第69回 将来に禍根を残さない労働者派遣法の早期抜本改正を

 9月30日、労働者派遣法の早期抜本改正を求める集会が国会内で開かれました。主催したのは年越し派遣村にも取り組んだ「労働者派遣法の抜本改正をめざす共同行動」です。

集会では、棗(なつめ)一郎弁護士が基調報告を行い、派遣切りにあった労働者と、民主党、社民党、共産党などの与野党の代表が発言をしました。労働者派遣法の改正案については、前回に述べたように、すでに去る6月に民主・社民・国民新の3党案が国会に提出されています。先の総選挙で民主党が圧勝し、3党連立政権が誕生した現在では、当面の3党案をよりよいものにして、早期に成立させることが求められています。

労働者派遣法は1985年に制定されました。今日の派遣労働をめぐる中間搾取(ピンハネ)、細切れ雇用、劣悪な労働条件、使い捨て、組合なし、休暇なしなどの諸問題の多くはこのときから始まっています。その後、99年改定で、許可業務を列挙するポジティブリスト方式から、禁止業務(建設、港湾、警備、医療、製造)以外は原則自由とするネガティブリスト方式に変わり、2003年改定で04年からに工場などの製造作業にも派遣が解禁されました。これにともない、登録型派遣労働者とその一形態である日雇い・スポット派遣が激増し、派遣労働者が経験のないまま危険な作業に携わるようになったために、04年から07年の3年間に労災事故が9倍に増えました。

派遣契約は労働者と使用者とのあいだの労働契約でなく、派遣元と派遣先の商取引です。派遣労働者は商品あるいはモノとして取引されています。問題の根源はこの点にあり、問題の根本的な解決のためには労働者供給事業を営むことも利用することも禁止していた職業安定法の趣旨に立ち戻って、労働者派遣制度をなくす必要があります。

しかし、前回示したように、現状では3党案も共産党案も労働者派遣法を廃止せよとは言っていません。したがって、現状では全面規制を言い立てることは現実的ではありません。となると、何をどのように改めれば抜本改正の名に値する改正になるのでしょうか。ポイントは以下の3点です。

?細切れ雇用でもっとも問題になってきた日雇い派遣やスポット派遣は禁止する
?製造派遣を「専門業務を除き」などといった曖昧な例外を設けることなく禁止する
?登録型派遣は原則禁止し、例外的に認める場合は厳格な意味の専門業務に限る 

直接雇用見なし制度(派遣制限期間の超過や違法な派遣受け入れがあった場合に派遣労働者が派遣先に直接雇用を通告できる制度)の創設や、派遣先労働者と派遣労働者との均等待遇の保障などについては、3党案も共産案もほとんど違いません。違いは?と?にあるようです。

3党案は「専門業務を除き製造業派遣を禁止する」となっていて、製造派遣に抜け道を残しています。また民主党のマニフェストでは「登録型派遣を原則禁止」とうたっていましたが、3党案ではそれが消えています。共産党案とのあいだのこれらの違いは大きいともいえますが、議論と運動によって乗り越えられる性質のものです。早期抜本改正をめざしながらも将来に禍根を残さないようにしなければならないと思います。

 

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