12月12日(ブルームバーグ):44歳の男性タイリー・ジョンソンさんは米マクドナルドの洗面所で固形せっけんで体を洗い、清潔な香りをまとった。衣料品メーカー、ケネス・コールのバッグに洗面用具を持ち歩いている。このバッグは百貨店メーシーズで働いている母親からの贈り物。ジョンソンさんはその後、電車に飛び乗った。次に向かうのもマクドナルドの別店舗だ。
ジョンソンさんはシカゴで多く見られるファストフード店にたむろするホームレスではない。マクドナルド2店舗で働く従業員だ。衛生状態と外見が年収査定の項目に含まれるため、さっと体を洗うことが必要になる。勤務前にせっけんで何度洗っても職場に漂う脂肪食品の臭いを取り除くのは難しいという。「臭いがするから昇給は無理だと女性ボスに言われたくない」と話す。
ジョンソンさんはシカゴ北部にあるアパートの賃貸料を支払うため2カ所で働く必要がある。マクドナルドで勤務して20年になるが、週40時間労働できず、時給はイリノイ州の最低賃金である8.25ドル(約690円)。
これが、米国で最も目覚ましい成長を遂げる業界で働く従業員の実態だ。2009年6月に景気回復が始まって以降、ファストフード業界の雇用は米国平均の2倍以上のペースで増加した。雇用を生み出しているバーガーキング・ワールドワイド、「ピザハット」や「KFC」などを運営するヤム・ブランズなどの従業員の給与は米国の最低水準にとどまっている。例外は経営幹部の報酬だ。
100万時間
ファストフード業界では従業員と最高経営責任者(CEO)との報酬格差が広がっている。ブルームバーグが集計したデータによると、マクドナルドでは格差が過去10年間で2倍に拡大。一方で、同社は最低賃金引き上げに反対するロビー活動に資金提供し、最近シカゴやニューヨークで活発になっている労働組合結成の動きを抑え込もうとしている。
米国勢調査局の現況人口調査によれば、ジョンソンさんのような年齢の高い従業員がファストフード店の調理担当者として勤務するケースが増えている。10年には調理・サービス担当従業員に占める16−19歳の割合は17%と、2000年時点と比較して約25%減少した。年齢の高い不完全就業者がこれらの仕事に就いているためだ。
米マクドナルド:店員の時給8ドル、CEO年収は875万ドル
Bloomberg 12月13日(木)11時29分配信
マクドナルドが昨年、前CEOのジム・スキナー氏に支払った報酬875万ドル(約7億3000万円)をジョンソンさんが稼ぐには約100万時間、100年以上勤務する必要がある。バーガーをひっくり返し、フライドポテトの箱を手にするジャクソンさんの仕事と同様の勤務に低賃金の業界で数百万人が携わっている。こうした低賃金業界の雇用増加は、07−09年のリセッション(景気後退)終了後に所得格差が拡大した一因になっている。
原題:McDonald’s $8 Man Serving $8.75 Million CEO Shows Pay-GapSurge(抜粋)
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Leslie Patton