教職員過労死 公立校、10年で63人 専門家「氷山の一角」

毎日新聞 2018年4月21日 東京朝刊 https://mainichi.jp/articles/20180421/ddm/001/040/109000c

過労死と認定された公立校の教職員が2016年度までの10年間で63人に上ることが、地方公務員災害補償基金(地公災)への取材で明らかになった。教職員の長時間勤務が問題となっているが、政府は過労死の数を把握しておらず、認定された数が公になるのは初めて。専門家は「他業種との比較は難しいが、認定申請すらできずに泣き寝入りしている遺族も多く、認定されたのは氷山の一角。政府は早急に実態を把握すべきだ」と指摘する。(3面にクローズアップ)

毎日新聞は47都道府県と20政令市にある地公災の全支部に対して1月にアンケートを実施。業務での過重な負荷による脳・心疾患が原因で死亡、または精神疾患で自殺したとして、07〜16年度の10年間に公務災害に認定された公立の幼稚園、小中学校、高校、大学などの教職員や教育委員会職員の数を尋ねた。

この間に認定申請があったのは92人で、認定されたのは63人。申請から認定までは1年以上かかるのがほとんどで、63人には07年度以前の申請分も含まれる。

支部別で認定が最も多かったのは東京都の8人で、神奈川県6人、宮城県5人、大阪府4人と続いた。大半の支部が性別や死亡の経緯を「個人情報の保護」を理由に伏せる中、東京都は内訳を小学校教員5人、中学校教員2人、高校教員1人で23〜57歳、神戸市は中学校の52歳の男性教頭1人だったと明らかにした。

公務災害補償は、民間労働者が対象の労災とは制度が異なるため、厚生労働省が毎年公表する過労死件数には含まれない。政府は昨年12月、過労死した教職員の人数を尋ねた立憲民主党の長妻昭衆院議員の質問主意書に対し、「発生件数について網羅的に把握していない」とする答弁書を閣議決定している。

文部科学省の3年ごとの調査によると、死因は公表されないものの、在職中に死亡した公立校の教員は09年度以降、400〜500人で推移している。

別の調査では16年度に中学校の教員の6割、小学校の3割が過労死ライン(時間外勤務月80時間)を超えて働いている実態が判明した。

教員の労働問題に詳しい樋口修資・明星大教授(教育学)は「学校では勤務時間の把握が遅れているため、公務災害の認定申請をするのも難しいのが実情だ。政府は教員の働き方改革を進めるなら、長時間勤務の最悪の結果である過労死の実態をまず把握すべきだ」と話している。【伊澤拓也】

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