第80回 韓国で大きく進むプラットフォーム労働者の権利実現(中)配達員の団結活動

 日本では最大手のUbereatsが、なぜ、韓国からは撤退したのか?

 11月14日の「Asu-netのつどい」は、「『フーデリワーカー』の現状と課題」を対面とズームの両方式で実施しました。
 当日は、伊藤大一さんから実際のライダーが働く実態から興味深い指摘があり、また、UberEats弁護団の川上資人さんから日本と世界の動向とプラットフォーム労働をめぐる法的問題点についての詳しい報告があり、さらに、実際にライダーとして働く中で現れた事例や問題点について現場からの発言がありました。
 私は、閉会の言葉で2019年のAsu-netのつどいが「雇用によらない働き方」をテーマに取り上げてから4年を経過しましたが、この間にコロナ禍の中で市民の生活を支えるプラットフォーム労働、とくに、フードデリバリー労働について、その無権利状態を改善する方向で、アメリカ、EUなど、世界の多くの国では、大きな変化というか、紆余曲折の動きがあったことを指摘しました。とくに、アメリカのカリフォルニア州法(AB5法)の影響を受けて、EU委員会は、労働者の権利実現に向けて画期的な2021年末の指令案を提起しました。しかし、これを阻止しようとするUberなどの多国籍企業が活発なロビー活動を展開して、逆流が生まれていること、最近では、それに抗議してEUではライダーたちが権利実現へ国際デモをしており、韓国のプラットフォーム労働者が、そのデモに連帯の声明を出していることなどを紹介しました(第78回エッセイ参照)。
 今回のエッセイは、前回に続き、韓国のフードデリバリー労働の話です。とくに日本では最大手のUbereatsが、韓国では2017年11月にサービスを開始した後、2019年10月に撤退した理由に関心をもちました。Ubereatsは、日本では最大手なのに、なぜ、韓国では撤退せざるを得なかったのか?

Ubereatsがわずか2年で韓国から撤退したことを報ずるHuffpostの報道

 そこで今回は、なぜ、Ubereatsが韓国から撤退したのか、その背景となった韓国フードデリバリー市場の特徴、とくに、Ubereatsが撤退した理由の一つには、配達員たちの労組活動やデモなどによる強い反発があったとされています。この配達員たちの反発や抗議の動きがどのようなものであったのかを知りたいと思い、韓国のフードデリバリー市場の特徴と、配達員たちの状況、団結活動の実情について調べてみようと思いました。

 韓国のフードデリバリー

 韓国フードデリバリーの構造的特徴

 韓国のフードデリバリー産業の急速な発展について、韓国政府は「韓国労働研究院(KLI)」に調査研究を委託していましたが、2019年、その結果が発表されました。その報告書=KLI(2019)「デリバリーアプリの普及が雇用に与える影響」は、韓国フードデリバリー(食物配達)アプリ構造の特徴は、「注文仲介」と「配達代行」が分離された構造であると指摘しています。このフードデリバリー(食物配達)アプリは、いわゆるプラットフォームによるプログラム(アプリ)を利用した配達システムですが、これに関連した利害関係者は、下図の通り、従来は、顧客が飲食店に注文し、飲食店が直接雇用する配達員、または、委託関係にある自営業配達員が顧客に食物(料理)を届ける方式でしたが、そこに、顧客から飲食店への直接注文から、アプリを利用した仲介会社を利用した注文が増加する一方、飲食店は、直接雇用の配達員ではなく、配達代行プログラム社を利用するようになり、配達代行プログラム社は、系列の配達代行業者に所属する配達員を通じて料理(食物)を飲食店(事業者)から顧客に配達する方式が増えてきたことが明らかになりました。

 プラットフォーム利用の配達労働者

 この飲食注文と配達を仲介するプラットフォーム企業には、一説には200を超える多くの企業があるとされますが、代表的な企業としては、「配達の民族「、「ヨギヨ」、「クーパンイーツ」、「配達通」、「ウィメプオ」、「バロゴ」、「ブルン」、「センガクデロ」などがあります。これらの企業の売上額や労働者数の企業別比率は、関連した調査や企業自身の公開情報がないので正確には分かりません。一部のメディアや研究機関の「推定」ですが、2021年7月現在の市場シェアとして「配達の民族」56.3%、「ヨギヨ」21.55%、「クーパンイーツ」19.17%、「ウィメプオ」1.02%、「その他」1.96%という数字が報じられています(イコノミス2022年1月1日)。

 2022年12月27日、韓国政府(雇用労働部)と韓国情報院が、「2022年プラットフォーム従事者規模と勤務実態」の調査結果を発表しました(毎日労働News 2022.12.18)。この調査は、全国で無作為抽出された15~69歳の5万人を対象にしたもので「顧客満足度評価などの方法で仕事の配分などに影響を及ぼすプラットフォームを媒介に労務を提供」するプラットフォーム従事者が、2021年66万人から2022年80万人に13万4千人増加しました。これは、就業者全体の3%に相当します。職種別のプラットフォーム従事者の規模は、下の表の通りで、コロナ禍で急増した配達・配送・運転職種は51万3千人で最も多い割合を占めました。 しかし、増加幅は前年比2.2%にとどまっています。 それと対照的に、ソーシャルディスタンスが緩和されたことから、家事·清掃·介護職種(5万3千人)が1年間で89.3%増えました。プラットフォーム労働が「主業(全体収入の50%以上または週当り20時間以上労働)」と答えた労働者は2021年31万2千人から2022年45万9千人と47%増加し、 プラットフォーム労働が主な働き口である労働者はプラットフォーム従事者全体の57.7%を占めています。
 そして、消費者と飲食店間の注文を仲介する注文仲介プラットフォームが37社、飲食店と地域の配達代行業者間の配達注文を仲介する配達代行プラットフォームが51社運営されていることが明らかになりました。全国各地の配達代行業者は7794社に達することが明らかになっています。(京郷新聞2022年12月27日

 また、プラットフォーム労働者の63.4%は「どんな契約も結ばずに仕事をしている」と答え、雇用保険加入率は46.3%産災保険加入率は36.5%に止まっています。収入については、職種別では配達・配送・運転職種で55%が収入が減ったと答え、労働条件が悪化して「離職」を望む者が配達·配送·運転労働者で53.8%と高い比率を示しています。配達労働者規模はCOVID-19を経て2倍近く増えた。 注目されるのは、切迫した配達時間にともなう無理な運転で配達労働者の43%が仕事中に交通事故に遭ったことが明らかになったことです。

 他方、国土交通部も、同じ12月27日「2022年配達業実態調査結果」を発表しました(毎日労働News 2022.12.18)。これは2021年7月、「生活物流サービス産業発展法」制定にともなう初めての食物配達業従事者実態調査です。 それよれば、配達業従事者は2019年上半期11万9626人から2022年上半期23万7188人と2倍増加しました。 政府が把握した運営業者数は、消費者と飲食店を仲介する注文仲介プラットフォームが37社、配達代行業者と飲食店を連結する配達代行プラットフォームが51社、配達代行業者が794社になっています。

 交通安全公団が6都市の配達労働者1200人を対象にアンケート調査した結果によれば、10人中4人は最近半年間に交通事故の経験があり、 42.8%が「差し迫った配達時間にともなう無理な運転」のために事故が起きたと答えています。配達業従事者は1日平均37.4件(週末42.3件)を配達しており、 運行距離は平均103キロ(週末117キロ)にもなっていました。月平均25.3日働いて配達労働者が得る収入は381万ウォンですが、このうち95万ウォンが保険料・貸与費になるので手取り額は286万ウォンでした。 労働条件改善のために「配達手数料体系改善」が必要だという応答が43.8%で最も多く、労働者地位認定(13.7%)、パワハラ緩和(12.9%)、危険補償(12.5%)の順で続いていました。
 次に、こうした調査や統計ではなく、配達員(ライダー)自身が労働の現実を伝える情報をWeb上で見つけました。以下は、配達員として働き、配達員たちの組合の活動してきたライダーのインタビューの話(要約)を試訳してみました。

 ライダーが語る韓国型プラットフォーム労働

 ライダーユニオンの初代委員長だったパク・ジョンフンさん「プラットフォームは安全を届けない」という本を書きました。上の動画(左側)は、この本について紹介するもので、著者本人が登場して語っています。この本は、デリバリープラットフォーム企業がライダーの安全を担当せず、リスクを助長する構造的な問題を明らかにしています。著者は、7年目の配達ライダーとして、道路上で経験した様々な事故とパワハラを紹介しています。また、プラットフォーム企業のAIアルゴリズムと賃金体系、事故処理方法などを批判的に分析しており、ライダーの労働権と福祉を保護し、プラットフォーム産業の真の「革新」のための規制と提案を示しています。(ハンギョレ 2023.3.31
 また、上の動画(右側)は、2023年4月11日、KBSの「成功予感」という番組で、パク・ジョンフンさんが、MCのイ・デホさんの「深層インタビュー」に答える内容で、韓国のライダーをめぐる現状を分かりやすく話しているものです。まだ、韓国語の能力は不十分ですが、このインタビューの内容を、韓国語の勉強を兼ねて、以下のように要約してみました。以下は、インタビューの目次と、要約です。要約は、Clickすると文章が展開します。

  • ①スタート
  • ②直雇用、近所、配達代行会社、バトルコール?
  • ③配達代行、配達料はいくらもらえるか?
  • ④配達雇用形態が事故件数に影響を及ぼすか?
  • ⑤ライダー資格制度?
  • ⑥アプリで注文すれば、どんな手続きを経て配達されるか?
  • ⑦徐々に直接配達する店が消える理由?
  • ⑧配達代行業は多くなるが、なぜ配達費は上がるのか?
  • ⑨食事時間じゃない時も配達に時間がかかる理由?
  • ⑩配達プラットフォームの不合理性?
  • ⑪巨大な配達工場、代案はないのか?
ライダーユニオン初代委員長へのインタビュー  ① ② ③ ④     ここをClink

①スタート
【イ・デホ】食堂の話ですが、私たちが日常生活でこれがないと生きていけません。まさに、それが配達です、配達。ところが、「配達の民族」、「ヨギヨ」、「クーパンイーツ」などの配達プラットフォームを利用する人が最近大きく減っているそうです。コロナ19の時は大きく増加しましたが、最近1年の間に630万人もの利用者数が減少したそうです。これに対して配達にどのような改善点があるのかも一緒に話してみます。その配達現場で活躍した方です。『プラットフォームは安全を配達しない』の著者であり、ライダーユニオンの初代委員長でもあったパク・ジョンフン・ライダーとお話します。こんにちは。
<パク・ジョンフン ライダー>こんにちは。パク・ジョンフンです。
【イ・デホ】今も配達の仕事をされているのですか?
<パク・ジョンフン ライダー>はい、そうです。今は、「配達の民族」、「ヨギヨ」、「クーパンイーツ」など、様々なアプリで仕事をしています。
【イ・デホ】ところで、また直接、本も書くほど関連分野に対する考察も多くされているようです。
<パク・ジョンフン ライダー>労組活動をしてみると、事例も多く聞くことになりました。それを記録に残さなければならないと考えて本を書くことになりました。
イ・デホ】そのため、ほとんどすべての配達プラットフォームを経験してみたんですね。
<パク・ジョンフン ライダー>その通りです。それでマクドナルドみたいな直雇用、そして近所の配達代行社の「戦闘(バトル)コール」方式、それから、最近、AIを配置した配達三社のアプリで仕事をして見ました。今もしているんです。

②直雇用、町内、配達代行会社、バトルコール?
イ・デホ】直雇用といえば直接雇用でしょうから、それは多くの方々がご存知だと思いますが、近所の「配達代行社」、「バトル(戦闘)コール」。ちょっと難解な言葉ですね。これはどういうことですか。
<パク・ジョンフン ライダー>飲食店に注文が来ると、飲食店社長が配達を直接雇用して給料を払ってバイクを提供しながら使うとコストがかかりすぎるので、配達を代行してほしいと依頼することになります。これを専門的に代行してくれるのが代行会社です。ここと委託契約を結んだ配達ライダーたちがアプリに接続して、配達コールがスマホに表示されると、一番最初にタッチした人が仕事を取る。だから「バトル(戦闘)コール」です。これが、まるで戦争に似ていることから、バトル(戦闘)コールと呼んでいます。
イ・デホ】これは1秒の戦いですからね。もっともタクシーコールを取る人たちもそうですし、代理運転の方もそうですし、配達の方もそうです。本当にこの先端IT時代に、文字通り1秒の戦いですね。1秒ではなく、ほとんど0.1秒ではないですか?
<パク・ジョンフン ライダー>その通りです。
イ・デホ】それで携帯電話を変える方もいらっしゃいますか?もっと速いものに。
<パク・ジョンフン ライダー>その通りです。デジタルプラットフォームは、時空間に限界がないから、そして待機する人手が多すぎますよね? そこで生き残るためには、携帯電話を真っ先に変える業種がデリバリー(配達部門)です。
イ・デホ】LTEではだめですね。
<パク・ジョンフン ライダー>5G程度は必要です。だから5G出たときに、すごい人が集まったんです。ライダーたちが集まったんです。

③配達代行、配達料はいくらもらえるか?
イ・デホ】ところで、「配達の民族」とか、「ヨキヨ」、「クーパンイーツ」などの大型プラットフォームと、先ほどお話しくださった「近所の配達代行社」と、実は、給与と表現をしてもいいのか分かりませんが、受け取る費用はどうですか? 収入ですが。
<パク・ジョンフン ライダー>近所の配達代行社の場合は、配達代行会社の支社長が決めています。1.5km以内は3千ウォン、それ以降は100m当たり100ウォン、または500m当たり500ウォンと比例的に決まっています。AIが配車する配達アプリの場合は、AIが配達料をリアルタイムで決定します。そのため、今日のように風が強い日や雨の日は、基本単価を多くして、天気が良いときは、配達1件当たり約3千ウォン、または、2500ウォン。こうして配達料がまるでビットコインや株のように乱高下すると私たちは考えています。それで賃金がまるでギャンブルのように変わると私たちは表現しています。
【イ・デホ】まるでギャンブルのように。
<パク・ジョンフン ライダー>今入ってくる配達3千ウォンで行くか、それとも次のコールが2千500ウォンになるかもしれないし、4千ウォンになるかもしれないし、待ってみる。60秒以内にこれを決めろってということなんです。
イ・デホ】ところで、ニュースを見ていると、配達ライダーが配達だけで一月に500万ウォンを稼いだ。600万ウォンを稼いだ。ちょっとこういう刺激的なニュースが聞こえてきませんか? これはどうですか?
<パク・ジョンフン ライダー>現場から見ると、これはどこにもある広告性の記事だと私たちは思っています。500万から600万は売上高基準ですので、ここから費用を少し差し引く必要があります。私たちは、30%くらいは経費だと思っています。バイクの保険料が年間500万から600万ウォンくらいになります。
イ・デホ】バイクの保険料ですか?
<パク・ジョンフン ライダー>有償運送保険という営業用保険に加入しなければならないのですが、この保険料が年間500万から600万ウォン程度になり、20代の場合は700万~800万ウォンまで上がります。
イ・デホ】それは保険料だけですか?
そうです。しかし、自家用車はダメです。
イ・デホ】自車保険はダメなんですね。
<パク・ジョンフン ライダー>自分の身体も(保険対象に)選択すると、さらに上がったりします。油代とかバイクの減価償却、つまりバイク、新しいバイクが400万ウォンくらいですのに、500万ウォンから600万ウォンを稼いだということは、1日200kmくらい走ったということです。そんなバイクは乗り換えなければならないので、月に100万から150万くらいは使うわけで、上位1%くらいのライダーが500万から600万くらい、週6日、1日12時間くらい働けばそのくらいは稼げるんですよ。このライダーを見て、多くの人が流入されるのではないでしょうか?そうだとすると、このような方々が自分は500万〜600万稼げていないからと、さらにスピードを出すようになったり、あるいは仕事競争が繰り広げられるために十分な収入を得られない副作用が起こったりします。

④配達雇用形態が事故件数に影響を及ぼすか?
イ・デホ】貨物車も「バトル(戦闘)コール」ですが、タクシーもそうですし、バイクの配達もそうですし、貨物車もそうですし、これでは全国が「バトル(戦闘)コール」ですね。しかし、実際、このように早く(注文を)キャッチして速く配達する、こうすればするほど、事故もそれだけ多くなるはずですよね。
<パク・ジョンフン ライダー>その通りです。私たちが事故統計を見ると、一般代理店、つまりプラットフォームの形で働く(ライダーの)事故率が212%、直接雇用して働くライダーの事故率が30%程度になります。7倍くらい差があるんですけど。
イ・デホ】事故率が200%を超える`とは?
<パク・ジョンフン ライダー>1年に1回か2回くらい事故を起こすということです。この話は何かというと、雇用形態と賃金形態が事故に影響を与えると見ることができます。つまり、時間給が保証されると、信号を守り、唯一自分を速く走らせるのは、マネージャーの指示程度になります。今、配達代行1件当たりで賃金を受け取るようになれば、わざわざ自分に早く配達しろと言う必要はありません。早く配達しないと十分な収入を得ることができないからです。近所の配達代行業者が3千ウォン程度だと言いますので、(その場合、)保険料を除いた最低賃金を受け取るには、1時間に5件、6件くらい、配達して初めて適正な生活賃金額を受け取れるようになるんです。
【イ・デホ】1時間あたり5件から6件ですか?
<パク・ジョンフン ライダー>例えば、3千ウォンなら5件で1万5千ウォンですから、ここからガソリン代、保険料を差し引くと、週休手当を含めた最低賃金と同じような金額になるんです。
イ・デホ】1時間に5~6件でも最低賃金程度しかもらえない?
<パク・ジョンフン ライダー>そして、この配達が集中する時間帯が昼、夕方のピーク時なので、その時はさらに速く走ることになるんです。なぜなら、午後の時間帯には仕事がないからです。
イ・デホ】ちょうど昼、夕方の時間帯に運転するんですね。
<パク・ジョンフン ライダー>そうです。
イ・デホ】多分リスナーの皆さんもたくさん見ていると思うんですけど。本当にアクロバティックな運転をするライダーさん、信号無視したり、横断歩道でUターンしたり、目がくらむような経験もたくさんあると思うんですけど。

ライダーユニオン初代委員長へのインタビュー ⑤ ⑥ ⑦ ⑧     ここをClink

⑤ライダー資格制度?
【イ・デホ】お金のためでもそんな乱暴な運転をしてはいけないわけですが、これは難しいのですか?
<パク・ジョンフン ライダー>だから僕らもある種のライダー資格制度を導入しようということです。
【イ・デホ】ライダー資格制度?
<パク・ジョンフン ライダー>つまり、まず保険に加入している人、それからある程度の安全教育を受けた人だけが配達をできるようにしようという提案をしているんです。現在、125cc以下のバイクの場合は、運転免許証だけでバイクに乗れます、バイクの免許がなくても。
【イ・デホ】125cc以下ですか。
<パク・ジョンフン ライダー>そうです。だから面白いのが、バイクの運転免許試験場にバイクで来てください。そして(試験に)落ちて、バイクで帰ってください。
【イ・デホ】つまり小さなバイクで?!
<パク・ジョンフン ライダー>そうなんです。これではバイクに対する管理がないということです。だからバイクに乗れる労働者が多いじゃないですか、何の規制もないんです。だからこの豊富な人材を持って、プラットフォームが低価格で労働者を活用することで成長できたわけです。だから、これに対して、プラットフォームが労働者をこうして無限に蓄積することに対して規制をしなければ、プラットフォームには関係がないということです。信号違反して配達をしようが、配達だけして与えられたお金さえ払えば済むわけです。だから、私たちは、資格制度や配達事業者に対する登録制を求めているのです。そして、私たち自身も安全教育講師団を養成しており、安全教育を定期的に行っており、違反歴のない人たちには模範ライダーとして表彰もしています。これは組合レベルでは取り組んでいますが、ライダーに浸透するためには、ある程度の制度的な規制も必要だと思っています。
【イ・デホ】制度的な規制が必要だし、ある意味体系的な教育も必要なんですけど、実はバイクというのは、ちょっと言い方が悪いんですけど、免許を取るときは当然そうなんですけど、誰かにこれを正式に教えてもらったり、配達もそれを制度的に教育を受けたりすること、実は、そういうこはあまりないじゃないですか。
<パク・ジョンフン ライダー>そうですね。労働が外注化されるからこういうことが起こるのですが、昔は入社すると師授(=指導役)という人がいて、その次に職務教育というものがありましたよね。でも、プラットフォーム側としては、配達労働者が多ければ多いほど良いし、このように労働者が簡単に入社できて初めて早く配達ができるんですよ。昔は一人の熟練労働者に(するために)4~5件(の職務教育を)やっていたのが、最近はデリバリーアプリが1~2件しかやっていないじゃないですか。それ(プラットフォーム)には労働者がたくさん必要なんです。そうすると、そういう欲求、デリバリー労働者に対する職務教育や安全教育をしたいという欲求がなくなるんですね。結局、労働の問題です。
【イ・デホ】ある意味、その必要性も後々感じなくなる可能性もあるわけですよね。
<パク・ジョンフン ライダー>そうですね。
【イ・デホ】本当になんというか、配達代行業者もこのような体制を整えることは必要なのですが、どう見てもまたコストの問題でもあるのではないでしょうか?
<パク・ジョンフン ライダー>そうですね、配達代行というものが誕生したのは、飲食店の社長さんたちが配達のライダーを共用するために誕生したんですよ。
【イ・デホ】ある種の直接コストを下げながら。
<パク・ジョンフン ライダー>そうですね、5軒の飲食店が2人のライダーを共用して、配達を省くということなんです。だから、バイクも労働者が持ってきて一件ごとにして、この費用を実際上負担しないということです。ライダーの立場からすると、交通法規による信号取り締まりを強化し、罰則も強化すれば、ライダーはもっとゆっくり配達するんじゃないですか?この欲求、この利害関係と、配達業者が労働者を一人契約して早く配達したいという欲求がぶつかり合っているのです。それと、市民からの、安全にバイクが行き来してほしいという欲求がぶつかるわけです。だから道路の上で道路を工場として使う人たちと、職場として使う人たちと、共用で使う人たちの間で、これら3者の衝突が起こるのです。和解できないのです。どう見ても1件ごとにお金を稼がなければならない人もいるでしょうし、またたくさん配達をさせてまた収益を上げなければならない企業もあるわけです。

⑥アプリで注文すれば、どんな手続きを経て配達されるか?
【イ・デホ】私たちは、配達アプリを使うことが多いですが、これが果たしてどのような手続きを経て、どのような過程で私たちの家まで配達されるのかよく分かりません。もし良ければ、その過程を簡単に教えていただけますか?
<パク・ジョンフン ライダー>はい、「配達の民族」や「ヨギヨ」(アプリ)は、「チラシ」だと思ってください。飲食店の社長が作る「チラシ」です。私たちは、布団の中で携帯電話(のアプリ)を見て、つまり、紙のチラシを見ずに、注文をするわけです。そうですね、注文が来ると、レストランの店主のポスチャーに、例えば「配達の民族」の注文、こう表示されます。
【イ・デホ】レストランに届くのですね、
<パク・ジョンフン ライダー>社長は3つの選択肢があります。一つ目は、社長が直接配達する。そして2つ目が、自分が直接雇った労働者に配達をさせる方法があります。これはアプリで配達の注文だけ受けて、配達は直接雇った労働者に任せるというものです。3つ目は、配達ライダーに、直接雇って給料もあげたくないし、バイクもあげたくないし、保険料も負担したくない、そんな時に頼むのが配達代行です。
【イ・デホ】今日のように風が強い日は、バイクに乗っている方も危険ですよね。
<パク・ジョンフン ライダー>はい。私は今日ここに来るのに、西江大橋を渡って来ました。
【イ・デホ】今もバイクで来たんですか?
<パク・ジョンフン ライダー>はい、そうです。途中、風のせいで強制的に車線変更されたんです。それくらい、このように風が強い日には、クイックサービスの方、橋を渡っている方が大きな荷物を積んで行っても橋の上に行けないので、ガラスとか持って配達するんですよね。そういう時は警察を呼んで安全に行くのがいいですよね。それから、この街が工場なので、今、工場にものすごく危険な有害化学物質のような危険要素が入り込んでいるんです。こういう時は安全に無条件に仕事をするのがいいですし。配達だけでなく、屋外で働くすべての労働者が少し危険だと思います。

⑦徐々に直接配達する店が消える理由?
【イ・デホ】そうですね。特に今日のように風が強い日には、屋外労働者の方は特に注意しなければなりません。先ほど配達のどのような形態の雇用形態も話しましたが、以前はほとんど直接雇用が多かったでしょう。中華料理店ももちろん、様々な食堂でも。しかし、食堂で直接雇用してバイクを置いて直接配達する場合がほとんどなくなっています。なぜでしょうか?
<パク・ジョンフン ライダー>コスト削減が最も大きな問題です。このように見てください。配達の民族とヨギヨは広告会社です。だから広告会社の目的は何かというと、全国にいる自営業者がこのプラットフォームに入るようにすることです。
【イ・デホ】たくさん使うように。
<パク・ジョンフン ライダー>そうですね、そうすると、全国にあるお店がこの広告に入ってきたら、この配達をこなせるライダーは、直接雇用では対応できないんですね。配達をしていなかったお店を営業するには、配達は代行で使ってくださいという配達代行システムが必要になって、その人手が無尽蔵に必要になるので、外注化のスピードがものすごく加速したわけです。でも、まだ直接雇用が有利な業種もあります。例えばピザのような場合は、配達が非常に難しい食べ物なので、直接雇用が安定していて、直接雇用した場合、配達代行ライダーのライダーに比べるともう少し愛社精神を持って働くことになるので、直接雇用が必要な企業が一部直接雇用して労働者を使うという形も残っています。

⑧配達代行業は多くなるが、なぜ配達費は上がるのか?
【イ・デホ】配達代行アプリもそうですし、配達代行業者もそうですし、数え切れないほどたくさんできたと思います。しかし、私たちがよく知っているのは、競争が激しくなれば当然供給が増え、価格は下がるという需要と供給の法則を知っているのに、消費者が支払う配達料はほぼ1万ウォンを超え、2万ウォンを目指すこともあります。もちろん、これは特殊なケースでしょうが、なぜ配達代行業者は増えるのに、配達料は下がらないのでしょうか?
<パク・ジョンフン ライダー>プラットフォームがお互いを透明に中継すると勘違いされることが多いのですが、プラットフォームの関係性を見ると、プラットフォームと飲食店が独占的に関係を結び、プラットフォームが消費者に一部の情報だけを公開し、ライダーにも一部の公開をします。だから、消費者が使うアプリとライダーが使うアプリが全然違うんです。
【イ・デホ】そうですか。
<パク・ジョンフン ライダー>だからプラットフォームが消費者には、つまり、自営業者には6000ウォンを払って、配達ライダーには3000ウォンか2500ウォンを払うのに、この情報を知ることができないんです。
【イ・デホ】ああ、それを知ることができないんですか?
<パク・ジョンフン ライダー>そうです。消費者も知らないし、自営業者も知りません。ですから、私たちが時々食べ物を取りに行くのに遅れると、飲食店の社長が「私が6000ウォンも払うのに、なぜこんなに遅く来るのか」と怒るのですが、その時、私たちがこのように画面を見せながら、「社長、私たちに6000ウォンは払いません。プラットフォームがリアルタイムで勝手に払います」と説明するのです。だから、消費者の立場からすると、自分が支払う配送料がライダーに渡ると信じているのですが、実際にはそうではないのです。この情報が不透明であることが核心的な問題であると言えます。
【イ・デホ】つまり、消費者が支払う配達料がいくら上がっても、それが全部ライダーに行くわけではなく、そのうちどれくらいが戻ってくるのかも分からない。
<パク・ジョンフン ライダー>そうです。比較的、近所の配達代行業者はまだ分かるのですが、これも近所の配達代行業者の社長が勝手に手数料を決めるので透明性がない部分があります。分かっても介入できない部分があり、AIで決定する配達アプリのような場合は知ることができない、情報を知ることができない盲点があります。
【イ・デホ】AIですか?
<パク・ジョンフン ライダー>配達会社はAIと主張していますが、それがAIができるのかと思います。
【イ・デホ】しかし、どうやら最も最適化された最も速く最も多く配達できるアルゴリズムを組んで、このようにコールを撒いてくれるようなものでしょう。
<パク・ジョンフン ライダー>そうですね。例えば、今この時間に4000ウォンで配達を提案したとき、うまくいかなかったら3500ウォンで下げるでしょうし、3500ウォンを与えても配達ライダーがよく捕まえてよく配達して、じゃあ3000ウォンで下げるでしょうし、これがダメだと言ったら500ウォンずつ上げるとか、100ウォンずつ上げるというようにするでしょう。これがAIと言いますが、AIというよりは、配達アプリが価格を調節することができる最適なシステムだと見ることができます。
【イ・デホ】ある意味、同じような繰り返しで日曜日の前なら夕方、同じ時間、同じような場所で配達しても、私が払う金額はその時その時でまた変わるし、その原理も分かりにくいんです。
<パク・ジョンフン ライダー>そうなんですよ。だからずっと思うんです。メディアでは5、600万ウォンと言いますが、私は今なぜ3000ウォンを1件配達しているのか?という自愧(自ら恥ずかしく思うこと)の念が湧いてきます。
【イ・デホ】また、これは多くのリスナーの方が疑問に思うでしょうが、料理を1回頼むとき、例えば週末の夕方にたくさん人が集まる時間帯ならそうなんでしょうけど、そうでない時間帯でも、通常30分で来るはずなのに、4、50分かかる場合も多々あるんです。

ライダーユニオン初代委員長へのインタビュー ⑨ ⑩ ⑪       ここをClink

⑨食事時間じゃない時も配達に時間がかかる理由?
【イ・デホ】では、これは配達の構造上の問題があるのでしょうか?
<パク・ジョンフン ライダー>そうですね。先ほどライダーを共用していると言いましたが、そのライダーが必ずしもそのお客さんの注文を早く取って配達しなければならない理由はありません。例えば、他のお店の注文を取っているかもしれませんし、AIがもっと配達を取りに行ったかもしれません。近所の配送業者さんなんかは、まとめて配送ということで、複数件、あるいは3件、4件まとめて配送するのですが、運が悪ければ動線上、一番最後に配送することもあります。そして、このまとめての配送で大事なのは、先の配送でバイクが立ち入り禁止の場所だったり、お客さんが不在だったり、お客さんがシャワーを浴びたり、外出したりした場合は遅れるんですよね。そうすると、前の配達が遅れると、後ろの配達も遅れることになるわけです。
【イ・デホ】しかし、単品で配達して、まとめて配達すると、消費者の立場からすると、もう少しまとめて来て、このライダーが一箇所ではなく、3、4箇所まとめて持ってくると、1、20分遅れた分、価格も安くなるはずなのに、それが、実感できないですよね?
<パク・ジョンフン ライダー>そうですね。これが消費者の立場では理解できないと思いますが、これが自営業者が支払う配達料というものがあります。その中で自営業者が消費者に全額を負担させるか、それとも無料で配達をさせるかによって自営業者が選択できるようになっています。つまり、例えば飲食店が配達代行業者に1.5km以内は4000ウォンを払わなければならないと言ったら、3000ウォンを消費者に転嫁して自分は1000ウォンだけ払う場合もあれば、4000ウォン全額を負担して無料にする場合もあります。
【イ・デホ】それは店主の選択ですか?
<パク・ジョンフン ライダー>経営上の判断ですよね。
【イ・デホ】私が相対的に顧客のサービスをもっとするのか?私が配達料を。店主の立場で節約して消費者に転嫁するのか?
<パク・ジョンフン ライダー>だから、消費者の立場では到底理解できませんが、店主の立場では経営上の判断なのですが、ここで気をつけなければならないのは、配達料が無料だとメニュー価格に溶け込むこともあります。
【イ・デホ】そうです。食べ物の値段にそのまま反映してしまうこともありますからね。
<パク・ジョンフン ライダー>ですから、そういうことにストレスを感じることを超えていくためには、とにかく配達にかかるコストがタダではないということに対する同意の基盤が必要で、次に真ん中に持っていく人が誰なのかということについて、私たちライダーユニオンのような労働組合と市民が一緒に考えてみてほしいということを申し上げたいと思います。
【イ・デホ】それから、企業もプラットフォーム投資をたくさんしたから、人工知能がいわゆるコールを割り振ってくれるとおっしゃっていましたが、そういう投資をするから利益を取るのは当然なのですが、ちょっとそれが不合理なところがあると、もしかしてお考えでしょうか?
<パク・ジョンフン ライダー>まず広告の面では不合理ですし。

⑩配達プラットフォームの不合理性?
【イ・デホ】広告の面ですか?
<パク・ジョンフン ライダー>だから、仲介業、配達のような場合は仕方がないんです。配達は人間の労働に頼るしかないので、ある程度値段が上がるのは仕方がないんですが、仲介手数料は広告料で、消費者が飲食店に注文するたびに6.8%ずつ取っているじゃないですか。ここで利益を得ているんです。そして、配達の場合は、以前、コロナでライダーが集まらないということで、配達料を上げたことがあります。だからといって、今すぐ配達料を大幅に下げるとか、そういう状況ではないので、この適正価格がいくらなのかということを一緒に考える必要はあるんですよね。
【イ・デホ】もしかしたら、いろいろなこと、特に私たちが安全の話から産業構造の話も総合的にやっているのですが、先ほど、配達工場という表現を使っていただきました。

⑪巨大な配達工場、代案はないのか?
【イ・デホ】そして、何かちょっと危険物を抱えて走るようなものとも表現していただきましたが、もしかしたら何か代替案というものがあるのでしょうか?安全性の面でも、あるいは収益構造の面でも。
<パク・ジョンフン ライダー>私たちがちょっと考えているのは、これが時間給を保証してもらわないと、これがスピードを落とすのが難しいということがあって。
【イ・デホ】時間給ですか?
<パク・ジョンフン ライダー>そうです。今は件当たり制なので、ある程度の時間給が保証されないと、誰が早く来いと言われなくても早く走るしかないんです。だから、携帯のアプリに、地域の上に値段が書いてあるんです。例えば麻浦区を3つに分けて、麻浦区1いくら、麻浦区2いくら、麻浦区3いくら、こうなっています。そうすると、ライダーは、まずこのお金をくれる人が賃金の持ち主であり、所得を上げるわけです。
【イ・デホ】一番高く出たもの。
<パク・ジョンフン ライダー>そうですね。つまり、労働生産性の良い人が所得を多く得るわけですよね。しかし、労働生産性が良いというのは、時間内に配達件数を多くする人であり、乱暴な運転をする人です。そうすると、この労働生産性を下げなければならないんです。労働生産性を下げることに企業が同意するのか?これがポイントなんです。だから、この問題が一つあって、二つ目は、今は誰でもライダーをやれるので、仕事が確保できなかったときの恐怖が大きいです。だから、仕事が確保できるときにできるだけ多く配達をしなければならないんです。ライダーの立場からすると。だから安定した収入が保証されないので、ある程度の資格制限が必要な状況です。それから、配達業をされている社長さんも登録制にして、違法に仕事をさせたり、無保険のライダーに仕事をさせたりすると、罰則を与えて事業をできないようにする規制が必要なんです。
【イ・デホ】無保険のライダーを区別することはできますか?自営業の方が?
<パク・ジョンフン ライダー>自営業の方はできませんが、この会社で確認することはできます。会社で、代理店で。代理店から、例えば有償運送保険証券を見せろ、証書を見せろと言われたら、その人だけアプリにアクセスできるようにすればいいんです。つまり、事実上、プラットフォーム会社ができるわけです。
【イ・デホ】でも今、無保険のライダーがいるということは、その代行業者がそれをきちんと確認していない証拠でもありますよね。
<パク・ジョンフン ライダー>今、それを確認する業者が「配達の民族」と「ヨギヨ」ですが、ここも総合保険を確認するのではなく、責任保険だけを確認しています。「クーパンイーツ」は保険の確認をしません。そうなんですか、だから無保険のライダーが主に「クーパンイーツ」に行くんです。近所の配達代行会社は、運転免許証もきちんと確認せず、競争が激しいので10代に仕事をさせる場合もあります。
【イ・デホ】話にならなりませんね、10代にですか?それも確認できていないし、確認しようとしないんですか?
<パク・ジョンフン ライダー>運転免許がないなら、後でゆっくり(バイクに)乗れって、地域とかの場合は。なぜなら、近所の配送業者同士の競争が激しいから、ライダー確保競争があるじゃないですか。早くライダーを確保しないといけないから。だから、無資格のライダーをさせるわけです。
【イ・デホ】そうするといけないのに、それを早く淘汰できるシステムが機能しなければならないということですね。
<パク・ジョンフン ライダー>そうです。一番簡単なのは、まず免許から。
【イ・デホ】そうですね、
<パク・ジョンフン ライダー>それは当然のことで、そういうのは当然のことで、免許から確認する必要があります。ある程度のキャリアがある人にだけ営業用の免許を与えるという方法もあります。今は先ほども言いましたが、車の免許さえあれば、すぐに飲食の配達ができますからね。二輪車で。
【イ・デホ】ここから規制が必要ですね。本当にどう見れば、ライダーの方々の苦労も現実的に大変なこともたくさんあるでしょうが、先ほどユン・ソンビンさんのメッセージのように、安全も大事なのに、歩道で走行したり、信号違反したり、逆走したり、タバコの吸い殻を無断投棄したり、こういうことをやめてほしいと思います。そうすれば、市民の皆さんもライダーの味方になって、ちょっとこうして権益の向上とかを手伝ってくれると思うのですが、何度もうちのアパートの歩道でオートバイに乗っていると、ちょっと気持ちが悪くなっても、なぜまたあんなことをしているんだろう?一緒にキャンペーンをする必要はありますね。
<パク・ジョンフン ライダー>私たちも同意します。だから私たちが毎年安全キャンペーンをするんです。それで主に去年重点的にやっていたのが、横断歩道を渡るときは降りてドラッグしよう、これをドラッグバーと言います。はい、ドラッグバー、つまり、バイクを引っ張って行くということで、これはある程度定着している状況です。だから一つ一つ自浄努力をするつもりです。そういうライダーがライダーの間でも排除されるように、資格制とか規制が必要だということをもう一度申し上げたいと思います。
【イ・デホ】私も以前は横断歩道でバイクを引っ張って行く人たちを見て、なぜあんなことをするんだろう?と不思議に思っていました。今はそれが当たり前の時代になったようです。それだけ意識レベルが上がったようです。今日はパク・ジョンフンライダーと一緒に話を聞いてみました。
<パク・ジョンフン ライダー>どうも。ありがとうございます。

 プラットフォーム労働者の組織・団結の進展

配達プラットフォーム労働組合(民主労総サービス連盟)

 民主労組の産業別組織の一つであるサービス産業連盟は、2019年7月、「配達労働者組織事業団」を構成し、配達労働者の労働組合建設のために多様な努力をすることになりました。主なものとして、ライダーのための安全教育、臨時憩いの場、コーヒー・カー提供などの工夫が重ねられました。そして、2019年12月、「配達の民族」の配達代行子会社である「優雅な兄弟たち」と「優雅な青年たち」に政策協議と団体交渉を初めて要求しました。そして、2020年2月、ソウル地方労働委員会で民主労総サービス一般労働組合が「代表交渉労働組合」との決定があり、団体交渉の当事者として合法的地位を得ることができました。そして、2020年4月、会社側(優雅な青年たち)と団体交渉のための顔合わせが行われ、これが団体協約締結への第一歩となりました。2020年10月23日、歴史的な団体協約が初めて締結されました。
 他方、2020年5月、サービス一般労組の正式「配達の民族(ベミン)支会」が創立され、現在、サービス連盟の傘下組織として「配達プラットフォーム労働組合」が結成されています。以下は、配達プラットフォーム労働組合のサイトにある、ホン・チャンイ委員長の声明です。

 配達プラットフォーム労働組合委員長ホン・チャンイです。
 配達プラットフォーム労働組合は、2019年民主労総サービス連盟で配達プラットフォーム労働者の劣悪で不平等な労働環境を改善するために始まりました。
 「会社で一方的に政策変更をするがどこにも話す場所がない」
 会社側との意思疎通構造を作りたいという率朴な要求から始め、配達プラットフォーム企業との最初の団体協約締結及び社会的対話協約締結、配達共済組合の設立、産災専属性の廃止など配達労働者の現実を変えています。
 私たちはここで満足するのではなく、「安全で堂々と」という労働組合のスローガンに合うように働き、自己で死ぬことなく働くことができる権利を闘い取り、そして配達労働者に対する社会的認識を通じてもはや無償労働でない正当な労働の対価を受け取るようにしなければなりません。
 配達プラットフォーム企業は、私たちに対する責任を避けるために労働者として認定しないでいます。
 そのために産災保険(労災保険)も、雇用保険も(労使)折半ずつです。
 私達は配達する機械ではありません。配達する労働者です。
 人間らしく生きるために、私たちの力を大きくして私たちの権利を勝ち取らなければなりません。
 その道で最先頭に立とうと思います。
                   闘争!

 2021年には、「パワハラ・アパート(マンション)問題」解決の取り組みが広がりました。これは、配達労働者が一部のアパートで不便を強いられたり、危険な配達環境にさらされる問題です。一部のアパートが、食べ物の臭いがすると言って一般エレベーターの利用を禁止して徒歩で配達することを強制したり、安全を理由にダウンジャケット(パディング)やヘルメットを脱ぐように要求したりするなどのパワハラを指しています。このパワハラは、配達労働者の業務を妨害し、収入を減少させ、事故や病気のリスクを増加させ、人権を侵害する問題として議論されました。同年2月、パワハラアパート問題解決のための記者会見、国家人権委員会提訴が行われ、2021年4月26日、宅配・配達・クイック労働者が「パワハラアパート」共同対応宣言を発表しました。
 2021年には、「配達の民族」との賃金交渉が重要な取り組みとなり、ストライキ(3月19日~4月1日)が行われ、2021年12月、賃金交渉で暫定合意に至りました。その後、2022年、2023年と、配達の民族を相手とする団体交渉、ストライキが継続しています。

ライダーユニオン(公共運輸労組)

 ライダーユニオンは、2019年5月1日のメーデーの日に発足した、韓国で初めての配達ライダーによる労働組合です。二大労総(韓国労総と民主労総)のどちらにも加入しない「独立組合」として出発することになりました。ライダーユニオンは、ソウル市内で働く配達ライダーを中心に構成されており、初代委員長は、前述のパク・ジョンフンさんで、2023年3月現在の組合委員長はク・ギョヒョンさんが務めています。組合の目的は、配達ライダーの安全で公正な労働環境の実現を目的に、労働者の権利と福祉を保護するために多様な運動と闘争を繰り広げてきました。
 ライダーユニオンは誕生以来、着実に組合員を増やして、最初は約50人で発足しましたが、2021年10月現在、組合員は約1,500人に達しています。2020年11月には、組合設立届出証を交付され、合法的な労働組合として定着することになりました。
 ライダーユニオンは、組合員の意見を集約し、労働条件を改善し、労働権を伸ばすために、これまでに多くの成果を獲得してきました。
 また、2020年10月6日、「プラットフォーム労働代案を用意するための社会的対話フォーラム」で配達サービス社会協約の締結に参加しました。この協約は配達プラットフォーム企業が配達運転手を事実上労働者と認定し、労働組合を正式労組と認定し、安全で公正な配達サービス運営のために協力することにしたものです。(詳しくは、次回のエッセイ第81回参照)

2023年6月29日、産災(労災)保険料が、実質的に従来より1.4倍の引上げになると反対を訴えるライダーユニオン組合員。

 そして、ライダーユニオンでは、2023年3月24日から28日までに行われた組合員総投票の結果、民主労総「公共運輸労働組合」への加入議案が94%の賛成で可決されました。その結果、ライダーユニオンは、従来の独立組合でなく民主労総公共運輸労組傘下の「ライダーユニオン支部」に編入されることになりました。新指導部は、労災保険の拡大、配達アルゴリズムの公開、公共的な産業管理などを公共運輸労組の運動につなげるために努力するという立場を示しています。
 民主労総に加入した理由については、次のように説明されています。すなわち、「コロナ禍で政府と企業は必須労働者だと宅配労働者を称賛したが、今は宅配労働者の生存問題に政府が何の対策も出していない」「公共運輸労組には物流業界の労働者と不安定労働者が多数加入しており、彼らと連帯してこの状況を変えなければならない」というのが組合員の判断である説明されています。そして、選出された第3期指導部のク・ギョヒョン委員長は、「もともと不安定だった配達労働環境が、パンデミックの時期にさらに後退している状況」であり、「最近、政府発の労働組合を嫌悪する感情にもかかわらず、圧倒的な賛成が出たのは、規模を拡大し続けるプラットフォーム企業に対し、配達労働者の安全と権利を保障されるために連帯しなければならないという判断があった」と表明しました。(ハンギョレ 2023.3.29
 ライダーユニオンが、類似のプラットフォーム労組があり、同じ民主労総の「サービス連盟」でなく、「公共運輸労組」に加入した点については、疑問が生じます。とくに、サービス連盟には、最大手の配達プラットフォーム企業「配達の民族(ベミン)」を相手に対抗する配達ライダー労組があり、既に「配達の民族」という配達プラットフォーム企業と団体協約を締結し、組合活動が主に「配達の民族」で働くライダーを中心としています。これに対して、ライダーユニオンは、個々のプラットフォーム企業との団体協約を追求するのではなく、どんなプラットフォームで働いても区別なく、すべてのライダーを組合員として受け入れようとしている点でサービス連盟とは異なる組織戦略を意識していると考えられます。
                                         (第81回につづく)

 韓国プラットフォーム労働に関する日本語の文献・情報

この記事を書いた人