来春卒業予定の大学生の就職活動が本格化する中、企業の間で外国人留学生を採用する動きが広がっている。円高や電力不足を背景に海外に活路を見いだす企業にとってグローバル人材は欠かせないためだ。製造業だけでなく、小売業、サービス業なども留学生の採用に意欲をみせており、就職難の荒波にもまれている日本人学生はより厳しい競争を強いられている。
就職情報サービスのマイナビによると、平成24年の新卒内定状況調査(対象企業1757社)で、外国人留学生を採用した(する予定)と答えた企業は10.7%、上場企業では27.1%。25年卒の外国人留学生採用を予定または検討中と答えた企業は32.8%、上場企業では58.6%と前年を大きく上回った。
リクルートが1月に東京都内で、海外で活躍できる求人イベントを開催したところ、参加者約1700人のうち外国人留学生は344人に達した。
世界各地で生産・販売を展開する大手製造業はグローバル人材の採用を以前から進めている。しかし、最近では小売業やサービス業も意欲をみせており、百貨店の高島屋では「海外出店計画の中で留学生の意見を反映できるほか、国内でも外国人客への通訳などの必要性が高まっている」(担当者)と話す。
人気テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」の運営会社ユー・エス・ジェイ(大阪市此花区)は「韓国や中国などからの来場者を想定した外国人採用」と説明。ロイヤルホテルは「採用した中国人留学生は現地の代理店営業だけでなく、社内の語学研修でも活躍中」(採用担当者)という。
学生側も日本企業への就職に関心を寄せており、青山学院大に通う中国の男子学生(25)は「新興国にネットワークを普及する仕事がしたい」と日本の通信業界などを対象に就活中。文化服装学院で学ぶ台湾の女子学生(26)は「日本のファッションを学び、クリエーターとして作品を出したい」と夢を語る。
ただ、外国人留学生向けフリーペーパー「J−Life」の浅田光博編集長は「キャリアを5年単位で描く外国人が日本で長く働くとは考えづらい」と指摘。キャリア志向の強い外国人は、日本での経験をひとつのステップとする考えもあり、離職を防ぐことが今後の課題となる。
外国人留学生は大企業や働く場にこだわらず、「自分のしたい仕事」を基準に職を探す傾向が強い。これに対し、日本の学生は海外どころか地元からも出たがらない“内向き”志向が急増しているといわれる。
「留学生の採用で色々な価値観を取り込み、組織を活性化したい」(大手百貨店)。こんな企業が増える中、内向き・大企業志向の日本人学生の就活は今後さらに厳しさを増しそうだ。