原発の緊急安全対策を進めて「安全宣言」を早期に行うことで既設の原発からの電力供給を確保し、2030〜50年には「世界最高レベルの安全性に支えられた原子力」を3本柱の一つとするとした、経済産業省の今後のエネルギー政策に関する内部文書が6日、明らかになった。
14基の原発の新増設を盛り込んだエネルギー基本計画を含め、菅直人首相が政策の白紙からの見直しを表明、中部電力浜岡原発の停止を要請するなど、これまでにない政策を進める中、従来の原発重視を堅持する方針を早々に打ち出したことには今後、各方面から批判が出るのは確実だ。
文書は、東日本大震災を受けた現行のエネルギー政策の課題に関するもの。事故で「原子力の安全確保に大きな疑問符」がついたとの判断から、「原因の徹底究明と安全規制の抜本見直しを進め、将来のエネルギーとしての適格性を判断する」としながらも「今後のエネルギーのベストミックス」の一つとして「安全性を最大限追求した原子力」を掲げた。
その上で、30〜50年に向けた長期的なエネルギー政策の3本柱の一つとして、太陽光発電などの再生可能エネルギーの拡大、ライフスタイルや産業構造の改革による省エネルギーの実現とともに「世界最高レベルの安全性に支えられた原子力」を据える考え方を示している。
また、定期検査で停止した原発が再稼働できない状態が続くと、今後1年間で全国すべての原発が停止して地震直前に比べて3千万キロワット以上の供給力が失われると電力危機を強調。「緊急安全対策の徹底(安全宣言)により、既設炉からの電力供給を担保」するとの方針を示した。
再生可能エネルギーについては今後拡大する方針を示したものの「太陽光発電のコストは原子力の約7倍」「電力の安定化対策として蓄電池の大量導入など年間数千億円が必要」など、これまでの評価の記述をほぼ踏襲している。