不合理な待遇差は禁止 「同一労働同一賃金」でこう変わる―ニュースQ&A
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020032800355&g=eco
時事通信 2020年03月28日15時37分4月1日、大企業で「同一労働同一賃金」の適用が始まる。待遇や働き方にどのような影響があるのだろうか。
―同一労働同一賃金とは。
雇用形態が正規か非正規かに関係なく、同じ仕事をすれば同じ賃金を払うべきだとの考えだ。2018年に成立した「働き方改革関連法」では、正社員と非正規労働者との間で、基本給や賞与など全ての待遇について不合理な格差を禁止した。格差がある場合は、内容や理由の説明を義務付けている。
―対象は。
パートやアルバイト、契約社員など短時間勤務や有期契約の労働者と派遣社員。中小企業には来年4月1日から適用される。
―何が同じになるのか。
厚生労働省のガイドラインでは、職務内容や配置転換の範囲などを考慮した上で、実態に違いがなければ、賃金や手当で不合理な格差があってはならない。具体的には通勤や特殊作業、食事、単身赴任、地域などの各手当は正社員と同じにする必要がある場合が多い。賞与も貢献に応じた支給が求められる。
―違反した場合は。
罰則規定はない。都道府県労働局が必要に応じて助言や指導を行う。ただ、待遇差が不合理かどうかは最終的には裁判で判断されるため、労働者にとってはハードルが高い。
―今後の課題は。
ガイドラインでも基本給については限定的な表現にとどまっている。企業の対応で非正規の待遇改善は一定程度見込めるものの、正社員との間になお格差が残る可能性もある。
〔S.Wakita〕新たな法規制は、「同一労働同一賃金」という点では、「基本給については限定的な表現」「正社員との間になお格差が残る」ことが法施行前に指摘されており、まさに「羊頭狗肉」の制度と言うしかない。また、「罰則規定はない」「最終的には裁判で判断されるため、労働者にとってはハードルが高い」というのでは、弱い立場の非正規雇用労働者に「争っても大したことないよ」ということになる。労働法では、裁判所で争うことが難しい労働者のために、労働委員会などでの無料で迅速な救済制度が設けられたが、実際には十分に機能していない。弱い非正規雇用労働者が雇用不安定のまま「同一労働同一賃金」を争うこと自体が至難のことである。個人加盟で非正規雇用労働者も参加できる労働組合が、バックにいないと、制度はまともに機能しない。本来であれば、企業別労組が、非正規雇用労働者をも代表して同じ職場で働く非正規労働者のために支援すれば、この制度は機能するかもしれない。労働組合が、そうした代表的な活動ができるか、もし、差別温存の立場に回るときには、既存の企業別正社員組織としての労働組合は、利己主義的組織に転落することになる。今回の法改正は、制定者側には、意識的にか無意識的にか、そうした危険な「底意」があると言えるかもしれない。1985年制定の労働者派遣法には、同じ職場で同じ労働をする派遣労働者が増えて行けば、そのために闘わない企業別正社員組織の「代表性」「正当性」を弱める「団結破壊」の狙いがあったというのが私の主張である。残念ながら、30年以上、派遣労働者の差別的待遇改善のために闘う企業別組織はほとんど無かった。私の主張は誇張ではなかった。今回の法改正は、それを活用する労組の代表性や信頼を回復する大きな契機になるが、従来のように非正規雇用労働者のために労組が闘わなければ、派遣法と同様の結果を生みかねない。そのような意味で、「毒素」の面も有していると思われる。派遣法制定時の内閣は、労組を忌み嫌った中曽根内閣であった。今回の「働き方改革法」を提案した内閣も、労組の発展を望んでいるとはとても思えない安倍内閣であることを考えると、この「毒素」の面を甘く見ることはできない。その点では、日本の既存の労組は、全体労働者を代表する組織として生まれ変わることができるか、岐路に立っていると言えるだろう。