電機大手のシャープが、同社で初めての大規模な人員削減の検討に入ったことが明らかになった。これまでは配置転換などで雇用を守る経営を掲げてきたが、2012年3月期決算が過去最悪の赤字となり、4〜6月期も主力の液晶やテレビ事業の不振が続いたため方針転換に踏み切る。
シャープの従業員数は単体で約2万1千人、海外を含むグループで約6万4千人。今回の削減は最大で数千人規模となる可能性もある。国内外で全社的な希望退職を募集する方向で、近く労働組合との協議に入る見込み。希望退職の募集は1950年に1度実施したが、その後は創業者の意向もあってしてこなかった。
12年3月期決算では過去最悪の純損益の赤字3760億円を計上。稼働が落ち込む液晶や太陽光パネルの工場から白物家電の営業部門に人員を振り向けるなど、昨年度と今年度で計約2千人を社内で配置転換する対策を打ち出した。
しかし、4〜6月期も液晶パネルを生産する堺工場(堺市)の稼働率が3割前後に低迷し、テレビの販売も予想を下回った。液晶パネルのカルテルを巡って米国で160億円の和解金を支払うことも決まり、1千億円規模の純損益の赤字が出る見通しが強まっていた。
リストラと並行して資産売却も進める方針。連結対象から外した堺工場の土地は外部への売却を検討。首都圏の複数の拠点についても売却を含めた活用を検討し、8月をめどに集約していくという。
7月からは提携した電子機器の受託製造(EMS)の世界最大手、台湾・鴻海精密工業が液晶パネルの引き取りを始め、堺工場の稼働率が向上する効果も出始めた。来年度には両社で中国での携帯電話の販売も始める予定だが、抜本的な経営改善には人員削減などが不可欠と判断した模様だ。(清井聡)