派遣労働者「人を替え何年でも」案提示

NHKニュース 2013年12月12日

企業が派遣労働者を受け入れる期間について、厚生労働省の審議会は、一つの業務で3年を限度としていたこれまでの制度を見直し、労働組合などの意見を聞けば、事実上、何年でも受け入れ続けることができるようにする案を示しました。

経済団体の代表はこの案を支持しましたが、労働者の代表は派遣の乱用につながると反発しています。

これは労使の代表が参加する厚生労働省の審議会で12日、示されました。

それによりますと、現在、企業が派遣労働者を受け入れる場合、一つの業務で最長でも3年までに制限されていますが、労働組合など従業員の代表の意見を聞けば、受け入れを続けることができるようにするとしています。

派遣労働は一時的、臨時的な働き方と位置づけ、1人当たりの受け入れ期間は3年までに制限するとしていますが、人を替えれば事実上、何年でも派遣を受け入れられるようになります。

この案について労働組合の代表は「派遣の乱用につながるもので、それを防ぐ仕組みも整備されていない」として反発しました。

経済団体の代表はこの案を支持し、「今後は派遣労働者のキャリアアップを促す取り組みに力を入れたい」と述べました。

厚生労働省は労働者派遣法の改正案を来年の通常国会に提出することにしていて、年内にも労使の意見をまとめる方針です。

期間制限を業務ごとから労働者ごとに

これまで企業が派遣労働者を受け入れることができる期間は一つの業務で最長3年とされていました。

派遣労働は一時的、臨時的な働き方で、正社員の仕事が派遣労働者で代用される、いわゆる「常用代替」を防ぐためです。

今回の見直しの案は、派遣期間の制限をこれまでのような業務ごとではなく、労働者個人ごとに変更しようというもので、3年ごとに働く人を替えれば継続的にその業務を派遣労働者に任せることができるようになります。

経済団体は、「これまでの仕組みは煩雑だったので、見直しで派遣労働者も働きやすくなるはずだ」としていますが、労働組合などからは「派遣は一時的、臨時的な働き方だという原則が崩れる」と反発が強まっています。

12日示された案では、派遣労働者のキャリアアップにつなげる研修や教育訓練を行うよう派遣会社に義務づけることも盛り込まれています。

通訳など専門26業務の廃止

今回の見直しでは、通訳やソフトウエア開発、それに秘書など、いわゆる「専門26業務」の枠組みを廃止する方針も示されています。

これらの業務は、高度な専門知識や技術が必要なため常用代替のおそれが少ないとされ、派遣期間に制限は設けられてきませんでした。

専門26業務として働いている人はおととしの時点で64万人と、派遣労働者全体の47%を占めています。

しかし、企業などから「26の業務の中にはパソコンの普及などで専門性が高いといえなくなったものも含まれているうえ、専門業務に当たるかどうか判断が難しい」といった声が上がり、ことし8月、有識者による研究会は「分かりやすい制度に改めるべきだ」と指摘していました。

特定派遣を許可制へ

さらに、地域の労働局に届け出るだけで開業できる「特定派遣事業」を廃止し、一定の資産があり講習を受けないと開業が許可されない「一般派遣事業」に移行させることも検討されています。

特定派遣事業は、派遣する労働者全員を自分の会社で1年以上継続して雇用する場合に認められますが、実際には短期間の雇用契約を繰り返したり、禁止されている建設業務への派遣を行ったりする違反が相次ぎ問題となってきました。

特定派遣事業の業者は、おととしの時点でおよそ6万3000と一般派遣事業の3倍余りに上り、そのほとんどが中小零細の業者とみられています。

特定派遣事業を廃止することについては、労使ともに異論は出ていませんが、一般派遣事業として許可を得るには資産2000万円以上という条件があるため、経済団体からは条件を緩和するよう求める声が上がっています。

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