副業・兼業の広がりと長時間労働|「ちょっと言わせて」
労働新聞社 〜経営、人事・労務の専門情報紙〜
https://note.mu/rodoshimbun/n/n2aa1e9d19b91
2019/09/27 15:02
「人生100年」とされる時代を迎えた今、一つの会社で勤め上げるケースが今後ますます減っていくと言います。
多様なキャリアを形成する必要が生じるため、それを促す手段として「副業・兼業」のような二足の草鞋(わらじ)的な働き方の推進が必要になるとも。
それらのことは、働き方改革実行計画の中に記されていて、目下、その路線で着々と作業が進んでいるのはご承知のことと思います。
実現した場合に安全衛生面で懸念されるのは長時間労働です。
某調査によれば、すでに副業している者のおよそ3割が1週間に60時間以上働いているという結果もあります。
過労死ラインに匹敵するわけですが、同実行計画では「長時間労働を招くようなことがあっては本末転倒」とも書かれていて、そこはきちんと国が目を光らせ監督する姿勢のようです。
もう一つの懸念は、異業種で働くようなことを想定した場合、慣れない仕事に伴う危険が顕在化するケースです。
「メーンの仕事はホワイトカラー的な頭脳労働だけれど、副業先は体を使った業務が多い」――そんな場合はケガをしたりする確率も高まりかねません。
本業にマイナス影響が及ぶような副業先を認める会社は考えにくいかもしれませんが、現時点で確実に「ない」とは言えません。
いずれにせよ、安全衛生面の「リスク」は増えるものと思われますが、労災保険や健保・厚生年金への加入のあり方が今後の議論でどうなるかにより責任の所在なども明確になってくるはずです。事業者サイドとしては動向を注視すべきです。
国が「多様なキャリア形成」というきれいな言葉を並べても、現場の本音は単に「収入増」にあり、そうした流れが主流となることもあり得ますから、安全衛生担当者の責任は増えこそすれ減りはしないと心得るべきです。
先日インタビューした厚労省の安全衛生部長も、長時間労働につながる懸念があるというのは一般的な事実だと思うという見方を示した上で、「その懸念を払拭する形で対策を打っていかねばならない」と応じてくれました。
いずれ健康診断や産業医の面接指導のあり方はどのようなものが求められるか考えねばならない時期が来る旨を話していましたので、何らかの法令改正の動きがあるかもしれません。
安全スタッフ編集長 福本晃士