第224回 国連人権委が日本に過労死防止について法的措置を勧告しました

日本は国連の国際人権規約を批准しています。同規約のうち、社会権規約の各国での実施状況に関する国連人権委員会における審査が2013年4月29日〜 5月17日の日程でジュネーブであり、うち日本の審査が4月30日に行われました。

「過労死家族の会」は、日本政府が提出した報告に対するカウンターレポートを事前に提出したうえで、有志10名がジュネーブを訪れ、審査前日(4月29日)に各国の審査委員と非公式・公式のミーティングを行い、審査当日(4月30日)、審査の様子を傍聴しました。上記のミーティングでは、過労死家族の会のメンバー3人が「過労死は社会権規約に反する人権侵害である」というスピーチを行いました。

その結果、審査最終日の5月17日に発表された社会権規約委員会の総括所見の第17項に過労死・過労自殺についての勧告が盛り込まれました。これは山場にさしかかっている過労死防止基本法の制定運動にとって大きなステップとなるものです。

この勧告については産経新聞と日本経済新聞が大きく報じています。

5月23日 産経新聞 過労死 国連が日本政府に「懸念」示す、新たな立法・規制も勧告

5月24日 日本経済新聞 過労死 日本に改善勧告 国連委、防止策強化求める

以下に、国連人権委勧告の当該箇所の訳文と原文を示しておきます。

<日本語訳>
17. 委員会は、締約国が雇用主に対して自主的な行動をするように奨励する措置を講じているにもかかわらず、多くの労働者が今なお非常に長時間の労働に従事していることを懸念する。また、委員会は、過労死および職場における精神的なハラスメントによる自殺が発生し続けていることも懸念する。

委員会は、社会権規約7条に定められた、安全で健康的な労働条件に対する労働者の権利、
そして、労働時間に対する合理的な制限に対する労働者の権利を守る義務に従って、締約国が長時間労働を防止する措置を強化し、労働時間の延長に対する制限に従わない者に対して一般予防効果のある制裁を適用するよう勧告する。また、委員会は、締約国が必要な場合には職場におけるあらゆる形態のハラスメントを禁止、防止することを目的とした立法、規制を講じるよう勧告する。

<英語>
17.The Committee notes with concern that a significant number of workerscontinue to work for excessively long hours,in spite of the measures taken by the State party to encourage employers to take voluntary actions. The Committee is also concerned that deaths caused by overwork and suicides due to psychological harassment in the workplace continue to occur. 

The Committee recommends that, in line with its obligation under article 7 of the Covenant to protect workers’ right to safe and healthy working conditions and to reasonable limitation of working hours, the State party strengthen measures to prevent long working hours and ensure that deterrent sanctions are applied for noncompliance with limits on extensions to working hours. The Committee also recommends that the State party, where necessary, adopt legislation and regulations aimed at prohibiting and preventing all forms of harassment in the workplace.

 

 

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