原発ベテラン技術者170人に退職要請へ 技術継承に危機

産経 2013/01/04
 
独立行政法人「原子力安全基盤機構」(JNES)が原子力規制庁に統合される際に、政府が同機構職員の3割以上を占める60歳以上の技術者約170人に一斉に退職を求めることが3日、政府関係者への取材で分かった。統合でJNESの技術者の身分は国家公務員になるが、現在の国家公務員制度では大勢の高齢技術者を雇う仕組みがないためだ。新たな法的措置がなければ、専門知識や技術の喪失につながり、原発の廃炉や審査などに支障が出かねない。

 昨年9月に発足した原子力規制委員会の事務を担う規制庁には、原発の現場を担う人材が少なく、専門技術を持つJNESと統合することになっている。規制庁発足時から合流する計画だったが、国家公務員を減らす政府方針と逆行するとして統合が遅れていた。

 統合の議論は今年から本格化する。原子力関連の独立行政法人の統合を検討してきた内閣官房原子力規制組織等改革推進室は「60歳以上のJNES職員は、原発建設の最盛期を経験している貴重な戦力」との認識だが、政府関係者は「公務員の定員削減が進む中、徹底した合理化を図らなければ国民の理解は得られない」とし、60歳以上の職員の一斉退職を要請するという。

JNESと前身の公益法人は、原発が盛んに建設された1980年代に、原子炉メーカーなどで働いていた人材を中途採用で集めた。このため昨年10月時点で、職員490人中、60歳以上の職員が約170人。50歳以上では323人と全体の66%を占めるいびつな構造になっている。

 しかも専門知識を持つ人材を高い給与で厚遇する仕組みがあるため、高給職員が多い。JNESによると、国家公務員より平均年収は2割高く、常勤職員で平均880万円。平均年齢60歳以上の任期付き職員は、平均1300万円で雇用されている。

 政府関係者によると、こうした高給体質もJNES職員を国家公務員化するネックになっているという。

 人事院によると、一般職の国家公務員の定年は原則60歳。民間であれば、希望者全員の雇用を65歳まで義務付ける改正高年齢者雇用安定法が今年4月に施行されるが、公務員には適用されない。

60歳以上の再任用制度もあるが、公務員であることが前提で独立行政法人からの移行には適用されない。これまでに大勢の高齢職員を国家公務員化した実例はなく、人事院は「60歳以上を一度に雇用するなら、新たな法的措置が必要だ」との見解を示している。

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 ■原子力安全基盤機構(JNES) これまで3つの公益法人に委託していた原子力安全行政にかかわる業務を統合して、平成15年10月に設立された独立行政法人。原子力施設の検査や電力会社による自主検査体制の審査などを国から請け負う。施設の耐震安全性の解析、原子力防災業務の支援なども担当。職員は昨年10月現在、役員や非常勤も含めて490人、予算規模は約200億円で、ほとんどが国からの交付金。

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