〔コラム〕日本のコミュニティユニオンをご存知ですか
http://www.labortoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=161731
(W)韓国非正規労働センターの前所長であるイ・ナムシンさんが、毎日労働ニュースに掲載するコラムで、日本のコミュニティ・ユニオンとの連帯について「日本のコミュニティユニオンをご存知ですか」という興味深い文章を書かれています。私は、2000年5月、韓国の非正規労働センター創立記念のシンポジウムに呼ばれて、日本の労働者派遣法について講演したことがあります。イ・ナムシンさんは、その後、4代目の非正規労働センター所長になり、何度か訪問調査に応じていただいたことがあります。2000年当時、日本では派遣労働をめぐる労組の活動がほとんどなく、私がネットで行っていた「派遣労働者の悩み110番」の相談活動が非正規労働センターがしようと思っていた活動と重なったことから、私が日本の派遣労働について話すことになりました。その後、全国でコミュニティユニオンなど地域単位で派遣労働者の相談をする個人加盟組合が誕生し、活発な活動をすることになりました。コミュニティユニオンはそうした新たな組合運動だと思い、私も注目してきました。日韓の非正規労働運動の連帯を願ってきた私としても、このイ・ナムシンさんのコラムに大いに共鳴しています。12/14の日韓「働き方改革」フォーラム(龍谷大学)では、韓国側の参加者がコミュニティユニオン訪問をされる予定もあります。日韓での新たな労働交流の広がりを期待します。なお、イ・ナムシンさんは優れた文筆家で、訳出が難しい表現が少なくありません。私の韓国語訳ではどこまで正確に意味をとれているのかいつも不安があります。あくまで「試訳」です。試訳文責:脇田滋)
〔コラム〕日本のコミュニティユニオンをご存知ですか
イ・ナムシン 韓国非正規労働センター常任活動家
イ・ナムシン 承認2019.11.28 08:00
韓日関係の梗塞局面が解消される兆しが見られなくなっている。この情勢に乗じて、政府と与野党政界の労働基本権改悪の動きも表面化しており、大いに心配である。全世界労働者の団結を目指してきた国際労働運動の伝統は曖昧になり、4次産業革命時代の、より一層切実に求められる国際連帯も拡大できないまま足踏みして止まっている。労働を経済のサブカテゴリー(下位範疇)としか考えない歴代政権と、大法院判決さえ無視する資本の攻勢の中で、国境を越えて労働者の権益を守り伸張させるために団結しなければならない韓国労働運動と非正規職運動の役割が求められる時代であるが、現実は厳しく侮ることができない。このような問題意識で、最近、希望の端緒を確認した韓日労働連帯事例を共有したい。
先月5日と6日、1泊2日で進められ日本の全国コミュニティユニオン31次全国交流集会に韓国非正規職労働団体ネットワーク(韓非ネ)活動家らと被解雇労働者が共に全体プログラムに結合されて連帯した。初めは難しいように思われた日本のコミュニティユニオンと韓非ネ間の連帯が色々な経路と交流協力過程を経て力強く実現した。この9月、韓非ネが主催した韓国非正規労働博覧会に連帯した日本のコミュニティユニオン同志たちがまとめの行事で「非正規職撤廃!」と「NO!安倍」を叫んだりして韓日労働連帯の決意が一段と高まった。
日本のコミュニティユニオンは、九州地域6、四国地域5、近畿地域21、中部地域8、東京地域12、関東地域12、東北地域7、北海道地域7など、78地域の労働組合で構成されたネットワークで、30年の歴史を有しており、組合員は2万人程度である。基本的に全国組織に加入していない中立労組で、一部は産別連盟、一部は日本労総(連合)に加入しており、ごく一部が全国労働組合協議会(全労協)に加入しているが、基本的に全国単位労総に加入しない個別労組が大部分である。
コミュニティユニオンが出発した歴史的背景と経過に注目する必要がある。1975年からサービス業、卸・小売業を中心に低賃金不安定雇用が急速に拡大した。日本の全国単位労総は、連合・全国労働組合総連合(全労連)・全労協などがあるが、ほとんどが企業の正規職を対象に組織してきた。こうした中で1981年から地域労組で労働相談活動が拡大し、東京、江戸川区労働組合に訪ねてきたパートタイム(時間制)非正規労働者が「私たちが加入する労働組合があれば良いのに」と話したのがきっかけになって、1984年「愛・友愛・たすけ愛」を標語にした江戸川ユニオンが結成された。これがコミュニティユニオンの始まりであり、以後1989年初めて全国交流集会が開かれた。
コミュニティユニオンは、確固たる連帯を指向しており、地域社会と密着して活動してアルバイト・派遣労働者・外国人(移住)労働者など多様な不安定労働者が差別なく加入することができる。主要事業としては、コミュニティユニオン共同事業と各地域で地域労組がする事業に大別される。コミュニティユニオンに加入した地域労組の主要事業は相談と紛争解決である。相談に来た労働者を地域労組に加入させて、個別紛争解決のための法律・相談・闘争などを支援する。そして、紛争解決時に発生する金額の一部を地域労組に納付することにする。コミュニティユニオン活動は、韓国の地域非正規職労働団体が労働人権死角地帯に追いやられた未組織非正規労働者の権益保護と改善のために展開した活動と似ている。
12種類の労働関連主題を幅広く扱ったコミュニティユニオン分科会議で、韓非ネの活動を紹介して、韓国の非正規労働の実態と解決法を別途主題として共有して心おきなく討論した。韓非ネが二大労総とどのような関係なのか、セクト(政派)問題はないのか、二大労総が非正規職問題解決のためにどんな努力を傾けているのか、非正規職の正規職化過程で正規職労組の反発はなかったのか、非正規労働者の組織化方法はどのような経路があるのか、多様な質問と討論が行われた。時間の制約で十分に議論できなかったという物足りなさが大きいが、相互信頼が形成される大切な場であった。集会を終えて韓日非正規労働連帯を拡大強化して、来年予定されるコミュニティユニオン32次全国交流集会と韓非ネ活動家ワークショップにも互いに連帯することを約束した。現在のように韓日関係が労働権を制約する口実として作用し、非正常的にこじれた局面で労働者連帯が非常に重要な意味があるということに共感し、共同行動も模索してみようと心を集めた。
印象的な場面一つ。
韓国の労働歌謡である<私たちは行きましょう>*に合わせて数百人の日本のコミュニティユニオン組合員および幹部らと、韓国の非正規職労働団体の活動家が一つに交わって身振りしながら久々に解放感が心臓を熱くして流れた。安倍などは忘れて、韓日非正規労働連帯が両国の友情と連帯をつなぐ重要な通路であることを改めて痛感した。
〔*訳注:<私たちは行きましょう>は、原題が、우리는 가지요。動画では、次のサイトhttps://www.youtube.com/watch?v=wcFSSO5Q5Mg〕
韓非ネとコミュニティユニオンのように不法派遣と外国人(移住)労働問題など、共通課題を抱えている韓国と日本の労働運動と非正規職運動が、より一層躍動的に連帯して協力することを希望する。
韓国非正規労働センター常任活動家(namsin1964@daum.net)
イ・ナムシン labortoday
【参考記事】
脇田滋の連続エッセイ – 第14回 「労働者分断」を乗り越えてきた韓国労働運動(下)
https://hatarakikata.net/modules/wakita/details.php?bid=16