「統合型リゾート(IR)の整備を推進する法案」いわゆるカジノ解禁法案は今国会で審議入りすれば成立は間違いないと言われてきました。日本共産党と社民党を除く、超党派の議員連盟がつくられ、安倍首相はその顧問にすわっています。その安倍首相は5月末、世界有数のカジノを持つシンガポールのIRを視察し、同法案成立が「成長戦略の目玉になる」との考えを示しています。
私はカジノ反対の立場で市民グループを立ち上げ、この1年数か月、集会やアピール運動、府議会・市議会要請、街頭宣伝活動などを行ってきました。しかし、カジノ解禁といっても、今更何を、すでに日本には公営ギャンブルもあるではないかと思われる向きも多いと思います。そのうえ、日本は世界一パチンコ店が多く、1万2千軒もあるといいますから、まさにすでにギャンブル王国となっています。そして、ギャンブル依存症についても日本人の成人男性の9.8%はギャンブル依存の経験があり、欧米の1〜2%から比べると突出して深刻な状態であることも明らかとなっています。
そういう現状があるものの、かろうじて日本では賭博は法律で禁止されてきました。それを解禁しようというのですから、儲かるなら、ギャンブル依存症患者が増えようが、生活破綻者が増えようが、おかまいなしということです。しかし、儲かると言っても、それはカジノ運営会社(アメリカ資本)が儲かるだけで、国や自治体はその上前を撥ねるだけですから、経済効果は国が言うほどのものでないというのも明らかになりつつあります。
カジノ推進派がどのようにきれいごとを並べても、バクチは負ける人の犠牲の上に成り立つものです。人のカネを巻き上げて、経済成長などと恥ずかしげもなく言えたものです。ギャンブルは何も生産しません。互いに奪い合うだけ、あるいは奪いつくされる破壊的な「遊戯」です。労働とは対極のものです。また、ギャンブル依存症になれば、行きつく先は家族や周囲も含めた人生そのものを破たんに追い込みます。カジノ解禁は今でも深刻なギャンブル依存にさらに拍車をかけることになるでしょう。このような「負の経済効果」こそが議論されなければなりません。推進派や安倍首相がこの「負の経済効果」に目をつぶり、労働者・国民の生活破綻を招きかねないカジノ解禁をやろうというのは、まさに現代版「パンとサーカス」にほかありません。
過重な労働、違法無法な労働、ストレスにあえぐ日本人の一つの逃げ道としてギャンブルが口を開けて待っているそんな「美しい日本」を私は見たくありません。