従業員が感染? 企業対応は 新型肺炎で重要局面 (2/26)

従業員が感染? 企業対応は 新型肺炎で重要局面
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2020/02/26(水) 7:30配信時事通信

 政府は25日、新型肺炎の拡大を踏まえた基本方針を取りまとめ、企業に発熱などの症状がある従業員への休暇の付与や、テレワークの推進などを要請した。ただ、現場では戸惑いが大きく、検討すべき課題をまとめた。

 ―発熱など症状がある従業員への対応は。

 厚生労働省がホームページで公開しているQ&Aでは、風邪の症状があるときは、会社を休んでもらうよう呼び掛けている。自宅療養の上で、37.5度以上の発熱が4日以上続く場合などは都道府県に設けた「帰国者・接触者相談センター」に相談するよう求めている。企業もそうした対応を促すことになる。

 ―休んだ際の賃金は。

 感染が確認され、感染症法に基づいて強制入院となった場合は、労働基準法に定める「会社の責」ではないため、休業手当の支払いは必要ない。ただ、要件を満たせば、健康保険などから傷病手当金が支給される。

 ―感染が疑われる場合が一番多いのでは。

 新型肺炎か分からない段階で、発熱などの症状で従業員が自主的に休む場合は通常の病欠と同様となるため、就業規則に沿って病気休暇制度などを活用することになる。労働法務に詳しい弁護士は、労使が話し合って対応を決めておき、失効した有給休暇を使える制度などを柔軟に活用することも一つの案だと指摘している。

 感染拡大防止の観点で企業側の判断で休ませる場合には休業手当を支払う必要がある。経営判断で特別な有給休暇制度を設けた社もあるようだ。

 ―他に企業として対応すべきことは。

 政府は時差出勤やテレワークの導入を求めている。中でも企業が比較的導入しやすいのは時差出勤とされる。感染した場合、重篤化しやすい持病を持つ社員に優先適用するなど実際の適用では工夫が必要となりそうだ。

 ◇時差出勤、現実的手法に
中山・男沢法律事務所の中山慈夫弁護士 従業員が業務に起因して感染したり、濃厚接触したりした場合、(休業時の賃金は)企業側が100%支払うことになる。プライベートで新型コロナウイルスに感染した際は企業側に支払い義務はなく、通常は有給休暇などを活用することになる。感染者や濃厚接触者以外で、本人が体調が悪いと休むケースは個々の企業の判断となる。

 感染拡大防止の観点では、時差通勤やテレワークが現実的手法となるだろう。全社員に適用することが難しいなら、感染した場合に重篤化する恐れのある持病がある社員を優先するといった工夫も考えられる。労使の基本的権利・義務に加え、経営判断で対応していくしかない。

 ◇企業対応に限界、国が早期支援を
第一芙蓉法律事務所の木下潮音弁護士 (新型コロナウイルス感染の有無などを確認するため)海外出張後に自宅待機となった場合、その期間中も出張継続と考えられる。私的な旅行で感染した際は有給休暇などを使うことになる。2週間休み、給料が半分になれば生活できない。国が休みやすい環境整備を求めているのは、そうした不安をなくすため、企業も努力をしてほしいということだ。

 本人ではなく、家族の状態が悪くても休める仕組みにすることも重要だ。有給休暇制度を超えた対応ができるかどうかは、企業の財務状況にもよる。多くの中小企業は厳しい。国の援助が必要で、すぐにお金を出せることが重要だ。

 ◇踏み込んだ方針
菅原えりさ・東京医療保健大大学院教授(感染制御学)の話 政府として初めて踏み込んだ方針を示しており、評価できる。経済や社会への影響の不安がある中で、人混みを避けるなど国民に行動自粛を促したことは、感染拡大の防止に有効だ。患者数が大幅に増加した地域では一般医療機関でも患者を受け入れる方針を示したが、感染防止に慣れていない病院もあるため、専門家の支援などによる負担軽減も必要だろう。マスクなどの物資確保にも期待をしたい。
 

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