琉球新報 2014年8月26日
県内で労働災害が急増している。
人手不足が安全軽視につながる悪循環に陥っているようだ。
好況に伴う企業活動の活発化と従業員の安全確保対策が反比例してはならない。
ことし7月までに県内事業所で発生した労働災害が昨年同期比で約3割増えた。特に建設業でけがを負う従業員が目立つ。
その中でも、主要構造部分を形成する「躯体(くたい)工事」に従事する型枠工や鉄筋工などの専門職が多く、死傷者97人のうち32人を占める。人手不足が深刻な職種である。
沖縄労働局は、経験の浅い労働者が増え、事故につながっているとの見方を示している。工期に追われ、無理な作業を強いる現場の雰囲気がありはしないか。
各企業は従業員の安全を最優先した従業員教育の充実を図るべきだ。沖縄労働局や県などは企業の安全対策の検証と現場での安全指導を徹底してもらいたい。
県内では7月までに労働災害で3人が死亡し、昨年の2人を超えた。沖縄労働局が建設業に特化した形で労災防止策の徹底を要請する異例の事態となっている。
労働局によると、躯体工事に携わる専門職の有効求人倍率は昨年6月の0・85倍から2・45倍に急上昇した。1人当たりの仕事量が増え、安全対策がおろそかになっている可能性がある。
働く労働者の知識や技能が追い付かないまま、危険を伴う作業に従事すれば、労災はさらに悪化しかねない。従業員への手厚い安全教育が不可欠である。
建設業界は、全国的に東日本大震災の復興事業や安倍政権の公共事業推進施策などで仕事量が急に増えた。ことし6月までの全国の労災死亡者は437人で昨年同期に比べ約2割増えている。
熟練した従業員の育成が後手に回る中、昨年まで長く続いた不況のあおりでコスト削減を迫られ、企業側が安全対策にかける経費を切り詰めてきたことも背景にあるだろう。
高所作業や重機を用いた作業を伴う建設業で起きる事故は、複数の人を巻き込んでけがを負わせたり、人命に直結したりする危険性が付きまとう。
それだけに企業側には転落防止対策や作業手順の厳守など、万全の安全対策を立てる重い責任がある。行政と企業が手を携え、県内での労災を抑え込んでほしい。