2011年04月30日 共同通信配信 「自分取り戻す」手助けを 避難所にメーク用品 女性による女性支援活発に 東日本大震災で被災した女性たちを、女性ならではの視点で支える動きが活発になっ ている。男性には「必需品」とは見えないメーク用品を避難所に届けたり、性暴力の被 害に遭わないよう注意点をまとめたチラシを配ったり、といった活動だ。「女性になら 言える」。そんな思いをくみ取る努力が続いている。
地震発生から約1カ月後、岩手県釜石市の避難所に60人分の化粧品セットが届いた 。ファンデーションや口紅、マスカラ、アイライナーなどのメーク用品。「化粧品です よ」という声に、地震以来、化粧なしの“すっぴん”で過ごしてきた女性たちが続々と 集まった。
各地の避難所では「化粧できないからマスクを外せない」のが、女性の隠れた悩みに なっていた。主婦金野裕美子さん(37)は「生きるための食料が優先で言いにくかっ たけど、顔を洗ったままだと肌が荒れて、やっぱりお化粧したかった」。ファンデーシ ョンを久しぶりに顔につけ、気持ちが明るくなったという。
化粧品はエイボン・プロダクツ(東京)がNPO法人「参画プランニング・いわて」 (盛岡市)を通じ提供。同法人の平賀圭子理事長は「最初は保湿クリームなどが要望さ れたが、だんだん本格的な化粧品を、という声が強くなった。震災前の普段の自分を取 り戻したいのでは」と話す。
岩手県山田町の避難所にも、化粧水や眉ずみなどが届き、女性の長い列が。上林ユキ 子さん(87)は「津波で何もかもなくなったけど、お化粧したらお出かけがしたい」 と笑顔を見せた。
日本助産師会岩手県支部は地震の約1週間後、性被害防止を呼び掛けるチラシを避難 所に配布した。内容は(1)トイレや更衣室は男女別に(2)授乳やおむつ替えは他人 から見えないように(3)夜は複数で行動する―など。
阪神大震災では避難所での女性や子どもへの性被害が報告された。被害状況に詳しい NPO法人「ウィメンズネット・こうべ」(神戸市)の正井礼子代表は「加害者も被災 者なので大目に見ろと言われたとか、避難所で暮らすしかないから誰にも言えない、な どの声があった」と振り返る。今回の震災では、阪神の教訓を生かそうと、いち早く女 性たちが防止に動いた。
ママ同士の支援も活発だ。派手なメークやファッションで知られるギャルママの全国 組織「日本ギャルママ協会」は、おむつや幼児服、哺乳瓶などを被災地に送る活動を地 震翌日から開始。協会の阿部美和さん(21)らは「ママに必要な物はママしか分から ない。きっと3〜4歳児の服が足りないと思って」と話す。
女性と災害の問題に詳しい関西学院大・災害復興制度研究所の山地久美子研究員は「 女性被災者が何を必要としているか、女性でなければ気付かないこともある。避難所で の支援にとどまらず、男性中心になりやすい復興計画づくりにも女性が関わることが重 要」と指摘する。