過労死相談20年、残業→リストラ→非正規と変化

2008年6月14日 朝日新聞 朝刊

 働き過ぎを強いられている人たちやその家族の叫びを受け止める電話相談「過労死110番」の活動が20年を迎えた。働き盛りが残業を重ねたバブル全盛の80年代末、リストラや就職氷河期のしわ寄せが中堅・若手を苦しめた90年代、派遣社員が「心の病」から自殺する00年代。相談内容は、時代の流れとともに移る労働現場の過酷な実態を映す。14日には通算27回目の全国一斉110番を実施する。

 88年4月、大阪の弁護士らでつくる「大阪過労死問題連絡会」が開始。2カ月後に全国規模で初めて実施した。電話相談は29都道府県に広がり、20年間の相談数は9101件。死亡例はうち3389件にのぼる。労災補償に関する相談8150件を年齢別に見ると、40代が最多の20.6%で、50代19.5%、30代16%。病名別では脳・心疾患が47%を占め、自殺17.4%。職種・地位別では管理職(26.2%)に営業・事務職(24.1%)が続いた。

 担当弁護士らは、80年代末には金融・生産業などで長時間・サービス残業が問題になり、40〜50代の働き盛りの相談が多かったと振り返る。90年代は不況で平均労働時間が短くなる一方、新規採用の抑制やリストラで負担がのしかかった20〜30代からの相談が増えた。00年代に入ると非正規雇用が増え、派遣労働者からの「長時間労働を強いられている」(40代製造業)といった悲鳴が目立つという。

 厚生労働省は01年、過労による労災の認定基準を見直し、「長期間の疲労の蓄積」を考慮するようになった。過労死を含めて脳・心疾患などで労災と認定された数は88年の29人から、07年には392人に増えている。

 「働きすぎの時代」の著書がある森岡孝二・関西大教授(企業社会論)は「働く貧困層(ワーキングプア)が増え、通信機器の発達で会社の外でも仕事に縛られる。状況はむしろ悪化しており、企業や国の取り組みがさらに強く求められる」と語る。110番の中心メンバーで「過労死弁護団全国連絡会議」代表幹事の松丸正弁護士は「立場の弱い労働者が企業から過労を強いられる構図は一貫して変わっていない。過労死110番がいらなくなる社会にしたい」と話している。

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