第185回 この四半世紀に増加した労働者は全員が非正規労働者です!?

就職問題についてある原稿を依頼された際に、総務省「労働力調査」の長期時系列データからこの四半世紀のあいだの非正規労働者の人数と比率の推移を見てみました。この統計では非正規労働者は、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託、その他の合計とされています。

いまから四半世紀前の87年2月調査と、最近の2012年1〜3月調査を比較すると、ビックリするような数字が浮かび上がります。アバウツにいうと、この間に雇用者総数(役員を除く)は4000万人から5100万人に、1100万人増加しています。にもかかわらず、正規労働者(「正規の職員・従業員」)数は3300万人で、ほとんど変化していません。その一方、非正規労働者数は、700万人から1800万人に膨らみ、1100万人増加しています。この四半世紀のあいだに増えた雇用は、まるですべて非正規雇用であったかのようです。このことは、非正規労働者比率がこの間に2倍に増えて17.6(男性7.6、女性34.3)%から35.1(男性19.6、女性54.6)%になっていることと合わせて、この間の雇用の非正規化がいかにすさまじかったかを物語っています。

ただし、正規労働者数はこの間ほとんど変化していないというのは正確ではありません。より正確にみると、1987年から1997年までは、正規雇用者は約3300万人から3800万人に500万人増えています。にもかかわらず、2005年までに500万人減って3300万に戻り、その後はほぼ横ばいに推移して2012年にも3300万人に留まっています。

雇用者総数が増えたのは、農業が衰退し商工業でも自営業が潰れて自営業主と家族従業員が大きく減ったことにくわえて、パートタイム就労を中心に女性の雇用労働者率が高まってきたからにほかなりません。

今後は少子化と人口減少の影響で、雇用者総数は概ね横這いに推移するものと考えられます。にもかかわらず、引き続き非正規雇用者が増加していくなら、その分、正社員、正職員などの非正規労働者が絶対数においても減少していくことは避けられません。

この仮定の下で、今後四半世紀のあいだに、非正規労働者が過去四半世紀と同様に1100万人増加するとすれば、正規労働者は2200万人に減少する一方、非正規労働者は2900万人に増加し、非正規雇用比率は男女計で57%になります。

今でさえ悲惨な状況になっているのに、非正規率が四割、五割と高まるような事態を許してはなりません。これでは社会の再生産が成り立たたなくなり、今でさえ危うくなっている社会の持続可能性が最後的に破壊されてしまいます。その意味でこれはありそうもない数字です。とはいえ、韓国では非正規雇用比率が一時50%を超えた時期もあったことを考えると、まったくあり得ないことではなりません。

それだけに、ストップ原発!、ストップ消費増税!、ストップ過労死!、ストップ貧困!の声とともに、ストップ非正規!の声大きくして、政府の雇用政策と企業の雇用管理を変えさせるべきときです。

 

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