東京電力福島第一原発と第二原発に勤務する東電社員が原発事故を巡る差別・中傷で大きなストレスを受けたことが、防衛医科大学校病院精神科(埼玉県)と愛媛大学大学院医学系研究科(愛媛県)の共同研究グループが行った心の健康に関する調査でわかった。
研究グループは「社員らの心の健康が維持されないと、復旧業務も進まない。心理的苦悩を軽減するため、社会的支援としてねぎらいを送り続けることが望まれる」と指摘している。
研究グループは、両原発で東電社員らの心のケアに協力した研究者や、第二原発の非常勤産業医らで構成。昨年3月の事故後の昨年5〜6月、両原発の東電社員にアンケート形式で尋ね、全体の85%に当たる1495人から回答を得た。
落ち着かないことや不安・憂鬱(ゆううつ)といった心理的苦悩を42・7%(638人)が抱えていた。つらいことを思い出してしまったり、神経過敏になったりする心的外傷後ストレス反応(PTSR)の症状を25・3%(378人)が訴えた。
両原発で働く東電社員は、発電所の爆発、津波からの避難、身近な人の死亡、財産喪失、避難生活などのストレスを複合的に受けていたが、差別・中傷体験がある場合(全調査対象の12・8%)は、ない場合に比べ、心理的苦悩、PTSRが生じるリスクがそれぞれ約2倍に上ることが判明した。
差別・中傷を受けた体験としては、〈1〉東電の制服を着ているだけで誹謗(ひぼう)中傷を受けた〈2〉アパートに「東電社員は出て行け」と貼り紙をされた――などの事例があったという。