NTTは雇用制度を抜本的に見直し、来年度から65歳までの雇用延長制度を導入する。来年度以降の新卒者の昇給率を低く抑える一方、現在の選択制による退職・再雇用制度を廃止し、希望者は65歳まで雇用契約を延長できるようにする。雇用延長を求めていた労組も基本的に受け入れる方針で、7月中にも労使で詳細を詰める見通しだ。
政府は3月に高年齢者雇用安定法改正案を国会に提出しており、成立すれば、企業は平成25年度から希望者全員の65歳までの雇用延長が義務付けられる。NTTは改正案の成否にかかわらず、独自に雇用制度を改正する。
同社がいち早く雇用延長制度の導入を打ち出したのは、東日本大震災後の通信回線の復旧作業などで、ベテラン技術者の不足が問題になったためだ。雇用安定によって、グループの求心力を高める狙いもある。
経営側が労組に提案した「新たな60歳超継続雇用スキーム(枠組み)」は50歳と60歳で選択する退職・再雇用制度を廃止。60歳で210万円だった年収を300万円程度(標準)、400万円程度(熟練技能者)にそれぞれ引き上げる。高齢者雇用給付金制度など100万円弱の公的助成の終了を見込み、増額する。
一方、初任給は現在と同じ水準を維持するが、昇給度合いは緩やかになる。関係者によると、50代では年収で100万円以上減る可能性があるが、65歳まで働く場合は増加が見込まれるという。
労組は7月11〜12日に開く全国大会で雇用延長制度について議論し、7月中にも具体的な賃金体系などについて労使で協議する。
厚生労働省が昨年行った調査では、希望者全員が65歳まで働ける企業(従業員301人以上)は23・8%にとどまっている。