鎌田慧さん「本音のコラム 労組壊滅作戦」東京新聞2019年8月6日

東京新聞2019年8月6日
本音のコラム
 
労組壊滅作戦
           鎌田慧(かまたさとし)
 
 「反社会的組織」といえば、主に右翼暴力団を指す。が、この言い方が拡大されると、権力の暴力化が進みかねない。
 いま、近畿地方で広がっている労働運動に対する差別者集団の悪罵と暴力的な攻撃を、警察がなんら取り締まっていな いむしろ逆に、レイシストに呼応するかのように、労働組合員たちを威力業務妨害、恐喝未遂要未遂などの容疑で大量に逮捕している。
 これは「全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部」への刑事弹圧の話だが、起訴された組合員は五十四人、労組幹部は一年におよぶ長期勾留だ。関西の事件なので、全国的にはほぼ伝えられていない。正社員化要求などを「不当な要求」と、まるで暴力団のように書いた記者もいる
 しかし、ストライキを威力業務妨害とするのは、憲法二八条(団結権)違反である。労働組組合法は、労働者の地位向上などを目的とした正当な行為は罰しない、と規定する。報道する側の人権意識が問われている。
 私は十代のとき、労組結成を嫌悪した経営者が、会社の偽装閉鎖(ロックアウト)攻撃をかけたのに対し、七十五日間の職場占拠闘争で撤回させた経験がある。この時代の民主主義の力は、警察の労働運動への干渉を抑制していた。大阪、京都の両府警、滋賀県警の労組攻撃は、民主主義の基盤の破壊である。
            (ルポライター)
 

 

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