来春開校を予定する3つの大学に対して田中真紀子文部科学相(68)が2日、「大学は量より質が重要」との持論から新設を不認可とした。認可の答申を出していた大学設置・学校法人審議会について、田中氏は委員刷新をにらんでおり、大学設置認可のあり方を「抜本的に見直す」と明言した。過去30年、答申と真逆に認可されなかったのは初めて。突然の不認可に3つの大学準備室では「大臣の思い付きに振り回されたくない」などと前触れなしの真紀子節に困惑していた。
来春開校を予定していたのは、秋田公立美術大(秋田市)、札幌保健医療大(札幌市)、岡崎女子大(愛知県岡崎市)だった。田中氏は「新設は認められません」と言い切った。理由として「約800の大学があるんですね」と各都道府県の大学数がプリントされた日本地図を右手でひらひらさせた。文科省職員に急きょつくらせた資料だ。「(大学の)質が低下しているんですよ。量より質が大事なんです」と持論を展開した。
文科省は10月、創造学園大などを運営し経営が悪化している群馬県の学校法人「堀越学園」に解散を命じた。この事実を田中氏は重視し「安直に(新設を)認めると教育の現場が混乱するんです。こんなことが2度と起こらないようにしたい」とまくしたてた。
公私立大の設置認可を文科相に答申する大学設置・学校法人審議会は、文科省によると委員29人のうち大学関係者が22人。田中氏は審議会にもかみついた。「大学同士でお互いに検討している。外部の有識者で検討会をつくらないといけない」と言い、「大学の設置認可のあり方を抜本的に見直します」と真紀子節は止まることはなかった。
審議会で「新設を認める」との答申が出ていた。高等教育局幹部から再三「答申通りでお願いします」と説得を受けた田中氏は「駄目なものは駄目」と首を縦には振らなかった。記録の残っている過去30年で、答申を覆して、大臣が不認可の決定を下したのは初めて。文科省職員は「3大学は巡り合わせが悪かった、としか説明しようがない」とため息をついた。
◆秋田公立美術大 現・秋田公立美術工芸短大。来春に東北唯一の公立美術系4年制大学になる予定だった。秋田市新屋大川町。最寄り駅はJR羽越本線新屋駅。
◆岡崎女子大 学校法人清光学園が運営する短大を改編し、来春から4年制女子大とする予定だった。愛知県岡崎市中町1丁目。最寄り駅は名鉄東岡崎駅。
◆札幌保健医療大 定員100人の予定で来年4月に開学予定だった。看護学部がある。札幌市東区中沼西4条2丁目。最寄り駅は地下鉄東豊線新道東駅。