Asu-netでは、3月27日に「第33回 働き方ASU-NET つどい 公益通報(内部告発)者は本当に守られているか? ~問題だらけの公益通報制度を考える~」を開催することになりました。当日は、この問題の第一人者である奥山俊宏さん(上智大学教授)の講演を中心に、内部告発にかかわる「和歌山市職員事件」と「私大附属高校教員」の発言も予定されています。
私は、労働法を専攻してきましたが、主に非正規雇用問題をテーマにしてきました。公益通報(内部告発)の問題は、裁判で争われた「トナミ運輸事件」や「オリンパス事件」などの名前は知っていましたが、論文を書くこともなく、十分に勉強していませんでした。
しかし、私は50歳代以降にハングルの勉強を始めましたが、その韓国では、代表的市民団体である参与連帯が中心となって、政財界の腐敗や営利優先の企業活動による甚大な被害を追及する公益通報者支援活動が展開されてきました。
そこで、このエッセイでは、3月27日のAsu-netのつどいを機会に、まず、日本の公益通報者保護制度の概要を調べて、次に、世界でも際立っている韓国の公益通報者保護制度を調べて見ることにしました。まだ、勉強を始めたばかりですので初歩的なレベルですが、韓国の公益者通報制度の概要を自分なりに把握することにしました。とくに、「公益申告者保護法」の全文を日本語訳してみました。
韓国は、日本の状況や課題を考えるときに貴重な物差しを与えてくれると思います。 2026年3月19日 SWakita
* なお、韓国の市民運動は「公益通報(공익제보)」という用語を使っていますが、法令・政府文書では、「公益申告(공익신고)」という用語を使っています。このエッセイでは、できるだけ原語に忠実に両者を区別しています。
「公益通報者保護制度」の概要:日本
公益通報者保護法の制定から現在まで
日本で公益通報者保護が問題になったのは、2000年代の初めでした。企業の「リコール隠し」や「食品偽装」など、重大な不祥事が相次いで発覚したのです。これらを背景に、主に「消費者保護」の観点から2004年に「公益通報者保護法」が制定され、2006年に施行されました。
しかし、この法律は当初、事業者(企業)の努力義務にとどまる部分が多く、法違反に対する罰則もなかったので、「ザル法」と批判されることもありました。
実際に、「ヤミカルテル」が内部告発されて公正取引委員会が立ち入り検査をするなど大きな成果があった一方、会社が内部告発者を報復的に30年以上も閑職に追いやった「トナミ運輸事件」(日経ビジネス2021年11月29日 )や、通報者の秘密が漏洩し報復的な配置転換が行われた「オリンパス事件」(大阪弁護士会広報誌)など、初期の法の不備や企業のコンプライアンスの脆弱性を浮き彫りにする事件が相次ぎました。
こうした内部告発者の保護に欠けた実態が社会的に問題となり、また、日本は、経済協力開発機構(OECD)等から状況改善をするように国際的な要請を受けることになりました。その結果、公益通報者保護制度は段階的に強化されてきました。2020年の第1次改正(2022年施行)では、従業員300人超の事業者に対して内部通報体制の整備が義務化され、通報対応担当者(従事者)には刑事罰付きの守秘義務が導入されました。
さらに、兵庫県をめぐる公益通報者保護の状況が全国的な関心を集める中、2025年6月、制度の抜本的見直しを行う第2次改正法が成立しました(2027年までに施行予定)。
この最新の改正では、通報を理由とする不利益取扱い(解雇・懲戒)に直接的な刑事罰の導入、不利益取扱いが通報を理由としたものだと推定する「立証責任の転換」、通報者探索行為(犯人捜し)や通報妨害行為の明確な禁止など、制度の実効性を飛躍的に高める強力な措置が盛り込まれました。

公益通報者保護制度の概要
制度の目的は、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産等の保護に関わる法令の遵守を図ることを目的としています。保護の対象である「公益通報者」は、正社員だけでなく、パート、アルバイト、派遣労働者、公務員、退職者(退職後1年以内)、役員が含まれており、2025年の改正によってフリーランス(業務委託先)へも拡大されました。
通報の対象となる「通報対象事実」は、国民の生命・財産等の保護に関わる特定の法律(刑法、食品衛生法、金融商品取引法など、現在490本以上)に違反する犯罪行為や、過料対象行為に限定されています。
通報先は以下の3段階に分かれています。
①事業者内部:不正の目的でなく、対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合。
②行政機関:真実相当性があること、又は通報者の氏名や違反内容を記載した書面を提出する場合。
③その他の外部機関(報道機関等):真実相当性があり、かつ「内部・行政に通報すれば不利益を受ける恐れがある」「証拠隠滅の恐れがある」「内部通報後20日経過しても調査されない」「急迫した危険がある」などの厳格な要件のいずれかを満たす場合。
保護の内容は、要件を満たした公益通報を理由とする解雇は無効とされ、降格、減給、派遣契約の解除などの不利益取扱い、及び通報者に対する損害賠償の請求が明確に禁止されています。

日本の公益通報者保護法には、欧米や韓国などと比較して、以下の特徴や構造的課題があります。
第一は、労働法と消費者保護法のねじれです。労働者の解雇や不利益取扱いの禁止という労働法制の核心に関わるのに、所管は厚生労働省(労働基準監督署)でなく、内閣府(現在は、消費者庁)であるので、行政の役割が小さく、民事ルールとしての性格が強かったと言えます。韓国など他国の制度と比較したとき、日本では行政としての公益通報者保護がきわめて貧弱であることが際立っています。
第二は、対象となる違反行為について「列挙主義」が採用されており、その範囲がきわめて限られていることです。つまり、列挙されない法令違反については、法的に保護されないことです。
第三は、日本では定期的な異動(配転)が行われる「メンバーシップ型雇用」が主流という理由で「報復的配転」への規制がされず、2025年改正でも刑事罰や立証責任転換の対象は、「解雇」や「懲戒」に限定され、「配置転換」は対象から除外されていることです。これが大きな「抜け道」となって通報者保護の制度趣旨が骨抜きにされる実態があります。
第四は、通報者に対する金銭的給付制度がないことです。アメリカや韓国では、通報者の経済的損失に対する救助金、褒賞金など、公益通報や内部告発を促進する金銭的支援の仕組みがあります。通報者は、精神的だけでなく、経済的にも大きな不利益を受けています。多くの困難や犠牲があるにもかかわらず、勇気を出して声を上げた通報者に少しでもその負担を緩和するために米国や韓国では補償・救助や褒賞金の制度を導入していますが、日本の制度には何らの仕組みもありません。
第五は、匿名での通報が認められ、事業者が正当な理由なく通報者を特定しようとする「探索行為(犯人捜し)」は法的に固く禁じられています。しかし、不利益取扱いから法的救済(裁判等)を求める段階では実名を明かす必要があるので、匿名性を維持しきれないという構造的な問題があることです。

「公益通報者保護制度」の制定:韓国
参与連帯の通報者支援活動と「腐敗防止法」制定(2001年)
韓国では、1987年の民主化まで軍事独裁政権が長期間続きました。また、上下関係を重視する古い意識や組織風土がありました。企業組織の不正があっても内部告発は「組織への裏切り」とみなされ、通報者は解雇や職場でのいじめ、巨額の損害賠償請求といった過酷な報復にさらされていました。
この状況を変える契機となったのが、1990年代から活動を続ける市民団体「参与連帯」の粘り強い社会運動です。参与連帯は、市民が主体となって民主的な社会を作るためには、組織の不正を内部ヵら告発することは、社会の健全性を保つ「正義の行い」であると再定義しました。そして、「公益通報者支援センター」を設置して、参与連帯の中核的活動として、困難や犠牲にもかかわらず声を上げた告発者への法的・経済的・精神的支援を続けてきました。
参与連帯は、1990年代後半に問題となった政府・軍部内の汚職などを「腐敗」と位置づけ、「腐敗防止法」制定運動を組織しました。その結果、進歩陣営から初めて選出された金大中・大統領の時代(2001年)に公務員の不正を対象に、内部告発者を保護する「腐敗防止法」が制定されました。
| 年月日 | 事件・事実 | 内容・背景 |
|---|---|---|
| 1994年4月 | 参与連帯発足 | 同年8月、警察官への賄賂を内部告発して罷免されたキム・ソグォン警部補の支援を機に「内部不正告発者支援センター」の活動を開始。韓国初の組織的告発者支援。 |
| 1994年 | 国民苦衷処理委員会 設立(国務総理直属) | スウェーデン型オンブズマン制度を模倣。朝鮮時代の「申聞鼓(シンムンゴ)・御使(オサ)制」の伝統を継承する形で、国民の無念を国家が解決する窓口を開設。 |
| 1996年 | 参与連帯「不正腐敗撲滅運動」開始 | 「不正腐敗撲滅のためのクリーン社会づくり運動」として、包括的な腐敗防止立法を国会に求める組織的ロビー活動を開始。以後5年にわたって継続。 |
| 1999年 | 「服ロビー事件」など高官腐敗続発 | 検察幹部・政治家への賄賂事件が相次ぎ、公職者の腐敗問題が社会の最大関心事に浮上。 |
| 2001年7月24日 | 腐敗防止法 制定 | 参与連帯などの「腐敗防止制度立法市民連帯」による立法請願運動の結実。 主な内容:公職者の腐敗行為申告と保護の明文化、申告者の身分保護、不利益措置の禁止規定を導入。 限界:民間部門は保護対象外。申告対象が公職者の腐敗に限定。 |
| 2002年1月25日 | 腐敗防止委員会 発足 | 腐敗防止法に基づく独立機関として設立。次官級以上の公職者の腐敗行為告発権を保有。内部告発者保護機能を担当。 |
「国民権益委員会」創設(2008年)
2008年、李明博(イ・ミョンバク)政権は、国家清廉委員会、国民苦衷処理委員会、国務総理行政審判委員会の3機関を統合して新たに「国民権益委員会」を設立しました。「小さな政府」を掲げていた李明博大統領は3機関並立を「行政の肥大化」と捉え、統合することで組織をスリム化して国民がひとつの窓口ですべての苦情や告発を解決できる「ワンストップサービス」を掲げました。しかし、市民団体からは、腐敗防止の専門機関(清廉委)が他の民情業務に埋没し、政権に対する監視機能が弱まることを狙ったのではないか、という懸念も表明されました。
しかし、後に制定された「公益申告者保護法」では、この「国民権益委員会」が強力な国家機関として重要な役割を果たしていることに留意しなければなりません。

企業の「公益侵害行為」と公益申告者保護法制定(2011年)
2000年代以降、利益優先の民間企業活動によって市民・労働者の健康・生命に大きな被害をもたらす重大事件(「ゴミ餃子」事件、サムスン半導体工場での白血病事件、加湿器殺菌剤事件など)が発生して、企業による「公益侵害行為」が大きな社会問題となりました。
これらに共通するのは、長期間にわたって問題が顕在化しなかったことです。その背景には、組織内から声を上げる内部告発を許さない企業風土がありました。そこで、「腐敗防止法」が対象としない、民間部門を対象とする包括的な公益通報者保護法の制定を求める声が高まりました。
参与連帯を先頭に10年近い市民運動の末、2011年に「公益申告者保護法」が成立しました。その結果、韓国は公共・民間の両部門をカバーする世界最高水準の通報者保護制度を確立することになったのです。
韓国の「公益申告者保護法」は、国民の健康や安全、環境、消費者の利益などを脅かす企業の不正や違法行為を内部から告発した人々を、組織の報復から守るために制定された極めて強力な法律です。
〔2011年法の概要と問題点について、詳しくは、イ・ホヨン漢陽大学教授の「「公益申告制度の法的課題と展望(공익신고제도의 법적 과제와 전망)」『法学論叢』第37巻第2号、2013年」参照。〕

この法律の目的は、公益を侵害する行為を申告した者を保護・支援することで、国民生活の安定と透明でクリーンな社会風土の確立に寄与することを目的としています。保護の対象となる「公益侵害行為」は、①国民の健康、②安全、③環境、④消費者の利益、⑤公正な競争という「5大分野」の利益を侵害する行為と定義されました。
ただし、すべての法令違反が一律に対象になるわけではなく、法が指定する特定の法律(制定当時は食品衛生法や産業安全保健法など180本)の違反行為であって、罰則や行政処分の対象となるものに限定して保護する「列挙主義」が採用されました。
不正を知った人であれば、内部の労働者に限定されず「誰でも」申告が可能とされました。申告先(公益申告機関)は、①公益侵害行為を行う企業や団体の代表者・使用者、②行政機関や監督機関(調査機関)、③捜査機関、④国民権益委員会、⑤国会議員や関連する公共団体の中から、申告者が自由に選択できる仕組みが整備されました。

申告の方法としては、原則として申告者の実名、住民登録番号、住所、連絡先などの人的事項と、申告内容を記載した「書面」に、客観的な証拠を添えて提出することが求められました。制定当時は、現在のような弁護士を通じた非実名(匿名)での代理申告制度は存在していませんでした。
公益申告者保護法の最大の眼目は、申告者に対する徹底した保護です。
秘密保持と身辺保護:いかなる者も、申告者の同意なしにその身元や推測できる事実を公開・報道することが固く禁じられました。また、申告や調査によって申告者やその家族の生命・身体に危害が及ぶ恐れがある場合、警察による特定施設での保護や巡回などの「身辺保護措置」を要求する権利が保障されました。
不利益措置の禁止と保護措置申請:申告を理由とする解雇、降格、減給、いじめ、不当な監査などのあらゆる不利益措置が禁止されました。もし不利益を受けた場合、申告者は制度の司令塔である「国民権益委員会」に対して「保護措置」を申請することができ、委員会は調査の上、事業者に対して原状回復(復職や未払い賃金の支払いなど)を命じることができる強力な権限を持ちました。
責任の減免と免責:申告の過程で申告者自身の犯罪や規程違反が発覚した場合、刑事罰や懲戒処分を減免できる規定が設けられ、企業との間で結ばれた「通報を禁じる特約」などの合意は無効とされました。
救助金制度の導入と褒賞金の不在 通報への報復によって解雇され賃金を失ったり、精神的ショックによる治療費、引越し費用、報復訴訟に対する弁護士費用などがかかった場合、国がその実費を補填する「救助金」制度が制定時から導入されました。これは通報者の生活破綻を防ぐための福祉的・応急的なセーフティネットでした。
「公益申告者保護法」の大幅改正へ(2021年)
市民団体の改正要求と公益申告者保護法の相次ぐ改正
公益申告者保護法は、その後の参与連帯など市民団体の活動を背景に相次ぎ改正されました。とくに、人権派弁護士であり、参与連帯の事務局長を長年務めた朴元淳(パク・ウォンスン)氏が、2011年秋のソウル市長補欠選挙に市民団体・労働組合が推薦する候補者になりました。当選した朴市長は、豊富な政策知識と広いネットワークを基に、進歩的な多分野の政策を進めました。
李明博・朴槿恵の保守政権の時代でしたが、2016年には、朴槿恵大統領の弾劾を求める大規模なデモが全国的に展開され、2017年には国会、憲法裁判所の手続きを経て大統領弾劾に至りました。この時期には、公益申告者保護についても市民団体の継続した監視や問題提起が粘り強く進められ、頻繁な改正(第2次~第7次)が2012年から2020年まで行われました(以下の表参照)。
2012年〜2020年:段階的な改正(第2次〜第7次)
| 年月 | 改正次数 | 主な改正内容 | 背景・市民運動の要求 |
|---|---|---|---|
| 2013年 | 第2次改正 | 保護措置の申請期限を延長(3ヶ月→1年)。国民権益委員会のモニタリング導入。公益申告対象法律の拡大。 | 施行初期に申告者が3ヶ月の期限を過ぎて保護申請ができない事例が続出した運用上の問題を反映。 |
| 2015年7月24日 | 第3次改正 | 企業の公益侵害行為の予防活動支援の根拠新設。委員会の調査結果に対する意見提示権、申告者の異議申立権、再調査・再捜査要求権の新設。身辺保護の強化。 | 施行4年が経過しても公益申告処理の消極性・不透明性が問題となり続け、手続き的権利を強化。 |
| 2016年 | 第4次改正 | 補償金制度の導入(内部公益申告者に限定)。褒賞金支給限度額を10億ウォンから20億ウォンへ引き上げ。褒賞金制度の新設。 | 参与連帯が継続的に主張してきた金銭的インセンティブの導入が実現。米国のSECおよびIRSの制度がモデル。 |
| 2017年10月31日 | 第5次改正 | 公益申告分野に「これに準ずる公共の利益」分野を追加。対象法律の拡大(279→284)。懲罰的損害賠償(3倍以下)規定の導入。身分公開への刑事罰強化。 | ヤン・ジンホ事件など、民間企業による組織的報復が社会問題化し、抑止力の実質的強化要求に応答。 |
| 2019年 | 第6次改正 | 対象法律の継続的拡大(284→一部追加)。申告処理手続きの改善。 | パンオルリム・参与連帯などの継続的な対象法律拡大要求を反映。 |
| 2020年1月16日 | 産業安全保健法 全面改正施行 | ※公益申告者保護法の直接改正ではないが、同法157条「申告を理由とした不利益措置の禁止」を強化。元請けの責任を明確化。 | 九宜(クイ)駅ホームドア事件(2016)・キム・ヨンギュンさん死去(2018)が直接の契機。民主労総・韓国労総の闘争が改正を牽引。 |
「公益申告者保護j法」改正(2021年)の主要内容
公益申告者保護法は、2021年に第7次〜第9次に大幅に改正されました(主に4月成立・10月施行)。この改正は、申告者に対する報復の「事前予防」や「立証責任の転換」、経済的・司法的支援の「包括的拡充」を盛り込み、制度の実効性を飛躍的に高めた大幅改正です。参与連帯などの市民団体の長年の要求が大量に反映されました。
この2021年大改正の主な内容は、以下の通りです。
報復からの保護の徹底(事前保護と立証責任の強化)
不利益措置の推定規定(立証責任の転換)の拡大: 申告者が「申告を理由に不利益を受けた」と推定する要件が大幅に拡大されました。従来からの「申告から2年以内の不利益措置」等に加え、新たに「申告者を特定しようとする試み(犯人捜し)」や「申告の妨害」、「申告取り下げの強要」が行われた後に不利益措置が生じた場合も、法的に「公益申告を理由とした報復である」と強く推定されるようになりました。これにより、申告者側の立証負担が大きく軽減されました。
先制的な保護措置(事前申請)と緊急保護措置: 実際に不利益措置が行われる前であっても、不利益措置が「予想される」段階での事前保護申請が許容されるようになりました。さらに、申告者を狙った不当な懲戒手続きなどが進行している場合、その手続きを一時的に停止させる「緊急保護措置制度」が新設され、「保護より先に調査」という従来の考え方の限界を克服して、「調査より先に保護」が可能となりました。
報復的訴訟(SLAPP訴訟)の禁止: 公益申告を行ったことを理由として、事業者が申告者に対して損害賠償を請求すること(逆提訴)を明確に禁止する規定が盛り込まれました。これは企業による悪意ある訴訟の濫用から申告者を守るための強力な防波堤となります。
保護措置申請却下時の通知の例外: 国民権益委員会が保護措置の申請を却下する場合、従来は不利益措置を行った加害者側にも通知していましたが、その通知によって申請者がさらなる不利益や報復を受ける恐れがある場合には、加害者への通知を省略できるよう改善されました。

経済的支援(救助金・補償金)と司法支援の拡充
救助金支給事由の大幅拡大と緊急救助金: 申告によって生じた実費を国が補填する「救助金」について、対象となる争訟手続きが「原状回復関連」から「公益申告等を理由とした争訟手続き全般」へと拡大されました。これにより、申告が名誉毀損などで逆告訴された際の刑事・民事上の防衛費用(弁護士費用など)も広く支援対象となりました。
また、事案が急を要する場合、委員会の正式な議決を待たずに委員長の権限で即時支給できる「緊急救助金」制度も新設・明確化されました。
補償金等の申請期限延長と重複支給の制限: 申告によって国や自治体に収入増をもたらした場合の「褒賞金」について、支給申請期間が「法律関係が確定したことを知った日から2年以内」から「3年以内」へと延長され、申告者の権利行使期間が手厚く保障されました。
一方で、財政負担を適正化するため、他の法令による報償金や褒賞金との重複支給を禁止し、誤支給時の還収規定が新たに整備されました。
法廷への意見提出権の新設: 国民権益委員会が、公益申告に関連する民事・刑事・行政訴訟(通報者の犯罪行為に関する刑事裁判や、不利益処分に関する訴訟など)において、裁判所の要請や委員会の判断に基づいて担当裁判部に直接意見を提出できる権限が新設されました。

責任減免の自律化と対象法律等の拡大
各機関における独自の責任減免の根拠: 内部告発の過程で通報者自身の違反行為が発覚した場合、従来は国民権益委員会の要求に基づいてのみ責任の減免が行われていましたが、法改正により、委員会の要求がなくても各機関の懲戒権者や行政処分権者が自らの判断で懲戒や不利益な行政処分を減軽・免除できる独自の法的根拠が明記されました。
保護対象者と対象法律の拡大: 保護対象となる通報者の範囲に、在職中の労働者だけでなく、既に退職した「退職者」や法人の「役員」、さらには「就職準備生」なども含まれることが明確にされました。また、保護対象となる法律に『勤労基準法』、『私立学校法』、『初・中等教育法』、『高等教育法』の4法律が追加され、対象法律は計471本へと拡大されました。
処理手続きの法定化: 従来は施行令や内部指針で規定されていた国民権益委員会の「公益申告の送付および終結処理」の要件が法律に格上げ(上向立法)され、申告処理の手続き対象に「捜査機関」が含まれることが明記されるなど、行政処理の法的根拠が強化されました。
小括
韓国では、2024年12月、尹錫悦大統領の突然の「戒厳」宣告から2025年前半の大統領弾劾過程を経て、6月の大統領選挙で進歩派の李在明大統領が当選しました。 選挙で李在明候補は、「通報者が報復を恐れて沈黙する社会を終わらせる」ことを強調してきました。2025年6月の就任以降、李在明政権は「透明な社会」と「働く人の生命・安全」を国政の核心に据え、公益通報者保護制度の抜本的な強化を推進してきました。
国政課題には、以下の3点が明確に盛り込まれています。
「包括主義」への転換検討: 現在の「列挙された法律違反(約490本)のみを守る」方式から、「重大な公益侵害であれば法律を問わず守る」方式への移行。
必要的(義務的)責任減免の導入: 通報者が不正に一部関与していても、自発的に通報した場合は必ず刑罰や懲戒を免除・軽減する。
報復的訴訟(SLAPP)からの徹底防衛: 企業による高額の損害賠償請求や、別件(個人情報保護法違反等)での刑事告訴を「通報妨害」とみなし、国が法的に遮断する。
他方、参与連帯や国民権益委員会ではさらなる「公益申告者保護」制度の改善を図ろうとしています。その動向に注目したいと思います。
今回は、日本の問題を考えるための手がかりとして、韓国の公益通報者保護の議論や制度について基礎的情報を整理したということで「小括」とします。今後、日本の問題を考えるためにも、韓国の議論をさらに深く調べていきたいと思います。(未完)
別添: 公益申告者保護法(条文) 日本語試訳
公益申告者保護法
[施行 2026年2月1日] [法律第20751号、2025年1月31日、他法の改正]
国民権益委員会(保護補償政策課), 044-200-7758
第1章 総則
第1条(目的)
この法律は、公益を侵害する行為を申告した者などを保護・支援することにより、国民生活の安定および透明で清廉な社会風土の確立に寄与することを目的とする。
第2条(定義)
この法律において使用する用語の定義は、次のとおりとする。
<2015年7月24日、2017年10月31日、2023年3月21日改正>
- 「公益侵害行為」とは、国民の健康と安全、環境、消費者の利益、公正な競争およびこれらに準ずる公共の利益を侵害する行為のうち、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
ガ.別表に規定された法律の罰則に該当する行為
ナ.別表に規定された法律に基づき、許可・認可の取消処分、停止処分など、大統領令で定める行政処分の対象となる行為
- 「公益申告」とは、第6条の各号のいずれかに該当する者に対して、公益侵害行為が発生した、または発生するおそれがあるという事実を、申告、陳情、情報提供、告訴、告発すること、あるいは公益侵害行為に関する捜査の手がかりを提供することをいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、公益申告とはみなさない。
ガ.公益申告の内容が虚偽であることを知っていた、あるいは知り得たにもかかわらず、公益申告を行った場合
ナ.公益申告に関連して金品や勤労関係上の優遇措置を要求した場合、またはその他不正な目的で公益申告を行った場合
- 「公益申告等」とは、公益申告、および公益申告に関する調査・捜査・訴訟、ならびに公益申告者保護措置に関連する調査・訴訟等において、陳述・証言を行うこと、または資料を提供することをいう。
- 「公益申告者」とは、公益申告を行った者をいう。
- 「公益申告者等」とは、公益申告者、および公益申告に関する調査・捜査・訴訟、ならびに公益申告者保護措置に関連する調査・訴訟等において、陳述・証言を行ったり、資料を提供したりした者をいう。
- 「不利益処分」とは、次の各号のいずれかに該当する措置をいう。
ガ.罷免、解任、解雇、その他身分喪失に該当する身分上の不利益処分
ナ.懲戒、停職、減給、降格、昇進制限、その他不当な人事措置
ダ. 転勤、異動、職務の不付与、職務の再配置、その他本人の意思に反する人事措置
ラ.業績評価や同僚評価などにおける差別、およびそれに伴う賃金や賞与などの差別的な支給
マ.教育や研修などの自己啓発の機会の取り消し、予算や人員などの利用可能な資源の制限または削減、保安情報または機密情報の使用停止または取扱資格の取り消し、その他、勤務条件などに悪影響を及ぼす差別または措置
バ. 注意対象者の名簿の作成またはその名簿の公開、集団いじめ、暴行または暴言、その他精神的・身体的損害をもたらす行為
サ. 職務に対する不当な監査または調査、およびその結果の公表
ア.許可等の取消し、その他行政上の不利益を与える行為
ジャ.物品契約または役務契約の解除、その他経済的不利益をもたらす措置
- 「内部公益申告者」とは、次の各号のいずれかに該当する公益申告者をいう。
ガ.被申立人である公共機関(「腐敗防止及び国民権益委員会の設置と運営に関する法律」第2条第1号に定める公共機関をいう。以下同じ)、企業、法人、団体などに所属して勤務している者、または勤務していた者
ナ.被申立人である公共機関、企業、法人、団体等との工事・役務契約またはその他の契約に基づき、業務を遂行している者、または遂行していた者
ダ. その他、大統領令で定める者
第3条(国等の責務)
①国又は地方自治体は、公益侵害行為の予防及び拡散の防止並びに公益申告者等の保護・支援のために努めなければならない。
<2015年7月24日、2017年10月31日改正>
② 企業は、職場内の公益申告者などが保護される環境を整えるよう努めなければならない。
<2015年7月24日新設>
③ 国又は地方自治体は、企業の公益侵害行為の予防活動等が活性化されるよう、支援又は協力することができる。
<2015年7月24日新設>
第4条(国民権益委員会の政策の策定)
①公益申告者等を保護し、支援するため、国民権益委員会(以下「委員会」という)は、次の各号に関する政策を策定しなければならない。
<2015年7月24日改正>
- 公益申告の受付および処理等に関する事項
- 公益申告者等の秘密保持および身辺保護等に関する事項
- 公益申告者等に対する不利益取扱いの禁止および保護措置等に関する事項
- 公益申告者等に対する褒賞金・救助金の支給に関する事項
- 公益申告者保護制度に関する教育・広報等の事項
② 委員会は、第1項に基づく政策を効率的に策定するために必要な場合、第6条各号に掲げる機関に対し、公益申告の処理および保護措置の現状などに関する実態調査を行うことができる。
<2015年7月24日新設>
③ 第2項に基づく実態調査の方法・手続などに関する必要な事項は、大統領令で定める。
<2015年7月24日新設>
第5条(他の法律との関係)
公益申告者保護に関して、本法と他の法律の適用が競合する場合、本法を優先して適用する。ただし、他の法律を適用することが公益申告者等にとって有利である場合は、その法律を適用する。
第2章 公益申告
第6条(公益申告)
誰でも、公益を侵害する行為が発生した、または発生するおそれがあると認める場合には、次の各号のいずれかに該当する者に対して公益申告を行うことができる。
- 公益を害する行為を行う者、または機関・団体・企業等の代表者もしくは使用者
- 公益を害する行為に対する指導・監督・規制または調査等の権限を有する行政機関もしくは監督機関(以下「調査機関」という)
- 捜査機関
- 委員会
- その他、公益申告を行うことが公益侵害行為の発生またはそれによる被害の拡大防止に必要であると認められ、大統領令で定める者
第7条(公職者の公益申告義務)
「腐敗防止及び国民権益委員会の設置と運営に関する法律」 第2条第3号に基づく公職者(以下「公職者」という)は、その職務を行う中で公益侵害行為を知ったときは、これを調査機関、捜査機関又は委員会に申告しなければならない。
第8条(公益申告の方法)
① 公益申告を行おうとする者は、次の各号に掲げる事項を記載した文書 (電子文書を含む。以下「申告書」という)とともに、公益侵害行為の証拠等を添付し、第6条各号のいずれかに該当する者に提出しなければならない。
- 公益申告者の氏名、住民登録番号、住所および連絡先などの個人情報
- 公益を害する行為を行う者
- 公益侵害行為の内容
- 公益申告の趣旨と理由
② 第1項にかかわらず、申告書を提出できない特別な事情がある場合には、口頭で申告することができる。この場合、証拠等を提出しなければならない。
③ 第2項の口頭による申告を受けた者は、申告書に申告者が述べた事項を記載した後、公益申告者にその内容を読み聞かせ、公益申告者に署名または捺印させなければならない。
第8条の2(非実名による代理申告)
① 第8条第1項の規定にかかわらず、公益申告者は、自身の個人情報を明かさずに、弁護士に公益申告を代理させることができる。この場合、第8条第1項第1号に基づく公益申告者の個人情報は、弁護士の個人情報をもって代えるものとする。
② 第1項に基づく公益申告は委員会に対して行わなければならず、公益申告者又は公益申告を代理する弁護士は、その趣旨を明らかにするとともに、公益申告者の個人情報、公益申告者であることを立証できる資料及び委任状を委員会に併せて提出しなければならない。
③ 委員会は、第2項に基づき提出された資料を封印して保管しなければならず、公益申告者本人の同意なしにこれを閲覧してはならない。
[本条新設 2018年4月17日]
第8条の3(内部公益申告者に対する支援)
① 委員会は、内部公益申告者が弁護士から次の各号に掲げる援助を受けた場合、予算の範囲内で、その費用の全部または一部を当該弁護士に支給することができる。
- 内部公益申告者が、第8条の2第1項前段に基づき、弁護士に公益申告の代理を行わせた場合
- 内部公益申告者が、当該公益申告に関する調査・捜査・訴訟手続、および保護措置・褒賞金等の申請に関連して、弁護士の助力を得た場合
- その他、内部公益申告者が公益申告に関連して弁護士から法律相談を受けた場合
② 第1項に基づき費用の支給を受けた弁護士は、同一の事由について、公益申告者から重複して費用の支給を受けてはならない。
③ 委員会は、次の各号のいずれかに該当する場合、第1項に基づき支給した費用を、大統領令で定める方法に従い回収しなければならない。この場合、第1号及び第2号の事由により回収するときは、支給した費用に大統領令で定める利息を加えて回収しなければならない。
- 虚偽その他の不正な手段により費用の支払いを受けた場合
- 第2項に違反して費用を重複して支給された場合
- 誤りなどの事由により費用が誤って支払われた場合
④ 委員会は、第3項に基づき費用を返還すべき弁護士が納付期限までにその金額を納付しなかった場合、国税の強制徴収の例に従って徴収することができる。
[本条新設 2024年2月6日]
第9条 (委員会の公益申告の処理)
① 委員会が公益申告を受けたときは、公益申告者の個人情報、公益申告の経緯および趣旨など、申告内容の特定に必要な事項などを確認することができ、公益申告者が申告内容の特定に必要な事項などを備えていない場合には、相当な期間を定めて公益申告者に補完を求めることができる。
<2021年4月20日改正>
② 委員会は、第1項の事項の真偽を確認するために必要な範囲内で、公益申告者に対し、必要な資料の提出を求めることができる。
③ 委員会は、第2項に基づく事実確認を終えた後、遅滞なく、大統領令で定める通り、調査機関または捜査機関(以下、本条、第10条および第11条において「調査機関等」という)に事件を移送または送付し、その事実を公益申告者に通知しなければならない。
<2021年4月20日改正>
④ 委員会は、第3項にかかわらず、公益申告が第10条第2項の各号のいずれかに該当する場合、その処理を終了することができる。この場合、委員会は遅滞なくその事実を公益申告者に通知しなければならない。
<2021年4月20日新設>
⑤ 第3項に基づき公益申告の移送または送付を受けた調査機関等は、調査・捜査終了後、調査結果または捜査結果を委員会に通知しなければならない。
<2021年4月20日改正>
⑥ 委員会は、第5項に基づき調査結果または捜査結果の通知を受けた場合、その要旨を公益申告者に通知しなければならず、 公益侵害行為の拡散及び再発防止のために必要と認められるときは、第10条第4項に基づき、当該調査機関が調査結果に基づき講じた必要な措置のほか、関係法令に基づく次の各号の措置に関する意見を提示することができる。
<新設 2015年7月24日、2021年4月20日>
- 製品の製造・販売停止、回収または廃棄など
- 営業停止、資格停止など
- その他、当該公益侵害行為の排除および予防等のために必要な措置
⑦ 第6項の通知を受けた公益申告者は、大統領令で定める通り、委員会に対し、調査結果または捜査結果について異議申立てを行うことができる。
<新設 2015年7月24日、2021年4月20日>
⑧ 委員会は、調査機関等による調査・捜査が不十分であると認め、又は第7項に基づく異議申立てに理由があると認める場合、調査機関等に対し再調査・再捜査を要求することができる。
<新設 2015年7月24日、2021年4月20日>
⑨ 再調査・再捜査を求められた調査機関等は、再調査・再捜査の終了後、その結果を委員会に通知しなければならない。この場合、委員会は公益申告者に対し、再調査・再捜査の結果の要旨を通知しなければならない。
<2015年7月24日、2021年4月20日新設>
[タイトル改定 2021年4月20日]
第9条の2 (保護・支援の案内)
① 第6条第2号から第4号までに該当する者と、公益侵害行為に関連する法律に基づき設置された公社・公団等の公共団体は、次の各号に掲げる事項に関する案内策を策定し、実施しなければならない。
<2024年2月6日改正>
- 第12条に基づく秘密保持に関する事項
- 第13条に基づく身辺保護措置の要請に関する事項
- 第16条に基づく人事措置の要請に関する事項
- 第17条に基づく保護措置の申請に関する事項
- 第22条に基づく不利益措置の禁止の申請に関する事項
- 第26条に基づく補償金の支給申請に関する事項
- 第26条の3に基づく褒賞金の支給に関する事項
- 第27条に基づく救助金の支給申請に関する事項
② 第1項に基づく案内対象、方法およびその他必要な事項は、大統領令で定める。
[本条新設 2017年4月18日]
第10条 (調査機関等による公益申告の処理)
① 調査機関等が第6条に基づき公益申告を受け、または第9条第3項に基づき委員会から公益申告の移送または送付を受けたときは、その内容について必要な調査または捜査を行わなければならない。
<2021年4月20日改正>
② 調査機関等は、公益申告が次の各号のいずれかに該当する場合、調査又は捜査を行わないか、あるいは中断して終了させることができる。
<2021年4月20日改正>
- 公益申告の内容が明らかに虚偽である場合
- 公益申告者の身元が判明しない場合
- 公益申告者が、申告書や証明資料などについて2回以上補足を求める要請を受けたにもかかわらず、指定された期間内に補足を行わなかった場合
- 公益申告の処理結果について通知を受けた事項について、正当な理由なく再度申告した場合
- 公益申告の内容がマスコミ等を通じて公開された内容に該当し、公開された内容以外に新たな証拠がない場合
- 他の法令に基づき、当該公益侵害行為に対する調査が開始されたか、またはすでに終了している場合
- その他、公益を害する行為に対する調査が必要ないと大統領令で定める場合
③ 調査機関等は、第2項に基づき調査又は捜査を行わないこととした場合、あるいは調査又は捜査を中断して終了した場合には、遅滞なくその事実を公益申告者に通知しなければならない。<2021年4月20日改正>
④ 調査機関等は、公益申告に関する調査又は捜査を終えたときは、調査又は捜査の結果に基づき必要な措置を講じ、その結果を公益申告者に通知しなければならない。
<2021年4月20日改正>
⑤ 第6条に基づき公益申告を受け付けた機関の従事者等は、公益申告に関する調査または捜査の結果、公益侵害行為が発見されるまでは、申告者の個人情報などを含む申告内容を公開してはならない。
<2021年4月20日改正>
⑥ 調査機関等が、その管轄に属さない公益申告を受け付けた場合、または移送、移管もしくは送付を受けた場合には、遅滞なく管轄の調査機関等に移送し、その事実を公益申告者に通知しなければならない。
<2021年4月20日改正>
[タイトル改定 2021年4月20日]
第10条の2(公益申告統合情報システムの構築・運営)
① 委員会は、公益申告の受付・処理状況などを管理する統合情報システム(以下「統合情報システム」という)を構築・運営することができる。
② 委員会は、統合情報システムの構築・運営のために必要な場合、第6条各号に掲げる機関に対し、公益申告の受付および処理等に関する資料・情報の提供を求め、提供を受けた目的の範囲内で、当該資料・情報を保有・利用することができる。この場合、資料・情報の提供を求められた者は、特別な事由がない限り、これに協力しなければならない。
③ 委員会は、第2項に基づき保有・利用する資料・情報の保護のために必要な措置を講じなければならない。
[本条新設 2015年7月24日]
第3章 公益申告者等の保護
第11条(個人情報の記載の省略等)
① 公益申告者等、その親族又は同居人が、公益申告等を理由として被害を受けた、又は受けるおそれがあると認めるに足る相当な理由がある場合、調査及び刑事手続においては、「特定犯罪申告者等の保護法」第7条、第9条から第12条までの規定を準用する。
② 公益申告者等またはその法定代理人は、調査機関等に対し、第1項に基づく措置を講じるよう申請することができる。この場合、調査機関等は、特別な事由がない限り、これに従わなければならない。
<2021年4月20日改正>
第12条(公益申告者等の秘密保持義務)
① いかなる者も、公益申告者等であることを知りながら、その個人の事項、またはその者が公益申告者等であることを推察しうる事実を、他人に知らせる、あるいは公表または報道してはならない。ただし、公益申告者等が同意した場合は、この限りではない。
② 委員会は、第1項に違反して公益申告者等の個人情報、または公益申告者等であることが推測される事実が公開または報道された場合、その経緯を確認することができる。
<2015年7月24日新設>
③ 委員会は、第2項に基づく経緯を確認するために必要であると認めるときは、当該公益申告者等に対し、公益申告等を行った機関への関連資料の提出や意見の陳述などを求めることができる。この場合、資料の提出や意見の陳述を求められた当該機関は、特別な事由がない限り、その求めに応じなければならない。
<2015年7月24日新設>
④ 委員会は、第1項に違反して公益申告者等の個人情報、または公益申告者等であることを推察できる事実を他人に知らせ、あるいは公開または報道した者について、その者の懲戒権者に対し、当該者に対する懲戒等の必要な措置を要求することができる。この場合、要求を受けた懲戒権者は、正当な理由がない限り、その要求に従わなければならない。
<2015年7月24日、2024年2月6日改正>
第13条(身辺保護措置)
① 公益申告者等およびその親族または同居人は、公益申告等を理由として生命・身体に重大な危害を受けた場合、または受けるおそれがあることが明らかな場合には、委員会に対し、身辺保護に必要な措置(以下「身辺保護措置」という)を要求することができる。この場合、委員会は、必要があると認めるときは、警察署長に対し、身辺保護措置を講じるよう要請することができる。
② 第1項に基づく身辺保護措置の要請を受けた警察署の長は、大統領令で定める通り、直ちに身辺保護措置を講じなければならない。
第14条(責任の減免等)
① 公益申告等に関連して、公益申告者等の犯罪行為が発見された場合には、その刑を減軽し、又は免除することができる。
② 公益申告者に対する懲戒権者または行政処分権者は、公益申告等に関連して発見された違法行為等を理由として、関係法令等に基づき公益申告者等に対して懲戒または不利益な行政処分を行う場合、その懲戒または不利益な行政処分を減軽または免除することができる。
<2021年4月20日新設>
③ 公益申告等に関連して発見された違法行為などを理由に、公益申告者等に対して懲戒を行ったり、不利益な行政処分を下したりする場合、委員会は、公益申告者等の懲戒権者または行政処分権者に対し、当該懲戒または行政処分の減軽もしくは免除を要求することができる。この場合、要求を受けた者は、正当な理由がある場合を除き、その要求に従わなければならない。
<2015年7月24日、2021年4月20日改正>
④ 公益申告等の内容に職務上の秘密が含まれている場合でも、公益申告者等は、他の法令、団体協約、就業規則等に基づく職務上の秘密遵守義務に違反したものとみなされない。
<2021年4月20日改正>
⑤ 被申告者は、公益申告等により損害を被った場合でも、公益申告者等に対してその損害賠償を請求することはできない。ただし、第2条第2号ガ目およびナ目に該当する場合は、損害賠償を請求することができる。
<2021年4月20日改正>
⑥ 団体協約、雇用契約または供給契約などに、公益申告等を禁止または制限する規定が設けられている場合、その規定は無効とする。
<2021年4月20日改正>
⑦ 委員会は、第3項に基づく懲戒又は行政処分の減軽若しくは免除を求めるために必要であると認めるときは、懲戒権者、行政処分権者又は当該公益申告者等に対し、公益申告等が行われた機関への関連資料の提出若しくは意見の陳述等を要請することができる。この場合、資料の提出若しくは意見の陳述を要請された当該機関は、特別な事由がない限り、その要請に協力しなければならない。
<新設 2015年7月24日、2021年4月20日>
⑧ 委員会は、第1項に基づく公益申告者等の犯罪行為に関する刑事裁判、第2項及び第3項に基づく公益申告者等に対する懲戒等又は不利益な行政処分に関連する訴訟、若しくは第5項ただし書きに基づく民事裁判に関し、裁判所から要請があった場合、又は必要と認める場合には、裁判所の担当裁判部に意見を提出することができる。
<2021年4月20日新設>
第15条(不利益措置等の禁止)
① いかなる者も、公益申告者等に対し、公益申告等を理由として不利益な措置を講じてはならない。
② いかなる者も、公益申告等を行えないように妨害したり、公益申告者等に対し公益申告等の取り下げを強要してはならない。
第16条(人事措置における優先的な考慮)
公益申告者等の使用者又は人事権者は、公益申告者等が異動、転出・転入、派遣勤務その他の人事に関する措置を要求する場合において、その要求内容が妥当であると認めるときは、これを優先的に考慮しなければならない。
第17条 (保護措置の申請)
① 公益申告者等は、公益申告等を理由として不利益措置を受けた場合(公益侵害行為に関する証拠資料の収集など、公益申告の準備中に不利益措置を受けた後に公益申告を行った場合を含む)には、委員会に対し、原状回復その他必要な措置(以下「保護措置」という)を申請することができる。
② 保護措置は、不利益措置が行われた日(不利益措置が継続していた場合はその終了日)から1年以内に申請しなければならない。ただし、公益申告者等が天災、戦争、事変、その他不可抗力の事由により1年以内に保護措置を申請することができなかったときは、その事由が消滅した日から14日(国外からの保護措置の請求は30日)以内に申請することができる。
<2017年10月31日改正>
③ 他の法令において、公益申告等を理由として受けた不利益処分に対する行政上の救済手続きが定められている場合、公益申告者等は、その手続きに従って救済を請求することができる。ただし、第1項に基づき公益申告者等が保護措置を申請した場合は、この限りではない。
④ 保護措置の申請方法および手続きに必要な事項は、大統領令で定める。
第18条(保護措置の申請の却下)
① 委員会は、保護措置の申請が次の各号のいずれかに該当する場合、決定により当該申請を却下することができる。
<2021年4月20日改正>
- 公益申告者等、または「行政手続法」第12条第1項に基づく代理人以外の者が申請した場合
- 公益申告が第10条第2項の各号のいずれかに該当する場合
- 第17条第2項に定める申請期間を経過してから申請した場合
- 却下決定、第20条第1項に基づく保護措置決定または却下決定を受けた同一の不利益措置について、再度申請した場合
- 第20条第2項に基づき、委員会が保護措置を勧告した事項について、再度申請した場合
- 他の法令に基づく救済手続きを申請した場合
- 他の法令に基づく救済手続きにより、すでに救済を受けた場合
② 委員会は、第1項に基づき保護措置の申請を却下する場合、保護措置を申請した者(以下、本条から第20条まで及び第21条において「申請人」という)と不利益措置を講じた者の双方に対し、書面で通知しなければならない。ただし、通知により申請人が不利益措置等を受けるおそれがある場合、不利益措置を行った者に対しては通知しないことができる。
<2021年4月20日新設>
第19条(保護措置の申請に対する調査)
① 委員会は、保護措置の申請を受けたときは、直ちに公益申告者が公益申告等を理由として不利益な措置を受けたかどうかについて調査を開始しなければならない。この場合、委員会は、公益申告者が保護措置を申請した事実を調査機関に申告することができる。
② 委員会は、保護措置の申請に関する調査に必要であると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する者に対し、関連資料の提出を求めることができる。
<2021年4月20日改正>
- 申請人
- 不利益処分を行った者
- 参考人
- 関係機関・団体または企業
③ 委員会は、第2項第1号から第3号までに該当する者に対し、出席を求め、陳述を聴取し、又は陳述書の提出を求めることができる。
④ 委員会は、調査の過程において、関係当事者に十分な釈明の機会を与えなければならない。
⑤ 委員会は、第1項後段に基づき、公益申告者等が保護措置を申請した事実を調査機関に申告するとともに、公益侵害行為の調査に関連する資料の提出等の協力を要請することができる。この場合、調査機関は、正当な理由がない限り、これに協力しなければならない。
<2017年10月31日改正>
第20条 (保護措置決定等)
① 委員会は、調査の結果、申請人が公益申告等を理由として不利益措置(第2条第6号イ号およびハ号に該当する不利益措置は除く) を受けたと認められるときは、不利益措置を行った者に対し、30日以内の期間を定めて、次の各号の保護措置を講じるよう求める決定(以下「保護措置決定」という)をしなければならない。また、申請人が公益申告等を理由として不利益措置を受けたと認められない場合には、保護措置の要求を棄却する決定(以下「棄却決定」という)をしなければならない。
- 原状回復措置
- 未払いまたは遅延している報酬等(利息を含む)の支払い
- その他、不利益措置の取消しまたは禁止
② 委員会は、調査の結果、申請人が公益申告等を理由として、第2条第6号ア目またはジャ目に該当する不利益措置を受けたと認められるときは、不利益措置を行った者に対し、30日以内の期間を定めて、許認可または契約等の効力の維持など、必要な保護措置を講じるよう勧告(以下「勧告」という)することができる。
③ 第1項に基づく保護措置の決定及び却下の決定、並びに第2項に基づく勧告は、書面で行わなければならず、申請人及び不利益措置を講じた者双方に通知しなければならない。
<2021年4月20日改正>
④ 委員会は、保護措置の決定を行う場合、公益申告などを理由に不利益処分を行った者の懲戒権者に対し、当該者に対する懲戒を要求することができる。この場合、要求を受けた懲戒権者は、正当な理由がない限り、その要求に従わなければならない。
<2024年2月6日改正>
⑤ 委員会は、大統領令で定める通り、保護措置決定後2年間、不利益措置を講じた者による保護措置の履行状況および追加的な不利益措置の発生の有無を定期的に点検しなければならない。
<2017年10月31日新設>
⑥ 第1項第2号に基づく差別的な支給または未払いの報酬等の支給基準および算定方法などについて必要な事項は、大統領令で定める。
<2017年10月31日改正>
第20条の2(特別保護措置)
① 内部公益申告者が、申告当時、公益侵害行為が発生したと信じるに足る合理的な理由を有している場合、委員会は保護措置の決定を行うことができる。
② 第1項に基づく特別保護措置の決定については、第20条、第21条、第21条の2を準用する。
[本条新設 2015年7月24日]
第21条(保護措置決定等の確定)
① 申請人及び不利益措置を講じた者は、保護措置決定、棄却決定又は却下決定について、その決定書を受領した日から30日以内に、「行政訴訟法」の定めるところにより、行政訴訟を提起することができる。
② 第1項に定める期間内に行政訴訟を提起しない場合、保護措置決定、棄却決定又は却下決定は確定する。
③ 保護措置決定、棄却決定又は却下決定に対しては、「行政審判法」に基づく行政審判を請求することはできない。
④ 保護措置決定、却下決定又は棄却決定は、第1項に基づく行政訴訟の提起によってその効力が停止されない。
<2015年7月24日新設>
第21条の2(履行強制金)
① 委員会は、第20条第1項に基づく保護措置決定を受けた後、定められた期限までに保護措置を講じなかった者に対し、3千万ウォン以下の履行強制金を課す。ただし、国又は地方自治体は除く。
<2018年4月17日改正>
② 委員会は、第1項に基づく履行強制金を賦課する30日前までに、履行強制金を賦課・徴収する旨をあらかじめ文書で通知しなければならない。
③ 委員会は、保護措置の決定を行った日を基準として、保護措置が実施されるまで、年2回を限度として、第1項に基づく履行強制金を繰り返し賦課・徴収することができる。
<2018年4月17日、2025年1月21日改正>
④ 第1項に基づく履行強制金の賦課基準、徴収手続などに関する必要な事項は、大統領令で定める。 <2025年1月21日改正>
⑤ 第1項から第4項までに規定する事項のほか、履行強制金の賦課・徴収については、「行政基本法」 第31条第2項から第6項の規定による。
<2025年1月21日新設>
[本条新設 2015年7月24日]
第22条(不利益措置の禁止の申請)
① 公益申告者等は、公益申告等を理由として不利益措置を受けるおそれがあることが明らかな場合(公益侵害行為に関する証拠資料の収集等の公益申告の準備行為を含む)には、委員会に対し、不利益措置の禁止を申請することができる。
② 委員会は、不利益措置の禁止の申請を受けたときは、直ちに、公益申告者が受けるおそれのある不利益措置が、公益申告等を理由とする不利益措置に該当するか否かについて調査を開始しなければならない。
③ 不利益措置の禁止の申請については、第18条、第19条および第20条の第1項から第3項までの規定を準用する。
④ 委員会は、調査の結果、公益申告者等が公益申告等を理由として不利益な措置を受けるおそれがあると認められる場合には、不利益な措置を講じようとする者に対し、その措置を講じないよう勧告しなければならない。
第23条(不利益措置の推定)
次の各号のいずれかに該当する場合、公益申告者が当該公益申告を理由として不利益措置を受けたものと推定する。 <2017年10月31日改正>
- 公益申告者を特定しようとしたり、公益申告などを妨害したり、公益申告などの取り下げを強要した場合
- 公益申告等が行われた後、2年以内に公益申告者等に対して不利益な措置を講じた場合
- 第22条第4項に基づく不利益処遇の禁止勧告を受けたにもかかわらず、不利益処遇を行った場合
- 公益申告者が、この法律に基づき公益申告等を行った後、第17条第1項に基づき委員会に保護措置を申請し、または裁判所に原状回復等に関する訴えを提起する場合
第24条(和解の勧告等)
① 委員会は、保護措置の申請を受けた場合、保護措置決定、却下決定又は勧告を行うまでの間、職権により、又は関係当事者の申請に基づき、保護措置及び損害賠償等について和解を勧告し、又は和解案を提示することができる。この場合、和解案には、この法律の目的に反する条件が含まれてはならない。
② 委員会は、和解案を作成するにあたり、関係当事者の意見を十分に聴取しなければならない。
③ 関係当事者が委員会の和解案を受け入れた場合は、和解調書を作成し、関係当事者および和解に関与した委員会の委員全員が署名または捺印するようにしなければならない。
④ 第3項に基づき和解調書が作成された場合、関係当事者間で和解調書と同一の内容の合意が成立したものとみなされ、和解調書は「民事訴訟法」に基づく裁判上の和解と同様の効力を有する。
第25条(協力等の要請)
① 第6条に基づき公益申告を受け付けた機関又は委員会は、申告内容の調査・処理又は保護措置に必要な場合、関係行政機関、相談所又は医療機関、その他関連団体等に対し、協力及び援助を要請することができる。
② 第1項の要請を受けた関係行政機関、相談所、医療機関、その他の関連団体等は、正当な理由がない限り、これに応じなければならない。
第25条の2 (政治運動等の届出の特例)
① 「国家公務員法」 及び 「地方公務員法」 に基づく公務員(「国家情報院職員法」 第2条 に基づく国家情報院職員を除く。以下、本条において「国家公務員等」という)は、次の各号のいずれかに該当する行為を指示された場合、大統領令で定める手続に従い異議を申し立てることができ、是正されない場合はその職務の執行を拒否することができる。
- 「国家公務員法」第65条に基づく政治活動
- 「地方公務員法」第57条に基づく政治活動
- 「軍刑法」第94条第1項に基づく政治への関与
② 国家公務員等が第1項に基づく異議申立ての手続きを経た後も是正されない場合、もっぱら公益を目的として第1項各号に該当する行為を指示された事実を捜査機関に申告する場合には、「刑法」第127条および「軍刑法」第80条を適用しない。
③ いかなる者も、第2項の申告者に対し、その申告を理由として不利益な措置を講じてはならない。
[本条新設 2014年1月14日]
第4章 補償金、褒賞金および救助金
<2015年7月24日改正>
第26条(補償金)
① 内部公益申告者は、公益申告により、次の各号のいずれかに該当する賦課等を通じて、公共機関に直接的な収入の回復または増大をもたらした場合、またはそれに関する法律関係が確定した場合には、委員会に対し褒賞金の支給を申請することができる。
<2015年7月24日、2023年3月21日改正>
- 罰則または通告処分
- 没収または追徴金の賦課
- 過料または履行強制金の賦課
- 課徴金(許認可等の取消・停止処分に代わる課徴金制度がある場合には、許認可等の取消・停止処分を含む)の賦課
- その他、大統領令で定める処分または判決
② 委員会は、第1項に基づく補償金の支給申請を受けたときは、 「腐敗防止及び国民権益委員会の設置と運営に関する法律」 第69条に基づく補償審議委員会(以下「補償審議委員会」という)の審議・議決を経て、第26条の2に定める通り、補償金を支給しなければならない。ただし、公益侵害行為を関係行政機関等に申告する義務を有する者又は公職者が、自己の職務に関して、若しくは公職者であった者が在職中に自己の職務に関連して公益申告を行った事項については、褒賞金を減額し、又は支給しないことができる。
<2023年3月21日、2024年2月6日改正>
③ 第1項に基づく補償金の支給申請は、公共機関の収入の回復又は増大に関する法律関係が確定したことを知った日から3年以内、又はその法律関係が確定した日から5年以内に行わなければならない。ただし、正当な理由がある場合は、この限りではない。
<2021年4月20日、2023年3月21日改正>
④ 委員会は、第1項に基づく補償金の支給申請があった場合、特別な事情がない限り、申請日から90日以内にその支給の可否および支給額を決定しなければならない。
⑤ 委員会は、補償金の支給に関して調査が必要であると認める場合、補償金支給申請者、参考人又は関係機関等に対し、出頭、陳述及び資料の提出などを求めることができる。補償金支給申請者、参考人又は関係機関等は、委員会から出頭、陳述及び資料の提出などを求められた場合、正当な理由がない限り、これに従わなければならない。
⑥ 委員会は、第4項に基づく補償金の支給決定がなされたときは、直ちにこれを補償金支給申請人および当該公共機関(「腐敗防止および国民権益委員会の設置と運営に関する法律」第2条第1号ガ目のうち、「政府組織法」に基づく各級行政機関及び同号ハ目に基づく機関は除く。以下、本項及び第29条において同じ)に通知しなければならない。
<2023年3月21日改正>
⑦ 第1項に基づく補償金の具体的な支給方法及び手続き等に関する事項は、大統領令で定める。
<2024年2月6日新設>
第26条の2(補償金の算定基準)
第26条に基づく補償金の算定基準は、同条第1項各号のいずれかに該当する賦課等を通じて、公共機関に直接的な収入の回復または増大をもたらすもの、またはそれに関する法律関係が確定した金額の100分の30を超えない範囲(補償金の支給限度額は定めない)において、大統領令で定める。ただし、補償金の支給決定当時、公共機関に直接的な収入の回復または増大をもたらす法律関係が確定した後、収入の回復または増大が開始されなかった場合、または収入の回復または増大額が本条本文に基づき算定された補償金の100分の50未満である場合には、まず15億ウォンの範囲内で補償金を支給し、残りの金額については、公共機関の収入の回復または増大額が既に支給された補償金を上回る場合に支給するよう決定することができる。
[本条新設 2024年2月6日]
[従前の第26条の2は第26条の3に移行 <2024年2月6日>]
第26条の3(褒賞金等)
① 委員会は、公益申告等により、次の各号のいずれかに該当する事由により、公共機関に著しい財産上の利益をもたらし、または損失を防止した場合、もしくは公益の増進をもたらした場合には、褒賞金を支給し、または「勲章法」等の規定に基づき、表彰を推薦することができる。
<改正 2017. 10. 31., 2021. 4. 20., 2023. 3. 21.>
- 公益を侵害する行為を行った者に対し、起訴猶予、刑の宣告猶予・執行猶予または刑の宣告等がある場合
- 是正命令など、特定の行為や禁止を命じる行政処分がある場合
- 公益を害する行為の防止に向けた関係法令の制定または改正など、制度の改善に寄与した場合
- その他、大統領令で定める事由
② 第1項に基づく褒賞金の支給基準、支給対象、手続き等に関する事項は、大統領令で定める。
[本条新設 2015年7月24日]
[題名改正 2017年10月31日]
[第26条の2から移設 <2024年2月6日>]
第27条(救助金)
① 公益申告者等およびその親族または同居人は、公益申告等により次の各号のいずれかに該当する被害を受けた場合、または費用を支出した場合、委員会に対し救助金の支給を申請することができる。<2021年4月20日改正>
- 身体的・精神的な治療などに要した費用
- 転職・出向などにより発生した引越費用
- 公益申告などを理由とした訴訟手続きに要した費用
- 不利益措置期間中の賃金損失額
- その他、重大な経済的損害(第2条第6号ア目およびジャ目を除く)
② 委員会は、第1項に基づく救助金の支給申請を受けたときは、補償審議委員会の審議・議決を経て、大統領令で定める通り救助金を支給することができる。ただし、委員会委員長が緊急であると認める場合、委員長は補償審議委員会の審議・議決に先立ち、大統領令で定める通り、救助金の全部または一部を優先的に支給することができる。
<2017年10月31日、2021年4月20日、2023年3月21日改正>
③ 委員会は、救助金の支給に関し、救助金の支給申請者および利害関係者を調査し、あるいは行政機関または関連団体に必要な事項を照会することができる。この場合、行政機関または関連団体は、特別な事由がない限り、これに従わなければならない。
④ 公益申告者等およびその親族または同居人が、第1項各号に掲げる被害または費用の支出を原因として損害賠償を受けた場合、その金額の範囲内では救助金を支給しない。
⑤ 委員会が救助金を支給したときは、その支給額の範囲内で、当該救助金の支給を受けた者が第1項各号の被害又は費用の支出を原因として有する損害賠償請求権を代位する。
第27条の2(資料の請求等)
① 委員会は、第27条第5項に基づく損害賠償請求権の代位に関する業務に関連して、同条 第1項各号の被害又は費用支出の原因を提供した者(以下「被害原因提供者」という)の損害賠償金支払能力を調査するために必要な場合には、大統領令で定める通り、関係機関の長に対し、次の各号の資料の提供を要請し、又は委員会が関係電算網を利用して当該資料を確認できるよう措置を講じるよう要請することができる。
- 損害の原因を提供した者の財産に関する建物登記事項証明書および土地登記事項証明書
- 被害の原因を提供した者の住民登録謄本
- 損害の原因を提供した者の名義の不動産、自動車、建設機械、船舶、航空機、ヨットなどの財産に関する資料(登録原簿を含む)
- 損害の原因を提供した者の名義によるコンドミニアム会員権等の施設利用権に関する資料
- 損害の原因を提供した者の財産に関する地方税の課税証明書、建築物台帳、土地台帳および山林台帳
② 第1項に基づく要請を受けた関係機関の長は、正当な理由がある場合を除き、その要請に従わなければならない。
③ 第1項に基づき提供を受けた資料又は収集した資料を利用して業務を行う者、若しくは行った者は、当該資料又は当該業務を行う過程で取得した情報を、この法律で定める目的以外の用途に使用し、又は他の者に提供若しくは漏洩してはならない。
④ 第1項に基づき提供される資料については、手数料および使用料等を免除する。
[本条新設 2024年2月6日]
第28条(補償金等の重複支給の禁止等)
① この法律に基づき補償金、褒賞金又は救助金(以下、この項及び第29条において「補償金等」という。)の支給を受ける者は、他の法令に基づき補償金等を請求することができる。
② 委員会は、この法律に基づき補償金又は褒賞金の支給を受けるべき者が、同一の事由によりこの法律に基づく補償金・褒賞金、あるいは他の法令に基づく補償金・褒賞金等を受け取った場合において、その補償金・褒賞金等の額が、この法律に基づき支給されるべき補償金・褒賞金の額と同額であるか、これを超えるときは、補償金・褒賞金を支給しないものとし、その補償金・褒賞金等の額が、この法律に基づき支給を受ける補償金・褒賞金の額より少ないときは、その金額を控除して補償金・褒賞金の額を定めなければならない。
③ 委員会は、この法律に基づき救助金を受け取るべき者が、同一の事由によりこの法律に基づく救助金を受け取った場合、又は他の法令に基づく救助金を受け取った場合において、その救助金の額が、この法律に基づき受け取るべき救助金の額と同額であるか、これを超えるときは、救助金を支給せず、その救助金の額が、この法律に基づき受け取るべき救助金の額より少ないときは、その金額を控除して救助金の額を決定しなければならない。
④ 他の法令に基づき補償金・褒賞金等を支給する機関は、補償金・褒賞金等の受給者が同一の事由により本法に基づく補償金・褒賞金を受給した場合において、その補償金・褒賞金の額が他の法令に基づき支給される補償金・褒賞金等の額と同額であるか、これを超えるときは、他の法令に基づく補償金・褒賞金等を支給しないものとし、その補償金・褒賞金の額が、他の法令に基づき支給を受ける補償金・褒賞金等の額より少ないときは、その金額を控除して補償金・褒賞金等の額を定めなければならない。
⑤ 他の法令に基づき救助金を支給する機関は、救助金の受給者が同一の事由により本法に基づく救助金を受給した場合において、その救助金の額が他の法令に基づき支給されるべき救助金の額と同額であるか、これを超えるときは、他の法令に基づく救助金を支給せず、その救助金の額が他の法令に基づき支給されるべき救助金の額より少ないときは、その金額を控除して救助金の額を決定しなければならない。
[全面改正 2021年4月20日]
第29条(補償金等の返還等)
① 委員会または他の法令に基づき補償金等を支給した機関は、次の各号のいずれかに該当する場合、補償金等の支給を受けた者に対し、返還すべき金額および期限を通知しなければならず、当該補償金等の支給を受けた者は、定められた期限までにこれを納付しなければならない。
<2017年10月31日、2021年4月20日改正>
- 虚偽その他の不正な手段により補償金等を受け取った場合
- 救助金の申請者が第27条第2項のただし書きに基づき救助金の支給を受けたものの、補償審議委員会が救助金を支給しないことを審議・議決した場合
- 救助金の申請者が、第27条第2項のただし書きに基づき支給を受けた救助金が、補償審議委員会が審議・議決した支給額を超える場合
- 第28条第2項から第5項までの規定に違反して補償金等が支払われた場合
- その他、誤りなどの事由により補償金などが誤って支払われた場合
② 委員会から第26条第6項に基づき補償金の支給決定の通知を受けた公共機関は、その通知を受けた日から3ヶ月以内に、委員会が補償金の支給申請者に支給した補償金に相当する金額を委員会に償還しなければならない。
<2023年3月21日改正>
③ 委員会は、第1項に基づき補償金等を返還すべき者及び第2項に基づき補償金を償還すべき公共機関が、納付期限または償還期間までにその金額を納付または償還しなかった場合、国税または地方税の滞納処分の例に従って徴収することができる。
<2021年4月20日、2023年3月21日改正>
[タイトル改定 2021年4月20日]
第29条の2(損害賠償責任)
① 公益申告等を理由として不利益措置を講じ、公益申告者等に損害を与えた者は、公益申告者等に生じた損害について、3倍以下の範囲内で賠償責任を負う。ただし、不利益措置を行った者が故意又は過失がないことを立証した場合は、この限りではない。
② 裁判所は、第1項の賠償額を定めるに当たっては、次の各号に掲げる事項を考慮しなければならない。
- 故意または損害発生の恐れを認識していた程度
- 不利益措置により公益申告者らが被った被害の規模
- 不利益措置により、その措置を講じた者が得た経済的利益
- 不利益措置を講じた者が、当該不利益措置により受けた刑事処罰の程度
- 不利益措置の種類・期間・回数など
- 不利益措置を講じた者の財産状況
- 不利益措置を講じた者が、公益申告者等の被害救済のために尽くした努力の程度
[本条新設 2017年10月31日]
第5章 罰則
第30条(罰則)
① 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役または5千万ウォン以下の罰金に処する。
<2017年10月31日改正>
- 第10条第5項に違反し、申告者の個人情報などを含む申告内容を公開した者
- 第12条第1項に違反し、公益申告者等の個人情報、または公益申告者等であることを推察できる事実を他人に知らせ、あるいは公開または報道した者
② 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金に処する。
<2017年10月31日改正>
- 第15条第1項に違反し、公益申告者等に対して第2条第6号イ号に該当する不利益な措置を講じた者
- 第21条第2項に基づき確定した、あるいは行政訴訟を提起して確定した保護措置決定を履行しなかった者
③ 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役または2千万ウォン以下の罰金に処する。
<2017年10月31日、2024年2月6日改正>
- 第15条第1項に違反し、公益申告者等に対して、第2条第6号ナ目からサ目までのいずれかに該当する不利益な措置を講じた者
- 第15条第2項に違反して、公益申告等を妨害し、又は公益申告等の取り下げを強要した者
- 第27条の2第3項に違反して、資料または情報を使用、提供、または漏洩した者
第30条の2 (両罰規定)
法人の代表者、法人または個人の代理人、使用人、その他の従業員が、当該法人または個人の業務に関して第30条に違反する行為をした場合、その行為者を処罰するほか、当該法人または個人に対しても当該条文の罰金刑を科する。ただし、法人又は個人がその違反行為を防止するために、当該業務に関し相当の注意と監督を怠らなかった場合は、この限りではない。
[本条新設 2015年7月24日]
第31条(過料)
① 第19条第2項および第3項(第22条第3項において準用する場合を含む)に違反し、資料の提出、出頭、陳述書の提出を拒否した者には、3千万ウォン以下の過料を科す。
② 第20条の2の特別保護措置決定を履行しなかった者に対しては、2千万ウォン以下の過料を科す。
<2015年7月24日新設>
③ 第1項及び第2項に基づく過料については、大統領令で定める通り、委員会が賦課・徴収する。
<2015年7月24日改正>
