ウーバー労組、救済申し立て 都労委に「団交拒否は不当」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/202003/CK2020031702000143.html
東京新聞 2020年3月17日 朝刊
〔写真〕救済申し立てについて説明するウーバーイーツユニオンの前葉富雄執行委員長(左)=16日、東京都千代田区で
米配車大手ウーバー・テクノロジーズが日本で手掛ける宅配サービス「ウーバーイーツ」の配達員らでつくる労働組合は十六日、ウーバー日本法人が団体交渉に応じないのは不当労働行為に当たるとして、労使紛争の解決機関である東京都労働委員会に救済を申し立てた。労組の弁護士によると、インターネットで仕事を仲介する「プラットフォーマー」と呼ばれる国際的な巨大IT企業を相手取って救済を申し立てるのは初めてという。 (岸本拓也)
申立書によると、労組は昨年十月に結成され、配達員がけがを負った際の補償の充実や、一方的な報酬体系の変更などについて十分な説明をするよう、ウーバー側に二度にわたって団交を求めた。しかし、ウーバー側は「配達員は個人事業主で、労働組合法上の労働者には当たらない」などとして、団交を拒否し続けている。
組合側は「報酬など契約内容は一方的にウーバー側が決め、配達員に個別交渉の余地はない。配達員が労働者であることは明らか」と主張。団交拒否は、労組法で禁じる不当労働行為に当たるとして、ウーバーに誠実に応じるよう都労委に救済を求めた。
東京都内で会見した労組の前葉富雄執行委員長は「ウーバーのサービスをより良くするために現場の配達員と会社が話し合うためのきっかけにしたい」と話した。ウーバー日本法人は本紙に「申し立ての内容を確認できていないため、コメントできない」と答えた。
◆配達員の「労働者性」争点
今後の東京都労働委員会の審査では、個人事業主であるウーバーの配達員に「労働者性」が認められるかどうかが焦点となる。都労委が救済に動けば、これまで、ネットで仕事を仲介する「場」を提供するだけで、労働問題の責任から逃れてきた巨大IT企業は対応の転換を迫られる。
判例では、個人事業主を労働組合法上の労働者と判断する要素は(1)事業に不可欠な労働力として組織に組み込まれているか(2)契約内容が一方的に決められているか(3)報酬が労務の対価であるか−などとしている。
ウーバーの配達員は、アプリ上で指示を受けて飲食店から顧客に商品を配達するが、報酬や配達先などの交渉は一切できない。昨年十一月には、東京エリアの報酬が一方的に引き下げられた。労組を支援する川上資人(よしひと)弁護士は「ウーバー側が配達員の労働環境を決定している」と指摘する。
配達員が使うアプリの契約先はウーバーのオランダ法人となっているが、日本のウーバーイーツ事業を担っている日本法人が実質的な「使用者」に当たるかどうかも争点となりそうだ。
ウーバーを巡っては、フランスの最高裁が三月、ウーバー運転手と同社に「雇用関係」を認める判決を出した。米カリフォルニア州では一月にウーバーのようなプラットフォーム(場)を利用して働く人を「労働者」として扱う州法が施行された。働き手を保護する流れが強まっており、都労委の判断が注目される。
都労委の審査は一年以上かかる見通し。新型コロナウイルスの影響で調査の開始も遅れる可能性があり、労組側は迅速な手続きを求めている。 (岸本拓也)