日本経済新聞 2018/6/1
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO31259760R00C18A6CC1000/
定年退職後の再雇用で賃金を大幅に下げられたのは不当だとして、運送会社の嘱託社員の運転手3人が正社員の賃金との差額を支払うよう会社に求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は1日、正社員と非正規社員の賃金格差が不合理かどうかは、給与や手当など各賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきだとの初判断を示した。
最高裁判所に入る長沢運輸の嘱託社員ら原告団(1日午後、東京都千代田区)写真省略
そのうえで、定年後の再雇用で給与や手当の一部、賞与をカットしたのは不合理ではないと認定。他方、一部の手当については相当額を支払うよう会社に命じ、さらに別の手当について審理を高裁に差し戻した。
訴えていたのは運送会社「長沢運輸」(横浜市)の嘱託社員の運転手3人。3人は正社員として勤務して定年退職した後、会社と有期雇用契約を結んだ。運転する車両や仕事内容、労働時間は定年前と同じだが、車両の大きさに応じて支払われる職務給や複数の手当、賞与などがカットされ、年収が定年前から2〜3割程度減った。
一審・東京地裁は「仕事内容が同じなのに賃金が異なるのは不合理」とし、正社員との賃金の差額を支払うよう会社に命じた。
二審・東京高裁は「仕事内容が同じでも、定年後の再雇用で賃金が減らされるのは一般的であり、社会的にも容認されている」とし、原告側の訴えを退ける逆転判決を言い渡した。