を起こしたバス会社は宮城県内最大手。事故後の同省特別監査では明らかな法令違反は見つからなかった。死亡した運転手は、昨年十月に同社が自主的に行ったSASの簡易検査で要経過観察と判定されたが、産業医は「業務に支障ない」と判断した。

 なぜ意識を失ったのか、捜査の焦点はここに絞られる。人命を預かる運転業務者にSAS検査を義務づけ、少しでも疑いのある要経過観察者には精密検査を受けさせる必要はないのか。さらに産業医の判断に基準のようなものがいるのか、検討すべき課題だ。

 同省は今年十一月以降に生産される総重量十二トン超の大型バスに、衝突しそうになると自動でブレーキがかかる装置の設置を義務付ける。販売済みの車種は三年後の生産分から適用される。

 バス事故は大惨事につながりかねない。ハード、ソフト両面から事故防止を追究してもらいたい。

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