2022年4月22日(金)報道各社が、守口学童保育不当雇い止め事件裁判が大阪地裁で和解したこと、を報道している。
朝日新聞(https://www.asahi.com/articles/ASQ4Q6GWBQ4PULZU00J.html)によると、「会社側が、雇い止め後に残っていた委託期間(4年)に働いた場合の賃金総額を上回る金額を支払う。ただし、職場復帰は実現しなかった」とのことである。
原告が22日に記者会見して明らかにした内容によると、和解は18日付で、共立メンテナンスは、7,800万円の解決金を支払うとのことである。
この事件は、大阪府労働委員会でも不当労働行為救済申し立てが行われ、21年10月に共立メンテナンスの組合員を狙い撃ちにした解雇は無効であり、職場復帰を命じた救済命令を出している。共立メンテナンス側は、この命令について、バックペイを支払い続けていた。
今回の解決金とその賃金相当額を合計すると、1億3400万円を超え、雇い止め後に残っていた委託期間4年の賃金相当額を超えるとのことである。また、雇い止めは撤回される。
つまり、共立メンテナンスは、雇い止めを無効にした上、解決金として、守口市から学童保育を委託されている5年間のうちの残りの2年の賃金相当額を支払い、さらに慰謝料相当額と言える支払いをした、と解釈できる。
職場復帰はならなかったが、共立メンテナンスの委託全期間の賃金相当額と慰謝料相当と言える解決金を支払わせたことは、法律の世界では「完全勝利」と言えるだろう。
しかし、企業の不当な雇い止めによる「職場を奪う」行為は、金銭では代替できない打撃を労働者に与える。
今回のような、行政機関が公的機関の運営を民間委託したケースにおいての、委託業者の不当解雇事件は「金銭解決」で「解決」したと言い切れるものではない。守口市は、共立メンテナンスの不当な雇い止めに対して、この2年間ほとんどコメントらしいコメントもしてこなかった。原告らの集めた署名の受け取りや訴えに耳を貸してこなかった。
裁判所の和解は、「判決」と同等の効力を持つ。「職場復帰」は叶わなかったが、その賃金相当額以上の解決金らを共立メンテナンスが支払わねばならなかった意味は、裁判所の「地位確認」判決と同等の意味を持つ。守口市は、自らが委託した業者がこのような雇い止め事件を引き起こし、2年間の「争議」を労働者に強いたと言える、この事件を真摯に受け止め、委託先の選定だけでなく、委託そのものについても見直すことが必要なのではないだろうか。
原告の水野直美さんは、記者会見で「学童保育は民間委託になじまず、公的責任で運営されるべきだ」と述べている。2年の争議を経た、このことばの重みを守口市は受け止めるべきである。
また、記者会見で記者からの「今後皆さんはどうされますか」という質問に対し、原告は
全員が今の思いを吐露し、口々に「2年後の委託更新で再び共立メンテナンスにならないように、運動していきたい」と述べていたとのことである。
この雇い止め事件で雇い止めにあった学童保育指導員らは、全国でも有数の充実した「守口学童」を担っていたベテランの指導員である。彼らの中には学童保育の指導員の養成講座で講師を務められる方もいらした。そのような指導員を雇い止めし、守口市の学童をどこへ行かせるつもりだったのか、今回のような「全面敗訴」と言える運営をした企業に委託した守口市にあらためて問いたい。