前回は男女の労働時間の開きがだんだん大きくなっていく傾向を「労働時間の性別二極分化」と呼び、1970年代から80年代にかけてそれが顕著に進んだことを確認しました。この傾向は1990年代以降も、ゆるやかながら進行しています。
それを確かめるために「労働力調査」で1993年から2007年のあいだの変化をみると、週平均労働時間は、男性では1.3時間しか減少していませんが、女性は3.2時間も減少しています。年間ベースで言えば、減少幅は男性67.6時間、女性166.4で、男女の開きは478時間から577時間へ、約100時間増大しています。
しかし、最近では、一方で男性でも主に若年層と高年層の間で週35時間未満の短時間労働者の割合が高まってきたために、以前のように女性だけがパート比が高まり平均労働時間が短くなる、という傾向はみられなくなってきました。それとともに、女性でも週60時間以上の超長時間労働者が増えてきたために、いまでは男女ともに「労働時間の二極分化」の傾向が現れています。それを確認するために作成したのが下の表です。
表 年間就業日数が200日以上の雇用者の性別・労働時間別分布の変化
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時間区分
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1〜34
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35〜42
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43〜48
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49〜59
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60〜
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男性
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2002年(%)
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3.0
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27.5
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29.5
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23.3
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16.6
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2007年(%)
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4.2
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26.4
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28.2
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23.5
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17.5
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女性
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2002年(%)
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21.8
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38.0
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24.8
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11.1
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4.2
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2007年(%)
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23.5
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37.3
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22.0
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11.3
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5.6
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(出所)総務省「就業構造基本調査」各年版
(注)雇用者は役員を除く数字。
これをみると、超長時間労働者は男性に集中し、短時間労働者は女性に集中していることが判ります。それとともに、わずか5年間という短い期間であるにもかかわらず、男女とも週60時間以上と週35時間未満の両極で比率の増加が生じていることが見て取れます。
パート・アルバイト・派遣などの非正規雇用のなかでも長時間労働者がいます。また、派遣で長時間働く人やパート・アルバイトでダブルワーク(掛け持ち仕事)をする人が増えています。それでもなお、正規雇用(正社員・正職員)と比べて、非正規は短時間労働者の割合が圧倒的に高いことは否定できません。それを念頭におくと、「労働時間の二極分化」は、正規と非正規への「雇用の二極分化」の結果であると言えます。