6月20日、午後8時10分頃に、参議院本会議において「過労死等防止対策推進法案」(以下「過労死防止法」または単に「法」といいいます)が可決、成立しました。6ヵ月以内に施行されることになっているので、早ければ今年の11月は法にもとづく最初の過労死等防止啓発月間になるかもしれません。
過労死が日本の深刻な社会問題として広く知られるようになったのは、過労死110番全国ネットワークが開設された1988年からでした。それから数えて25年になります。2010年10月に過労死防止法の制定を求める最初の院内集会(準備集会)が開催され、2011年11月に過労死防止基本法制定実行委員会が結成されました。
実行委員会は、過労死はあってはならないことを国が宣言することなどを求めた100万人署名に取り組み、現在までに55万筆を超える署名を集めました。過労死防止法の制定を求める自治体の意見書採択が進み、10道府県議会を含む、全国120地方議会に広がっています。
また本年5月までに170名から250名規模の院内集会が10回開催され、毎回、多数の議員に賛同のご挨拶をいただいてきました。昨年6月には過労死防止法の制定を求める超党派の議員連盟の世話人会が発足し、12月には、野党共同提案のかたちで「過労死等防止基本法案」が衆議院に提出されました。本年4月には、自民党の党内調整を経て、超党派議連案となった「過労死等防止対策推進法案」がまとまりました。本年5月23日の衆議院厚生労働委員会と6月19日の参議院厚生労働委員会においては、法制定の意義について、家族の会を代表して寺西笑子さんが意見陳述をおこないました。
この法律の最大の意義は、はじめて過労死の防止を国および自治体の責務として定めたことにあります。法には過労死防止のための調査研究、啓発、相談体制の整備、民間団体の活動支援などが盛り込まれています。これによってこれまで実施されてこなかった過労死の総合的な調査研究を国の責任で行うことが可能になりました。法は、過労死防止についての国民の関心と理解を深めるために、国や自治体に教育活動や広報活動を推進することを求め、11月を「過労死等防止啓発月間」とすることを決めています。法は、過労死等の防止対策に関する大綱の作成のために、「過労死等防止対策推進協議会」を設け、その委員に過労死遺族が入ることを明記しています。
また、法は、毎年、政府に対して過労死白書を国会に提出し、過労死等の概要と政府の過労死防止対策の実施状況を公表することを求めています。さらに、法は、調査研究の結果を踏まえて、必要が認められれば、法制上・財政上の措置を講ずること、および法施行後3年を目途に見直しを行うことを特記しています。
参議院本会議で可決成立したことを受けて、午後11時30分から12時のNHK総合テレビ「ニュースWEB」に出演し、解説めいたことを言いました。テレビやラジオに出るたびに自分の話の下手さかげんに嫌気がさしますが、NHKがニュースで大きく取り上げてくれたこ自体に、過労死防止についてのこの法律のキャンペーン効果を示していると思います。それに一役買うことができたのでいいんじゃないのと思って自分を慰めています。
法の成立は運動のゴールではありません。これらから過労死を減らし、なくしていくための新たな取り組みがスタートします。みなさんのいっそうのご協力とご支援を賜りますようお願い申し上げます。