米ニューヨーク(New York)のウォール街で始まった反企業デモが全米各地に広がりをみせている。参加者たちは中東の革命に触発されたと述べているが、その実態は経済的な不平を訴えるスペインなど欧州各地での抗議行動の方に近い。
反資本主義活動家たちが最初に小さな公園で寝袋を広げ、手作りのプラカードを振りかざした2週間前、彼らはエジプト・カイロ(Cairo)のタハリール広場(Tahrir Square)での抗議行動に追随したのだと語っていた。しかしタハリール広場のデモより参加人数はずっと少なく、政権打倒を企てている者もいないし、治安部隊に発砲される危険性もゼロだ。
抗議デモの拠点となっているマンハッタン(Manhattan)のズコッティ公園(Zuccotti Park)にいる人に何に対して抗議しているのかと尋ねると、大手金融機関を救った米政府の対応、失業、学資ローン、地球温暖化、警察の暴力などさまざまな答えが返ってきた。この公園で抗議行動のオーガナイザーをしているアンソニー(Anthony)さん(28)は、「ここに来ている人たちはみな、それぞれの目的を持っているのさ」と言う。
■3週目に突入、各地に広がる抗議デモ
10月3日に3週間目に突入した抗議行動「Occupy Wall Street(ウォール街を占拠せよ)」は、真剣に受け止められ始めている。同様の座り込みデモはボストン(Boston)からシカゴ(Chicago)、そしてロサンゼルス(Los Angeles)でも勃発し、ニューヨークでの抗議デモも今週、労働組合からの支援でふくらむ見通しだ。
参加人数が増えるに連れ、米国の抗議デモは真の抗議運動と呼べるものに近づくかもしれない。ロサンゼルスでは1日から約300人がデモに参加している。ボストンでは100人近くが泊まり込みのキャンプをしている。約50人が11日間泊まり込みを続けるシカゴの金融地区では、デモ参加者の抱える不満はニューヨークと同じくらい多様だが、一方で決意も強い。
「私たちの世代はベトナム戦争で路上に繰り出し、物事を変革した。同じことがここで起きている。いつだって最初のうちは小規模だけど、時間がたてばわかるよ。すべての偉大な運動は、何もないところから始まった」と、若者が大半を占めるデモ隊のために水や食料を持ってきたエレナー・バックリー(Eleanor Buckley)さん(61)は語る。
■マスコミも無視できず
3日には、世界トップクラスの大富豪ジョージ・ソロス(George Soros)氏さえ、ウォール街の金融機関が多額のボーナスを支給したことが抗議デモを誘発したと指摘し、「私は彼らの観点に共感できる」と語ってデモ参加者たちへの支援を表明した。
ウォール街の抗議デモは、座り込みが始まった当初は報道されることがほとんどなかった。だがこれからは違う。たとえ、彼らが自分たちの目標を定義するのが難しいとしても。「無視することは不可能になってきている。そして私たちはまだここにいる」とズコッティ公園のアンソニーさんは語った。(c)AFP/Sebastian Smith