昨夜10時頃、玄関ヨコの金木犀の枝を懐中電灯で見たら、羽化したばかりの透けた薄い青緑の羽根のクマゼミが4匹、じっと自分の抜け殻にぶら下がっていました。数日前から抜け殻が多くなり、朝はうるさいほど鳴声が聞こえるので、ひょっとしたら見つかるかもしれないと思った通りでした。
子どもの頃は夕方、地面の穴から這い出す前のコセミやアブラゼミの幼虫を家の庭や近所でよく探したものです。コセミは泥まみれで地上に出てきます。木の根元に近いところで脱皮するのもコセミの特徴です。
私は2001年の「ニューヨーク通信」にアメリカのドッグデイという蝉について書いて、その大きさを言うために日本のコセミを引き合いに出しました。今日、ネット検索したら、「頂門の一針」というブログへの投稿で、馬場伯明さんという蝉に詳しい方が、 <大げさに言えば「世界で初めて『コセミ』という単語をネットにのせた人」>と私のことを紹介してくれていました。コセミというのは私の郷里の大分県(だけ?)で通用するニイニイゼミの地方名なのです。
子どもの頃に見つけた蝉の幼虫は、家の納戸の蚊帳のなかに入れて脱皮する様子を何度か観察したことがあります。それほど親しんでいた幼虫ですが、呼び名はないものと思っていました。ところが妻の郷里の小豆島ではムックリコというかわいい呼び名があったのです。
とはいえこれは蜻蛉の幼虫のヤゴのように全国どこでも通用する名ではなく、地方によってさまざまな呼び方をされているらしいのです。小豆島でも、長浜のあたりではムックリコでも、池田のあたりではモックリコなんだそうです。
全国各地のセミの幼虫の呼び名を集めて「セミの家」というホームページに載せている人がいます。そこに出ているなかでは、アナゼミ、ツチゼミ、ジゼミ、セミウマ、ヤットコセイ、ノタリ、モヤモヤ、モングリ、イゴイゴなどが、セミの幼虫の生態や、どこかおどけた感じをうまく表しています。でも私にとってはそこに出ていないムックリコが一番のお気に入りです。