徳島新聞【社説】最低賃金引き上げ 大都市との差まだ大きい (8/13)

【社説】最低賃金引き上げ 大都市との差まだ大きい

徳島新聞 2019年8月13日 5:00 https://www.topics.or.jp/articles/-/242700

 都道府県ごとに決める本年度の地域別最低賃金(最賃)が、全国で出そろった。平均の時給は現行より27円高い901円となる。

 上げ幅は2年連続で過去最大を更新した。徳島や鹿児島など19県は、厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会(中央審)が示した引き上げの目安額を1〜3円上回っている。

 正社員やパート、アルバイトなど全ての労働者に適用される賃金の下限額が大きく引き上げられることになり、特に影響を受ける非正規労働者の所得増に、一定の効果が期待できよう。

 最賃を巡り、安倍政権は3年前の改定から毎年3%程度の引き上げを唱えている。6月にまとめた「骨太の方針」には時給千円の早期実現という新たな目標を掲げた。7月の参院選では、与野党がそろって大幅増額を訴えている。

 政府や政党のこうした意向が、中央審の目安設定や地域審議会の決定に反映されたのは間違いない。

 だが、大幅な増額になったとはいえ、地方と大都市圏の賃金格差という重要な課題は解消されないままだ。

 改定額が最も高い東京の1013円と、最も低い鹿児島など15県の790円とは223円もの開きがある。見直し前からわずか1円縮まったにすぎない。

 徳島県の改定額も中央審の目安額を1円上回る27円増の793円で、東京との差額は大きい。

 時給が全国平均を上回っているのは東京や大阪など7都府県だけで、これらの大都市が平均を押し上げている構図は変えられなかった。経済規模の違いを考慮しても、地方と時給の差がありすぎる。

 このままだと、大都市圏への若者を中心とした人口流出が拡大し、地方はますます衰退しかねない。入管難民法改正によって増加が見込まれる外国人労働者も、大都市に集中してしまうのではないか。

 政府は今後、全国平均の引き上げよりも、地方と大都市圏の格差解消を優先して考えるべきである。

 ただ、最賃の引き上げで経営を圧迫される中小企業は多い。事業縮小や廃業、倒産を招き、雇用が失われるとの指摘もある。10月からの消費税増税に伴い、人件費の増加はさらに痛手となるだけに目配りが必要だ。

 政府は生産性を高める設備投資への助成や、賃上げに積極的な企業に対する税制優遇などに取り組んでいる。最賃アップを持続的に進めるには、支援策のさらなる拡充が欠かせない。

 今回の改定で賃金引き上げが必要な労働者は、県内に9338人いるとみられる。本県の改定額で週40時間働いても、年収はワーキングプアの分かれ目とされる200万円に届かない。まだその程度の水準なのである。

 政府は地方を重視し、中小企業が大幅に賃上げできる環境整備に努めてもらいたい。 

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