人権を保障する多国間条約の履行状況を審査する国連の社会権規約委員会が日本政府に対し、長時間労働や過労死の実態に懸念を示したうえで、防止対策の強化を求める勧告をしていたことが23日、分かった。
外務省によると、国連の関連委員会が過労死問題に踏み込んだ勧告を日本に出すのは初めて。今回の勧告に法的拘束力はないが、対策の実施状況について定期的な報告を求められる。
勧告は17日付。多くの労働者が非常に長時間の労働に従事し、過労死が発生し続けている」と指摘し、「長時間労働を防ぐ措置を強化し、労働時間の制限に従わない事業者らに対し予防効果のある制裁を適用する」よう強く求めている。
勧告について厚生労働省は「尊重する義務がある。内容をよく確認したい」(国際課)としている。
国際法学者で国際労働機関(ILO)専門家委員会の委員長を務める横田洋三・法務省特別顧問は「国連の各種委員会は10年ほど前から、日本の過労死や過労自殺を問題にしてきた」と指摘。勧告条約に違反した締約国への最も強い措置の一つ。労働環境が改善しない日本への国連のいら立ちを示したものといえる」としている。